肝がんに対する取り組み|トピックス

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肝切除手術における画像支援ナビゲーション(先進医療)

 肝臓は動脈、門脈、静脈と3種の血管が複雑に絡み合った臓器で、その立体イメージの構築には熟練を要します。また肝切除において術後の合併症の一つである肝不全を防止するため,肝臓の容量の掌握は必要不可欠です。当科では、シナプス・ビンセント(富士フィルム社)という画像解析装置を用いて、手術前に肝臓の立体的な画像化および正確な切除肝容量と予定残存肝容量の計算し、術前画像支援ナビゲーションのもと手術を行っており、安全かつ確実な肝切除を行っております。当科は「肝切除手術における画像支援ナビゲーション」において先進医療の認定を受けております。

3次元画像、個別の肝臓模型を用いた肝細胞がんの安全な切除

 肝臓は他の臓器に比べて、血流の多い臓器です。門脈という機能血管から約1リットル/分、肝動脈という栄養血管からも約0.3リットル/分、すなわち1分間に約1.3リットルの血液が入り込んでいます。また,血管だけでなく、胆管と呼ばれる胆汁の流出路も複雑に走行しています。肝細胞がんはその肝臓の中のどこにでも発生し、大きな血管や胆管と隣接することも多々あります。そのため,肝切除を行うには事前に十分な位置の把握が必要です。肝臓は3次元の臓器です。一方、医療で用いられるCTなどの画像は2次元です。これまではそれら2次元の情報を外科医の頭の中で3次元に構築し、肝切除を行ってきました。
 当科では、肝臓切除を行うすべての患者さんに対し、手術の前に3次元画像を構築しています。その画像データはコンピューター(iPad)に取り込み手術室まで持ち込みます。肝臓の切離ラインは、手術に3次元画像を参考にしながら、確実にがんを切除する位置で設定しています。また、患者さんに手術の方法を説明する際には、この3次元画像を示すだけでなく、3Dプリンターによって作成されたアクリル製の患者さん本人の肝臓の模型を提示しながら、判りやすい手術前説明を行っています(すべての患者さんではありません)。

  

(iPadによる術中支援)

  

(アクリル製の肝模型)

肝がんに対する腹腔鏡下肝切除

 近年、腹部外科に限らず、あらゆる領域において腹腔鏡下手術が行われています。肝切除に関しては2010年度より保険収載されています。当科においても腹腔鏡下肝切除を行っています。がんの数、大きさや発生した場所により、従来の開腹手術が適している場合も多く、すべての肝がんが腹腔鏡下肝切除の適応になるわけではありません。安全に、そして確実にがんを切除する位置で肝切除を行うことに、開腹肝切除と腹腔鏡下肝切除に差があるわけではありません。しかし、開腹肝切除の創(手術でつく傷のこと)と腹腔鏡下肝切除の創では、大きさや位置に差があり、美容上だけでなく、創部痛や術後の回復のはやさなど患者さんにとっての利点があります。

  

転移性肝がんに対する取り組み

蛍光画像を用いたナビゲーション手術

 転移性肝がんの中には、手術前の化学療法の効果により著明に縮小したり、または超音波検査、CTやMRIのいずれの検査でも消えてしまうことがあります。そのような肝がんを「化学療法の完全奏功」と呼んでいます。しかし、そのようながんであっても、顕微鏡で観察してみますと生きているがん細胞が残っていることが多くあります。当科では、そのような「見えなくなってしまった肝がん」に対しても、積極的な切除を行っています。方法の概略です。1. まず,見えなくなる前のCTやMRIを参考にして、蛍光物質(インドシアニン・グリーン)を用い、仮想(バーチャル)の腫瘍を肝内にマーキングします。2. 次に手術中に近赤外線カメラを用いて、肝臓を観察します。事前にマークした蛍光物質が肝の表面から観察されます。3. その蛍光部位を手術にて切除します。4. その後,切除した肝臓を顕微鏡で調べ、確かに「見えなくなってしまった肝がん」を確実に切除したことを確認します。これまでこの方法により、大きさ5mm以下の転移性肝がんの切除に100%成功しています。(本法は東京医科大学医学倫理委員会の承認を受けており、患者さん、およぶご家族の承諾を得て施行しています。)

  

(近赤外線カメラによる観察)

  

(仮想腫瘍(蛍光部)の切除)

大腸がん+両葉多発肝転移に対する術前化学療法+二期的肝がん切除

 これまで切除不能とされていた両葉多発肝転移に対しても、積極的に肝がん切除を行っています。正常の肝臓の場合、全体の66%を切除しても残った肝臓でも役割を果たすことが出来ます。転移性肝がんの患者さんは、肝細胞がん(肝細胞がんでは、ウイルス性慢性肝炎や肝硬変を合併していることが多い)と異なり、正常の肝臓であることがほとんどです。転移性肝がんが左右どちらかの肝臓に偏在している場合は、偏在側の肝臓を切除することで概ねの肝がんを取り除くことが出来ます。しかし、肝臓全体を肝が占拠しているような場合は、1回目に片方の癌を切除し、しばらく肝臓を休める期間を置いて(肝臓はその間にある程度再生します)、その後に残りの腫瘍を切除する方法です。この方法では、多数の転移をより安全に切除することが出来ます。

切除肝の詳細な検討

 大腸がんからの転移性肝がんについては、化学療法の効果により、先に述べたような微小な転移性肝がんが増えています。当科では、そのようながんの性状を詳しく観察するために、切除した肝臓全体を1mmの厚さにスライスして詳細に観察し、データを蓄積しています。その結果、これまでの手術後の病理診断で判らなかったような微小な肝がんを検出することが出来るようなになりました。そのデータを解析し、術後の化学療法の選択に役立てています。

  

お問い合わせ

東京医科大学 消化器・小児外科学分野(消化器外科・小児外科)
電話 : 03-3342-6111(代表)
メールアドレス : geka-3@tokyo-med.ac.jp