ロボット支援下膵切除
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最新のロボット手術機器と熟練した外科医によるロボット支援膵手術
ロボット支援膵手術は、小さな傷からカメラと手術器具を挿入して行う低侵襲手術です。高精細な拡大画像と精密な手術操作により、膵臓周囲の細かな血管や神経、線維組織を確認しながら、極めて精緻な手術を行うことができます。これにより、出血量や術後の痛みの軽減、早期回復が期待されます。

一方、膵臓の周囲には重要な血管や臓器が密集しているため、ロボット支援膵手術には高度な手術技術と豊富な経験が必要です。当科では、全国に先駆けてロボット支援膵切除術を導入し、保険適用となる以前から、病院倫理委員会の承認のもとでロボット支援膵手術に取り組んできました。これまでに400例を超えるロボット支援膵切除術を行っており、膵がんをはじめとする悪性腫瘍の患者さんや、良性・低悪性度腫瘍を有する若年の患者さんなど、当科でのロボット支援膵手術を希望して全国から多くの患者さんが受診されています。
さらに、当院では、最新のロボット手術支援システム「da Vinci 5」と、単孔式ロボット手術支援システム「da Vinci SP」の両方を導入しています。
膵臓外科およびロボット手術に熟練した外科医が、根治性と安全性を重視しながら、患者さん一人ひとりに適した精緻な手術を行っています。


ロボット支援手術の特徴
これまで、体への負担を少なくする手術として腹腔鏡手術が発展してきました。腹腔鏡手術では、お腹に開けた小さな穴からカメラと細い手術器具を挿入し、拡大された画面を見ながら手術を行います。
一方、膵臓の手術では、膵臓周囲の細かな血管や神経を確認しながら切除する操作に加え、膵臓、胆管、腸をつなぎ直す極めて繊細な縫合操作が必要です。腹腔鏡手術では、手術器具の動く範囲に制限があるため、体の深い場所で行う複雑な操作や縫合が難しい場合があります。
ロボット支援手術は、こうした腹腔鏡手術の特長を生かしながら、より精密で自由度の高い操作を可能にした手術です。外科医が高精細な3D画像を見ながら、手術支援ロボットを操作して手術を行います。ロボットが自動で手術を行うのではなく、手術の判断とすべての操作は外科医が行います。ロボットは、外科医の手の動きを、より細かく正確に患者さんの体内へ伝えるための手術支援機器です。
ロボット支援手術で使用するダビンチサージカルシステムは、立体的に拡大された高精細な3D画像、手ぶれを抑える機能、人間の手首のように自由に曲がる多関節鉗子を備えています。わずか数ミリの手術器具の先端を、術者の指先の動きと連動させて操作できるため、体の深い場所でも繊細で安定した手術操作が可能です。

ロボット支援膵頭十二指腸切除術
膵頭十二指腸切除術は、膵頭部、十二指腸、胆管の一部などを切除し、残った膵臓や胆管を小腸につなぎ直す複雑な再建を必要とする、消化器外科手術の中でも特に難易度の高い手術です。
膵頭部の周囲には、門脈、上腸間膜静脈、肝動脈や上腸間膜動脈などの重要な血管が密集しています。そのため、腫瘍を確実に切除しながら、出血や臓器損傷を抑えるためには、極めて繊細で精度の高い手術操作が求められます。
当科では、患者さんの体への負担をできる限り軽減することを目指し、2014年から膵臓・胆道領域のロボット支援手術に取り組んできました。開腹手術で培ってきた、膵臓周囲の神経・線維組織の微細な解剖に基づく独自の手術コンセプト「NFT-based Resection」をロボット手術にも応用し、長年にわたる低侵襲手術の経験を組み合わせることで、精度の高いロボット支援膵頭十二指腸切除術の手技を確立してきました。
ロボット支援膵頭十二指腸切除術は、2020年に保険適用となりました。本手術は高度な手術技術と専門的な診療体制を必要とするため、定められた施設基準を満たした医療機関で実施されます。
当院では、これまでに多数のロボット支援膵切除術を行っており、その豊富な経験を生かして、根治性と安全性を重視した精緻な手術を行っています。また、国内外の外科医に対する手術指導にも取り組み、ロボット支援膵手術の普及と発展に貢献しています。

