膵臓がんに対する取り組み|トピックス

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安新型コロナウィルスによる肝胆膵外科グループの対応

 新型コロナウィルス(COVID-19)による医療機関の対応により、胆道癌、膵臓癌、膵臓腫瘍の患者さんの治療や手術に極力影響しないよう、ベストの治療方針をチームカンファランスにて迅速に検討し、がん患者さんの手術日程が遅れることのないよう当院にて手術を行うほか、われわれのスタッフを派遣し高度な治療や手術を関連病院でも行うなど、様々な対応をいたしております。また患者さんやご家族のご心配をなるべく取り除くべく、可能な限りメールでの対応もいたしております。

東京医科大学病院での膵臓がんに対する取り組み

 膵臓がんは治療困難ながんであり、その治療には専門性の高い名医が必要です。当院では膵がん患者さんにベストの医療を提供すべく、経験豊富なスタッフの充実を図ってまいりました。高度な診断技術を有する内科医、放射線科医による術前診断と化学療法専門医による集学的治療,経験豊富で卓越した手術技術を持つ外科医により多くの膵癌患者さんの治療を行っております。当院での膵臓がん治療に対する取り組みをご紹介いたします。

主任教授 土田明彦

肝胆膵外科グループ
腹腔鏡下・ロボット支援下膵切術
膵臓疾患

スタッフ紹介(肝胆膵外科グループ)

永川裕一(准教授)

-プロフィール-
1994年に東京医科大学を卒業、2002年にジョンズホプキンス大学外科に留学、2011年に東京医科大学消化器小児外科学分野、講師、2017年より准教授。1000例以上の膵臓手術の経験をもつ。長年にわたり積極的な膵癌・胆道癌治療に取り組み、日本で最も多くの腹腔鏡下膵切除術を行っている。近年はロボット支援下膵手術にも取り組んでいる。父も同じく肝胆膵外科医。

メッセージ
進行の早い膵臓がんに対し、最も効果的な治療を迅速に行うことができるように、内科、放射線科、病理と密接な連携のもと専門チームによるミーティングを週3回に行っています。われわれは常に治療成績を向上させる努力を怠らず、さらなる手術技術の向上、治療成績向上のため新たな治療法の開発を行っております。決してあきらめない、最善を尽くす治療をモットーに積極的な膵がん治療に取り組んでおります。

小薗真吾(助教)

-プロフィール-
2003年九州大学医学部医学科を卒業、2003年九州大学臨床腫瘍外科に入局、2013年九州大学大学院修了 (医学博士)、2014年-2018年ハーバード大学医学部ベスイスラエル・ディーコネス医療センターに留学、2020年より東京医科大学病院に勤務

 

メッセージ
九州大学臨床腫瘍外科で外科医としての修練を積み、主に膵癌の臨床および研究を長年行なって参りました。2014年から4年間はハーバード大学医学部ベスイスラエル・ディーコネス医療センターにて癌の基礎研究および抗癌剤開発に携わり、癌治療の知見を深めて参りました。その経験を元にエビデンスおよびサイエンスに基づいた患者様に満足頂ける膵癌治療の提供に務めて参ります。また、丁寧な説明を行い患者様に十分に納得して頂いた上で治療を受けて頂くことを心がけております。膵癌と診断されお悩みの方はお気軽にご相談ください。

瀧下智恵(助教)

-プロフィール-
2007年熊本⼤学医学部を卒業、卒後は熊本大学医学部附属病院にて研修、2011年がん・感染症センター 都立駒込病院 外科レジデント、2014年より東京医科⼤学 消化器・⼩児外科学分野 助教

 

メッセージ
膵臓癌は進行が早く治療困難な疾患のひとつですが、手術や化学療法を用いた積極的な集学的治療を行い、膵癌克服を目指して治療を行っております。

刑部弘哲(助教)

-プロフィール-
2010年に東京医科大学を卒業、同年に東京医科大学消化器小児外科学分野入局、2017に神奈川県立がんセンター外科勤務、2018年より東京医科⼤学 消化器・⼩児外科学分野 助教

 

メッセージ
常に質の高い手術を心がけ、チーム一丸となり全力で膵癌の治療を致します。

中川直哉

-プロフィール-
2004年に札幌医科大学医学部医学科を卒業、2006年広島大学病院卒後臨床研修終了、2006年広島大学第1外科に入局。2014年広島大学大学院終了(医学博士)。2020年より東京医科大学病院に勤務。

 

メッセージ
膵臓がんは予後の悪いがんの一つです。手術や抗がん剤治療を含めた、全身的な治療が必要となる治療の難しい疾患ですが、基礎研究・臨床研究を通し、最先端の治療を行っております。幅広い知見をもとに情報を提供させていただくとともに、皆様が笑顔になれる治療を目指し、チーム医療を行っております。

西野仁惠

-プロフィール-
2007年千葉大学医学部を卒業、2009年千葉大学臓器制御外科に入局。2017年千葉大学大学院終了(医学博士)。2018年より東京医科大学病院に勤務。


