東京医科大学 消化器・小児外科学分野

ホーム

English

膵癌治療の取り組み

専門領域のご案内

グループ紹介はこちら
当科における取り組みはこちら

東京医科大学病院 肝胆膵グループでの膵臓がんに対する取り組み

膵臓がんの治療には、高度な専門性と豊富な経験が必要です。手術は根治が期待できる重要な治療ですが、手術の適応や術式については、膵臓がん治療に精通した外科医による慎重な判断が求められます。
膵臓がん手術は難易度が高く、根治性と安全性の両立には高度な技術と充実した診療体制が欠かせません。体への負担が少ないロボット支援手術についても、豊富な経験を有する施設で行うことが重要です。
また、化学療法や放射線治療の進歩により、これまで手術が難しいとされた患者さんにも、根治を目指せる可能性が広がっています。
当科では、「決してあきらめない治療」と「体に優しい治療」を掲げ、豊富な経験と高度な技術に基づく専門的な治療を行っています。

東京医科大学 消化器・小児外科学分野
主任教授 永川裕一

豊富な膵癌治療の経験を有する専門施設

膵臓がんの治療では、患者さんの病状や全身状態に応じて、手術、化学療法、放射線治療を適切に組み合わせた集学的治療が重要です。当科では、膵臓がん診療に精通した専門医が患者さんに寄り添い、一人ひとりに適した治療を提供しています。

膵臓がんの手術は、消化器外科手術の中でも特に難易度が高く、豊富な経験と専門的な診療体制が必要です。国内外のデータでは、膵臓の手術件数が年間20-30例以上の施設(ハイボリュームセンター)での術後合併症が低く、治療成績が良いとされています。当科では2025年度に年間190例以上の膵切除術を行い、2026年6月までに、ロボット支援手術を含む低侵襲膵切除術を累計1,000例以上実施しています。
豊富な化学療法の実績と手術経験に加え、迅速な診断と治療開始、化学療法中の副作用や症状の緩和、栄養管理、体力維持、術後の早期回復・社会復帰まで、多職種が連携して支援を行っています。また、化学療法中も治療効果を定期的に評価し、手術の可能性を継続して検討しています。

迅速な診断・治療開始と、速やかな手術を目指す診療体制

進行の速い膵臓がんに迅速に対応するため、当科では月曜日から金曜日まで毎日、午前中に初診を受け付けております。必要な検査を速やかに行い、カンファレンスも毎日実施することで、診断から治療方針の決定までを短期間で進めています。
化学療法が必要な場合には、患者さんの状態に応じて、受診後数日以内に開始できる体制を整えています。また、当院では週3~4日、膵臓手術を行い、手術が必要と判断された患者さんに対して、可能な限り速やかに手術を実施できる体制を整えています。

手術時間が短く、出血・合併症を抑えながら高い根治性を追求した膵癌手術
NFT-based Resection

膵臓がんの治療成績を向上させるためには、がんを確実に切除するとともに、出血や術後合併症を減らし、術後早期に化学療法へ移行することが重要です。
膵臓がんは膵臓周囲の神経へ浸潤しやすく、切除が不十分であれば再発のリスクが高まる一方、過剰な神経切除は難治性下痢などの原因となります。そのため、根治性と術後機能を両立する精密な手術が求められます。
当科では、膵臓周囲の神経・線維組織(NFT)の微細解剖に基づく手術コンセプト「NFT-based Resection」を考案し、手術に取り入れています。がんの神経浸潤範囲を正確に見極め、必要な部位を確実に切除しながら、過剰な神経郭清を抑えることで、高い根治性を保ちながら術後機能の温存を図っています。
この手術により、手術時間は3~5時間と短く、出血量も中央値220mLと少なく抑えられています。術後在院日数は中央値13日で、根治切除率は93.6%、術後合併症は10%未満、術後下痢は5%、術後補助化学療法も中央値41日で開始されています(Nagakawa Y, et al. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2020;27:342-351.)。