当科におけるロボット支援下膵頭十二指腸切除術の適応疾患
膵良性腫瘍・低悪性度膵腫瘍
1.膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
2.粘液性嚢胞性腫瘍(MCN)
3.膵神経内分泌腫瘍 (pNEN)
4. 充実性偽乳頭状腫瘍:Solid-pseudopapillary neoplasm (SPN)
など
十二指腸腫瘍
1.十二指腸乳頭部腺腫
2.十二指腸乳頭部癌
3.十二指腸癌
4.十二指腸Gastrointestinal Stromal Tumor (GIST)
など
胆道癌
1.遠位胆管癌
膵頭部癌
1.切除可能膵頭部癌
膵がん・遠位胆管がん・十二指腸乳頭部がんに対するロボット支援手術
膵がん、遠位胆管がん、十二指腸乳頭部がんなどの悪性腫瘍に対しては、腫瘍を確実に切除するとともに、周囲のリンパ節を適切に郭清する必要があります。また、がんの治療成績を向上させるためには、根治性の高い手術に加え、術後補助化学療法を適切に行うことが重要です。
ロボット支援手術は、開腹手術と比較して体への負担が少なく、術後の痛みの軽減や早期回復が期待されます。そのため、術後の体力回復を促し、術後補助化学療法へ円滑に移行できる可能性があります。
当科では、根治性と手術の安全性を最優先に、適応のある患者さんに対してロボット支援手術を積極的に行っています。
ロボット支援尾側膵切除術とda Vinci SP
尾側膵切除術は、膵体部や膵尾部に発生した腫瘍に対して、膵臓の体部から尾部を切除する手術です。膵臓の背側には、脾動脈や脾静脈などの重要な血管が走行しているため、繊細で精度の高い手術操作が求められます。ロボット支援手術では、高精細な3D画像と多関節鉗子を用いることで、脾動脈、脾静脈を詳細に確認しながら、精密な切離を行うことができます。
当院では、最新のロボット手術支援システム「da Vinci 5」に加え、単孔式ロボット手術支援システム「da Vinci SP」を導入しています。da Vinci SPは、一つの小さな切開創からカメラと複数の手術器具を挿入して手術を行うシステムです。従来のロボット手術と比べて傷がさらに少なく(2-3カ所)、術後の痛みの軽減や整容性の向上が期待されます。患者さんの病変に準じて、「da Vinci 5」と「da Vinci SP」を適切に選択しています。

脾温存尾側膵切除術(ロボット支援脾動静脈温存尾側膵切除術)
良性または低悪性度の膵腫瘍では、病変の位置や大きさ、脾動静脈との関係を考慮し、脾臓を温存する尾側膵切除術を行っています。
脾臓には、免疫機能や血液を調整する重要な役割があります。そのため、良性・低悪性度膵腫瘍では、可能な限り脾臓を温存することが望まれます。
なかでも、脾臓だけでなく脾動脈と脾静脈も温存する「脾動静脈温存尾側膵切除術」は、血管を膵臓から丁寧に剥離する必要があり、高度な技術を要する手術です。v
当科では、脾動脈と脾静脈を直線化しながら安全に剥離する独自の手術方法「Straightened Splenic Vessels Method」を開発し、この手術方法をロボット支援手術にも応用し、高精細な拡大画像と多関節鉗子を生かして、脾臓および脾動静脈の温存を目指した精緻な手術を行っています。

腹腔鏡下膵体部切除の適応疾患
膵良性腫瘍・低悪性度膵腫瘍
1.膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
2.粘液性嚢胞性腫瘍(MCN)
3.膵神経内分泌腫瘍(pNEN)
4. Solid-pseudopapillary neoplasm (SPN)など
膵体尾部癌
1.切除可能膵体尾部癌(血管浸潤、多臓器浸潤例除く)
ロボット支援下膵中央切除術
膵中央切除術は膵体尾部に存在する良性もしくは悪性度の低い腫瘍に対して、膵臓の機能を温存するために、膵臓の真ん中の一部のみを摘出する手術です。尾側の膵臓は再建(膵臓と小腸を縫合)が必要です。本手術においても内視鏡外科手術の有用性が期待されますが、現時点では保険収載されていません。当院では、東京医科大学病院倫理審査委員会承認のもと病院費を用い適応のある患者さんに対しロボット支援下膵中央切除術を行っております。
ロボット支援下膵中央切除術の適応疾患
膵良性腫瘍・低悪性度膵腫瘍(適応は腫瘍の位置や大きさにより決定されます)
1.膵神経内分泌腫瘍(pNEN)
2.Solid-pseudopapillary neoplasm (SPN)など
お問い合わせ
東京医科大学 消化器・小児外科学分野(消化器外科・小児外科)
電話 : 03-3342-6111(代表)
メールアドレス:
(診断・治療・手術方法に関するご質問は、当院での診察もしくはセカンドオピニオン外来にてお答えいたします)