東京医科大学

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学会・研究会の報告

日本慢性疼痛学会

投稿者:内野

カテゴリ : 学会

2013年2月22日~23日に新宿に於いて第42回日本慢性疼痛学会が開催された。東京医大がこの会を主幹するのは4回目だそうである。麻酔科の教室員が一致協力してこの大会の運営に当たった。  テーマは「慢性疼痛をきわめる -慢性痛の診断とチーム医療」である。会長は当科の大瀬戸清茂教授が務められた。初日は、大瀬戸教授のあいさつの後に佐藤綾子先生による「医療者のパフォーマンス学」という講演を聴講した。「医療はアートであり、我々はいわゆる俳優であり、女優である。見せることが大切!」 2秒で相手を見分けるテクニックなどを披露された。なるほどと感ずるものがあった。  次に小川教授による「慢性疼痛をめぐる医療の将来動向」を聴講した。慢性疼痛の85%は腰痛であり、これらの「患者では脳機能(特にドパミン系の異常など)に異常を生じている可能性を示唆された。これまで、薬物治療や神経ブロックが用いられてきたが有効な手段がなかなか見いだせていない。最適な医療体制を確立するにはマンパワーと費用が求められる。痛みセンターの設立も急務である。  さらには、痛みのメカニズムに基づく治療薬の開発が望まれていることを述べられた。          午後からは、「がん長期生存者と遷延する痛み」のシンポジウムを田上教授が座長で行われた。がんと診断されて生存している患者(がんサバイバー)の実態について田上が全国に送った1000通のアンケートの内返送されてきた約130通を基にして発表を行った。痛みの良好なコントロールが長期予後やQOLを改善すること。疼痛治療はWHOのラダーに沿って行うが、非がん性慢性疼痛患者の薬物療法に準じて行うべきとしている。オピオイドの沈溺、中毒の懸念、長期使用における教育の重要性、鎮痛補助薬の重要性、さらには神経ブロック、心理的なアプローチのなどを加えたエビデンスに基づくmultimodal interventional therapyの重要性を提唱した。また、「神経障害性疼痛とアウトロサイト」の講演を山梨大学 小泉教授が話され、附子の鎮痛効果がアストロサイトを介したものであることを実験結果から説明されておられた。 大学に急用で戻ることになりその後の講演を残念ながら聞くことができなかった。初日は、会が終了して情報交換会となり、大瀬戸会長の挨拶の後に過去に慢性疼痛学会長をされた先生方の御挨拶を頂いた。伊藤カルテットによる演奏と歌が余興として流れ会場はさらに盛り上がった。翌日は、教育ワークショップ「Thiel法固定遺体による臨床応用について」に当科の西山医師、松岡医師が発表し本法のペイン教育における有用性を提唱した。私はランチョンセミナーの座長を担当したが、「オピオイドの適応を考えるー急性期と慢性期の狭間としての亜急性期の適応ー」を岐阜大学 飯田教授が講演され、手術後の痛みを術後早期からオピオイドを用いて管理し、慢性痛に移行させないことが大切であり、インターベンションンとして高周波熱凝固を併用していくことが重要であるとが述べられた。さらに、大学病院では、田上教授による神経ブロックEBM研究会の特別講演、漢方教育セミナー、一般演題の発表が行われ、当科の若手医師が発表をしてくれた。2010年に大瀬戸教授が東京医大に来られてペインクリニックの概念や診断の重要性を若手に伝えてくださり今日まで来た。ペインクリニックに精通する若手医師が少しずつ増えてきたことがとても嬉しいことである。これまで、大瀬戸教授が思い描かれてきた慢性疼痛に対する診断、治療、チーム医療の在り方が具現化された学会であったと思う。

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最後に、本大会を開催するにあたって御協力を頂いた、教室員の皆さん、OBの先生方、企業各社、特に当科秘書の嶋田寛子女史に深甚なる謝意を表したいと思います。4月には神経麻酔・集中治療研究会を主催し、来年は日本ペインクリニック学会を担当します。皆様のお力添えを重ねてお願い申し上げます。

 

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