膵臓がんに対する体に優しいロボット支援膵切除術

ロボット支援手術は、お腹を大きく開けず、複数の小さな傷からカメラと手術器具を挿入して行う低侵襲手術です。従来の開腹手術と比べて、術後の痛みが少なく、早期回復や早期社会復帰が期待できます。また、早期回復により術後補助化学療法へ円滑に移行できる可能性があります。高画質映像にて、膵臓周囲の細かな血管、神経、線維組織を正確に確認しながら、出血をできる限り抑えた手術を行っています。
当科は全国に先駆けロボット支援膵切除術を開始しており、2026年6月までに、ロボット支援膵切除術を400例以上実施しています。さらに、最新機種である「da Vinci 5」と単孔式ロボット「da Vinci SP」の両方を導入している数少ない施設として、患者さんの病状に応じた最新機種を用いてロボット支援手術を行っています。
また、本術式を先導してきた施設として、国内外における手術指導や教育活動に取り組んでいます。

ロボット支援膵頭十二指腸切除術

膵頭十二指腸切除術では、がんを切除した後に膵臓、胆管を腸につなぎ直す複雑な再建が必要です。ロボット支援手術は、このような再建操作に大きな利点があります。また「NFT-based Resection」のコンセプトをロボット手術にも応用し、出血をできる限り抑えた手術を行っています。

ロボット支援膵体尾部切除術とda Vinci SP

膵体部や膵尾部にできた膵臓がんに対しては、膵体尾部切除術を行います。当科では、切除可能な膵体尾部がんに対して、ロボット支援膵体尾部切除術を行っています。
また当院では、最新の単孔式ロボットであるda Vinci SPを導入しています。da Vinci SPは、一つの小さな切開創からカメラと複数の手術器具を挿入して手術を行うシステムです。従来のロボット手術よりも傷を少なくでき、術後疼痛の軽減や整容面での利点が期待されています。

手術のタイミングを見極めることが重要な切除可能膵がん・ボーダーライン切除可能膵がん
-膵臓外科専門医による術前化学療法-

切除可能膵がん、ボーダーライン切除可能膵がんのいずれにおいても、予後改善のために術前化学療法が重要です。一方で、副作用や治療効果を適切に評価し、手術のタイミングを逃さないことが大切です。
特に、主要血管にがんが近接するボーダーライン切除可能膵がんでは、治療内容や投与期間を患者さんごとに判断する必要があります。通常は3か月前後、必要に応じてさらに化学療法を継続しながら、全身状態、副作用、画像所見、腫瘍マーカーの推移を総合的に評価し、手術に適した時期を見極めます。そのため、術前化学療法投与期間中は、外科医が継続して診療していくことが重要です。
このため当科では、膵臓がん手術に精通した外科専門医が術前化学療法を行い、治療効果を継続的に評価しています。手術の機会や適切なタイミングを逃さないよう、手術可能と判断した際には速やかに手術へ移行できる体制を整えています。

術後合併症対策

膵がんの手術は難易度が高く、術後に膵臓から膵液が漏れる膵液瘻をはじめ、さまざまな合併症が起こる可能性があります。これらが重篤化すると、回復の遅れや術後化学療法の開始延期につながることがあります。
膵がんの治療成績を向上させるためには、安全で確実な手術を行うとともに、術後合併症をできる限り減らし、早期に抗がん剤治療へつなげることが極めて重要です。
われわれは、手術手技の改良や周術期管理の標準化に加え、膵液瘻の発生や重症化に関係する腹腔内感染の早期発見・予防など、さまざまな合併症対策に取り組んでいます(Nagakawa et al. Pancreas. 2013;42:701-706)。
また、クリニカルパスを導入し、多職種が連携して術後の早期回復を支援しています。膵頭十二指腸切除術後は1か月以上の入院を要することも少なくありませんが、当科では術後在院日数を通常12~16日程度です。

膵がんの治療期間中の患者さんに対する体力維持と栄養サポートについて

膵がんの治療は長期にわたることが多く、その間に体力や栄養状態を維持することは、治療の継続を支えるうえで非常に重要です。

当科では、管理栄養士を含む医師、看護師、薬剤師などの多職種が連携し、化学療法中の食欲低下や体重減少への対応、手術前の栄養状態や体力の改善、手術後の早期回復まで切れ目なくサポートしています。ERAS(術後回復強化プログラム)の考え方を取り入れ、早期離床や早期経口摂取を進めるとともに、一人ひとりの状態に応じた栄養管理を行っています。

決してあきらめない膵癌治療

主要血管に浸潤した膵がんの手術について

主要血管への浸潤を理由に「手術は難しい」「切除できない」と診断された場合でも、化学療法後の画像を改めて評価することで、手術の可能性が見つかることがあります。

コンバージョン手術とは

切除不能と判断された膵がんが化学療法や放射線治療によって縮小または長期間制御され、根治を目指した切除が可能となった場合に行う手術をコンバージョン手術といいます。当科では、主要血管に浸潤する局所進行膵がんに対しても、治療後のCT・MRI、腫瘍マーカー、全身状態を詳しく再評価し、コンバージョン手術の可能性を継続して検討しています。