 

メッセージ
外科医ひとりひとりの専門性を生かし、またチーム内外で連携し、常により質の高い手術・医療を提供させて頂けるよう努めてまいります。

鈴木健太

-プロフィール-
2014年愛知医科大学医学部医学科を卒業、2016年愛知医科大学病院初期研修終了、2016年 愛知医科大学消化器外科に入局。2020年より東京医科大学病院勤務。


 

メッセージ
肝胆膵領域の疾患は消化器外科領域のなかでも特に複雑な領域とされております。そのため医療者だけでなく患者さんを含めた治療が必要不可欠です。我々と一緒に頑張りましょう。

外科・内科・放射線科・病理合同カンファランス

膵臓がんの手術

高い根治切除率と短い手術時間、出血量を少なくする繊細な膵頭十二指腸切除術

 癌の生存率向上にはがんを取り残すことなく手術を行うことと術後早期に術後補助化学療法を行うことが重要です。このため高い根治性と術後化学療法導入に影響を与えない体のダメージを少なくする繊細な手術が必要になります。一方で,膵頭部癌では膵頭十二指腸切除術という大きな手術が必要とされます。当科では、体のダメージをなるべく少なくするため繊細な膵頭十二指腸切除術を行うべく手術方法の改良を重ねてまいりました。その上、膵臓の周りにある神経・線維組織という細かい構造物に着目した手術(Nerve and fibrous tissue based resection; NFT-based resection)を行うようになり,手術時間の短縮(3-5時間)、少ない出血量(中央値:220ml)、術後入院期間の短縮(中央値:13日)、高い根治性(根治切除率;R0率:93.6%)に加え、術後早期の補助化学療法導入(導入期間中央値;41日)が得られるようになりました(2014年12月~2018年5月の手術成績:J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2020)。

膵頭十二指腸切除術

われわれが提唱した神経・線維構造に基づく繊細な膵頭十二指腸切除術
(Nerve and fibrous tissue based resection)

腹腔鏡下・ロボット支援下膵切除術(低侵襲膵切除術)

 腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術は内視鏡外科手術もしくは低侵襲手術と言われ、お腹を大きく開けず、5カ所の小さい穴から内視鏡および鉗子(かんし)を挿入し手術を行います。これらの手術は開腹手術より術後の痛みが少なく早期回復、社会復帰が期待されます。われわれは内視鏡外科手術で得られる拡大視効果(拡大されたモニターを見ることで可能となる繊細な手術)を最大限に利用し、出血の少ない手術、根治性の高い手術を行っております。ロボット支援下手術(ダビンチ手術)は、ロボットの補助により縫合操作をやりやすくするため、再建を行うときに極めて有用です。

1)膵頭部癌におけるロボット支援下膵頭十二指腸切除術・腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術

 2020年4月の診療報酬改定により、膵頭部癌におけるリンパ節郭清を伴うロボット支援下膵頭十二指腸切除術・腹腔鏡下膵頭十二指腸切除が保険収載されました。これらの手術は高度な技術が必要とされ,厳しい施設基準によって施行が認められている病院は限定されております。われわれは保険収載前より倫理委員会承認のもと長年、本手術に取り組んでおりました。現在、全国でも最も多くのこの手術を行っております。

2)膵体尾部癌における腹腔鏡下膵体尾部切除術

 膵体尾部に存在する膵癌に対して、リンパ節郭清を伴う腹腔鏡下膵体尾部切除術を行われております。体の負担が、開腹術に比べ極めて少ないため、術後早期に術後化学療法の開始が期待できます。われわれは長年培った手術技術から、切除を行う膵体尾部癌の患者さんの多くは腹腔鏡下膵体尾部切除術にて行っております。当科が行う腹腔鏡下膵体尾部切除術は根治率が高く出血量が少ないほか、術後の合併症も開腹術より少ないのが特徴です。

局所進行膵体尾部癌に対する根治手術を目指した腹腔動脈合併膵体尾部切除(DPCAR)

 体部癌において腹腔動脈や総肝動脈に癌が浸潤した場合、手術困難とされていましたが、当院ではこのような局所進行膵癌でも根治を目指し、化学放射線治療後に腹腔動脈合併膵体尾部切除(DPCAR)を積極的に行っております。この術式は、術前に予め、総肝動脈を血管カテーテルで塞栓(血管塞栓術)することにより安全に手術が行えます。血管塞栓術は放射線科のエキスパートによって行っております。この術式を行う事で、根治手術が可能になり、長期生存する患者さんが増えております。

総肝動脈に浸潤した局所進行膵癌に対する腹腔動脈合併膵体尾部切除(DPCAR)

  

生存率向上を目指した集学的治療(術前化学療法・術後化学療法)