門脈・上腸間膜静脈浸潤を伴う膵がんに対する治療

膵頭部がんが門脈や上腸間膜静脈に浸潤している場合は、血管の一部を切除し、血管をつなぎ直す手術が必要です。一方で広範囲に浸潤している症例では、手術の難易度が極めて高く、高度な血管再建の技術が求められるため、手術不能と判断されることも少なくありません。
当科では、このような広範囲の門脈・上腸間膜静脈浸潤を伴う膵がんに対しても、化学療法を積極的に行ったうえで、高度な血管再建を伴う手術の治療成績について報告してきました。(Hosokawa Y, Nagakawa Y, et al. J Gastrointest Surg. 2018;22:1179-1185. Honda M, Nagakawa Y, et al. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2020;27:731-738. Nagakawa Y, et al. Ann Surg. 2023;277:644-651.

腹腔動脈・肝動脈浸潤を伴う膵がん

膵がんが腹腔動脈や総肝動脈に浸潤している場合、手術不能と判断されることがあります。当科では、化学療法の効果を評価したうえで根治切除の可能性を追求し、腹腔動脈合併切除を伴う膵体尾部切除術(DPCAR)を積極的に行っております。
また肝動脈浸潤を伴う症例に対しては、心臓血管外科医との連携のもと、難易度の高い肝動脈合併切除・再建にも積極的に取り組んでいます。血管浸潤の範囲を詳細に評価し、患者さんの病状に応じた血行再建法を行っています。

上腸間膜動脈(SMA)浸潤を伴う膵がん

上腸間膜動脈(SMA)は、小腸へ血液を送る極めて重要な血管です。SMAへの浸潤を伴う膵がんは、一般的に局所進行切除不能膵がんと診断されます。
当科では、化学療法によってがんが十分に制御され、遠隔転移がなく、手術による長期生存が期待できる患者さんに対して、SMA合併切除・血行再建を伴う膵切除術を検討しています。画像所見、治療効果、全身状態、手術の安全性を慎重に評価し、適応を厳格に判断し行っております。

心臓血管外科と連携した高度な血管吻合

上腸間膜動脈や肝動脈などの動脈再建を伴う手術では、高度な血管吻合技術が必要です。当院では、心臓血管外科が有する高度な血管吻合技術と、当科の膵臓がん手術に関する専門性を組み合わせ、根治性のみならず安全性の高い手術を目指しております。

切除不能膵がんに対する化学療法

手術が困難な膵がんや再発膵がんに対しては、患者さんの病状や全身状態、これまでの治療経過に応じて、GEM+nab-PTX療法、FOLFIRINOX療法、nal-IRI+5-FU/LV療法などを適切に選択します。治療中は効果や副作用を丁寧に評価し、患者さん一人ひとりに適した治療を継続します。
化学療法によってがんが十分に制御された場合には、改めて手術の可能性を評価します。

遺伝子検査を取り入れた膵がん治療

膵がんでは、遺伝子の特徴によって効果が期待できる薬が異なることがあります。当科では、必要に応じてBRCA遺伝子検査を行うほか、臨床腫瘍科と連携してがん遺伝子パネル検査を実施しています。
BRCA遺伝子変異など、治療につながる遺伝子異常が認められた場合には、プラチナ製剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、臨床試験など、新たな治療の可能性を検討します。検査結果は、がんゲノム医療の専門家によるエキスパートパネルで検討し、今後の治療方針に反映しております。

膵がんに対する放射線治療:IMRT(強度変調放射線治療)

根治手術が難しい局所進行切除不能膵がんに対しては、化学療法と放射線治療を組み合わせた治療が選択肢となります。当院では、適応のある患者さんに対し、腫瘍に高精度に放射線を照射しながら周囲の正常組織への影響を抑えた放射線治療であるIMRTと化学療法を併用し、積極的な治療を行っています。(Cancer Chemother Pharmacol. 2017;79:951-957.