 切除可能な膵癌に対しても、術前に化学療法(抗がん剤)を行うことで,術後の再発を抑え生存率を向上させることが医学的に分かっており、患者さんの状態やご希望、術式も考慮しつつ、術前化学療法としてGS (ゲムシタビン+ティーエスワン)療法を行った後に手術を行っております。
 また術後には内服の抗がん剤であるS-1(ティーエスワン)を6ヶ月間服用(4週内服し2週休薬)することで近年、術後生存率は著しく向上しておリます。

GS (ゲムシタビン+ティーエスワン)療法
1および8日目にゲムシタビンの点滴を行い1〜14日間はティーエスワンを1日2回服用する治療法です。手術前にこれを2コース行います。

 当院ではボーダーライン切除可能膵がんに対し術前にGEM+nab-PTX(ゲムシタビン+ナブパクリタキセル:アブラキサン) 療法もしくはFOLFIRINOX(フォルフィリノックス)を3か月行った後に手術を行っており,術後の生存率を向上させております。

GEM+nab-PTX((ゲムシタビン+アブラキサン) 療法
2種類の薬剤(ゲムシタビン、ナブパクリタキセル)を60-90分で点滴にて投与します。これを週1回で3週連続行い4週目を休むのを1コースとする化学療法です。膵癌に効果が期待できる化学療法です。副作用として血球減少・しびれ・脱毛などがあります。長期間投与ではしびれの悪化が問題になります。

FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法
4種類の薬剤(5-FU、イリノテカン、オキサリプラチン、レボホリナート)を3日間にわたって埋め込み式のポートより投与します。これを2週間ごとに繰り返します。膵癌に効果的な治療法です。副作用(血球減少・下痢・しびれ、など)の頻度がやや高いため、全身状態が良好な患者さんが対象になります。

消化器内科医による迅速なEUS-FNAを用いた診断、内視鏡的胆道ドレナージ術

 膵臓がんは診断困難ながんのひとつですが、外来にて消化器内科医による超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を用いた迅速かつ正確な診断を行っております。また膵癌で併発する閉塞性黄疸においては、他施設でドレナージ困難とされた患者さんにも迅速に対応し,確実な内視鏡的胆道ドレナージ術にて減黄を行った後,安全に手術を施行いたしております。

術後合併症対策

 膵がんの手術は、難易度の高い手術であり、術後に膵臓から膵液が漏れる膵液瘻をはじめ術後合併症の頻度が高く、時に重篤な合併症へと発展することもあります。一方,膵癌の予後改善には術後化学療法の早期導入が必要不可欠です。そのため術後合併症を減らし、術後早期に抗がん剤治療を導入していくことが極めて重要になります.国内外のデータでは、膵臓の手術件数が年間20-30以上の施設(high volume center)での術後合併症が低く、治療成績が良いとされています。当科では年間140-150例の膵切除術を行っており、全国でも有数の手術件数を誇る施設となっております。またわれわれは,術後合併症を減少させるべく、様々な手術手技の改良、合併症対策に取り組んでおります。膵頭十二指腸切除術は一般的に術後一ヶ月以上入院することが多いのですが、当科ではクリニカルパスを導入し術後在院日数は通常12日~16日間に短縮しています。(Pancreas. 2013;42:701-6.)

膵頭十二指腸切除術クリニカルパス

決してあきらめない膵臓がん治療

 遠隔転移(肝転移、播種など)を認めませんが、主要血管(膵周囲の大切な血管)に癌が進行し、手術が不可能(手術しても予後が期待できない)な膵がんを切除不能局所進行膵癌といいます。当院では切除不能局所進行膵癌と診断されても、切除の可能性を追求すべく決してあきらめない治療を目指し、積極的な抗癌剤投与や放射線治療を行っております。近年これらの治療により手術が可能となるケースが増えてきております。

膵癌に対するIMRT(強度変調放射線治療)

 根治手術の難しい切除不能局所進行膵癌に対して、有効な治療法の1つとして放射線療法と化学療法を併用する化学放射線療法があります。しかしながら放射線の副作用で抗がん剤が投与できず、十分な効果が得られない問題がありました。当院では最新の放射線治療である強度変調放射線治療(IMRT)とより強力な抗癌剤(gemcitabine+S-1)を併用した化学放射線療法を行っております。IMRTはコンピューター制御で必要に応じて強度を変えることができ、これにより高精度に腫瘍をターゲットにした照射ができるほか正常組織に照射される線量が減り、十分な抗がん剤との併用療法が可能になりました。少ない副作用で,抗癌剤を減量することなく十分な放射線治療ができることによって、根治手術が可能となったケースが増えてきました(Cancer Chemother Pharmacol. 2017.79:951-957.)。

IMRT(強度変調放射線治療)による放射線化学療法

  

治療前
(切除不能な膵がん)

  

IMRT後
(著明に縮小し根治手術可能となった)

お問い合わせ

東京医科大学 消化器・小児外科学分野
准教授 永川裕一
電話 : 03-3342-6111(代表)
メールアドレス : naga@tokyo-med.ac.jp

(患者さんの診断・治療方法に関するご質問は、当院での診察もしくはセカンドオピニオン外来にてお答えいたします)