膵がんに対する重粒子線治療

また、化学療法の効果や患者さんの病状に応じて重粒子線治療も検討し、腫瘍が縮小してがんの進行が十分に制御された場合には、コンバージョン手術による根治切除の可能性を追求します。

セカンドオピニオンをご希望の方へ

次のような方は、当科の肝胆膵グループへご相談ください。
・膵臓がんと診断され、治療について相談したい方
・体への負担が少ないロボット支援手術を希望される方
・がんの治療や手術に不安を感じている方
・「手術が難しい」「血管に浸潤しているため切除できない」と診断された方
・化学療法中で、手術の可能性を相談したい方

お問い合わせ

東京医科大学 消化器・小児外科学分野(消化器外科・小児外科)
電話 : 03-3342-6111(代表)
メールアドレス:

(患者さんの診断・治療方法に関するご質問は、当院での診察もしくはセカンドオピニオン外来にてお答えいたします)

肝胆膵グループ

主任教授
永川 裕一(ながかわ ゆういち)

膵がんに対する積極的な治療に取り組み、高難度手術や、ロボット支援手術をはじめとする低侵襲手術を数多く行っています。また、国内外において膵臓外科手術・ロボット手術の指導的役割を担っています。これまでに2,000例以上の膵臓手術に携わっています。
主な認定資格
日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
日本肝胆膵外科学会高度技能指導医
日本消化器病学会専門医
日本膵臓学会認定指導医
日本胆道学会指導医
日本内視鏡外科学会技術認定医
日本ロボット外科学会 Robo-Doc Pilot(専門医)
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
ロボット支援下膵切除術認定プロクター
インテュイティブサージカル社ダビンチ・ロボット手術メンター
主な学会役職等
日本内視鏡外科学会 理事
日本肝胆膵外科学会 理事
日本膵臓学会 監事
Asia-Pacific Hepato-Pancreato-Biliary Association(A-PHPBA)Council Member
日本外科学会 代議員
日本癌治療学会 代議員
日本消化器外科学会 評議員
日本臨床外科学会 評議員
日本胆道学会 評議員
日本小児外科学会 評議員
膵癌診療ガイドライン改訂委員
膵癌取扱い規約検討委員
Journal of Hepato-Biliary-Pancreatic Sciences, Associate Editor
Asian Journal of Endoscopic Surgery, Associate Editor

准教授
金沢 景繁 (かなざわ あきしげ)

肝胆膵疾患を専門とし、肝胆膵外科領域の低侵襲手術を数多く行っています。
認定資格
日本外科学会専門医
日本外科学会指導医
日本消化器外科学会専門医
日本消化器外科学会指導医
日本肝胆膵外科学会高度技能指導医
日本消化器病学会専門医
日本肝臓学会専門医
日本がん治療認定医機構認定医
消化器がん外科治療認定医
日本内視鏡外科学会技術認定医
ロボット支援下肝切除術認定プロクター

講師
刑部 弘哲(おさかべ ひろあき)

膵臓・胆道疾患に対する高難度手術や化学療法に加え、ロボット支援手術を含む低侵襲手術を専門としています。
主な認定資格
日本外科学会専門医
日本消化器外科学会専門医
日本肝胆膵外科学会高度技能専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
消化器がん外科治療認定医
日本内視鏡外科学会技術認定医
ロボット手術(da Vinci)術者認定

講師
笠原 健大(かさはら けんた)

肝胆膵領域癌における手術や化学療法を専門とし、高難度手術やロボット支援手術をはじめとする低侵襲手術を専門としています。
主な認定資格
日本外科学会専門医
日本消化器外科学会専門医・指導医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本消化管学会胃腸科専門医
日本大腸肛門病学会専門医
日本内視鏡外科学会技術認定医
日本ロボット外科学会 Robo-Doc Pilot(専門医)
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本内視鏡外科学会ロボット支援手術認定プロクター
ロボット手術(da Vinci)術者認定
JDLA Deep Learning for GENERAL

助教
松本 萌(まつもと もえ)

膵臓・胆道疾患の外科治療や化学療法に携わり、ロボット支援手術を含む低侵襲手術にも積極的に取り組んでいます。
主な認定資格
日本外科学会専門医
日本消化器外科学会専門医
日本内視鏡外科学会技術認定医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
消化器がん外科治療認定医
ロボット手術(da Vinci)術者認定

助教
権 英毅 (ごん ひでき)

主な認定資格
日本外科学会専門医
ロボット手術(da Vinci)certificate取得(術者)

助教
西山 航平 (にしやま こうへい)

主な認定資格
日本外科学会専門医
日本消化器外科学会専門医

臨床研究医
水谷 久紀 (みずたに ひさのり)

Page Top