2023年度 東京医科大学麻酔科専門研修プログラム
東京医科大学麻酔科は、麻酔科専門研修基幹施設として病院群(全20施設)と連携し"専攻医"育成教育を行います。
お問合わせ先

東京医科大学 麻酔科学分野
(〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-7-1)
医局長 沖田 綾乃(おきた あやの)
研修プログラム担当 柿沼 孝泰(かきぬま たかやす)
お問い合わせフォームはこちら
Tel 03-3342-6111(内線62805) Fax 03-5381-6650(医局専用)
E-mail、電話、FAXのいずれでも結構ですので、お気軽にご連絡下さい。
※病院見学/医局説明会については、決定次第ご案内致します。
麻酔科専門医研修プログラム
4年間のプログラムに則った研修を行う中で日本麻酔科学会が求める各分野の麻酔症例数(小児麻酔 25症例、心臓血管麻酔 25症例、胸部外科手術麻酔 25症例、脳神経外科手術麻酔 25症例帝王切開の麻酔 10症例)を経験することが必要不可欠となります。

専門医研修プログラムの実施
研修の責任を有する専門研修基幹施設を中心に専門研修連携施設A、専門研修連携施設Bが専門医研修プログラムに参加して専攻医の教育に当ります。
専門研修連基幹施設
東京医科大学病院
専門研修連携施設A・B
東京医科大学・茨城医療センター
東京医科大学・八王子医療センター
熊本大学医学部附属病院
国立研究開発法人 国立循環器研究センター
国立研究開発方針 国立成育医療研究センター
小山記念病院
埼玉県立小児医療センター
自治医科大学附属病院
自治医科大学附属さいたま医療センター
順天堂大学医学部附属順天堂医院
立川綜合病院
千葉大学医学部附属病院
東京女子医科大学病院
戸田中央総合病院
西東京中央総合病院
国立病院機構静岡医療センター
社会医療法人蘇西厚生会 松波総合病院
社会福祉法人 三井記念病院
山形大学医学部附属病院

麻酔科専門医とは〜
① 麻酔科専門医制度の理念
麻酔科専門医制度は、周術期の患者の生体管理を中心としながら、救急医療や集中治療における生体管理、種々の疾病および手術を起因とする疼痛・緩和医療などの領域において、患者の命を守り、安全で快適な医療を提供できる麻酔科専門医を育成することで、国民の健康・福祉の増進に貢献する。
② 麻酔科専門医の使命
麻酔科学とは、人間が生存し続けるために必要な呼吸器・循環器等の諸条件を整え、生体の侵襲行為である手術が可能なように管理する生体管理医学である。麻酔科専門医は、国民が安心して手術を受けられるように、手術中の麻酔管理のみならず、術前・術中・術後の患者の全身状態を良好に維持・管理するために細心の注意を払って診療を行う、患者の安全の最後の砦となる全身管理のスペシャリストである。同時に、関連分野である集中治療や緩和医療、ペインクリニック、救急医療の分野でも、生体管理学の知識と患者の全身管理の技能を生かし、国民のニーズに応じた高度医療を安全に提供する役割を担う。
教育理念
本プログラムは安全で質の高い周術期医療を実践し、国民の健康と福祉の増進に寄与するための、麻酔科関連領域の研鑽を積むことを目的とした専門研修プログラムである。将来日本の麻酔科医療を担う人材となり、如何なる事態にも対応のできる自信と麻酔科医療に対する誇りを有する麻酔科医となるべく、専門研修を通じて麻酔科学の基本である麻酔管理学、集中治療医学、ペインクリニック学、緩和医療学の基礎を学び、将来、世界に通用する麻酔科医となり医療貢献するための研修である。
本研修を通じて、麻酔科医にとって不可欠な知識・技術を身につけるだけでなく、医師・看護師・学生への教育指導能力の獲得とチーム医療に携わる者に必要な豊かな人間性やリーダーシップの涵養に努め、プロフェッショナルな麻酔科医になるための研修プログラムを用意している。本研修プログラム終了後に麻酔科専門医を取得し、その後、麻酔科学会指導医、ペインクリニック学会専門医、集中治療医学会専門医、博士号取得を目指す。
麻酔科専門研修の目的
1) 十分な麻酔科領域、および麻酔科関連領域の専門知識と技能を修得すること。
2) 刻々と変わる臨床現場における、適切な臨床的判断能力、問題解決能力を備えること。
3) 医の倫理に配慮し、診療を行う上での適切な態度、習慣を学ぶ。人への思いやりと医療に対する愛情を有すること。
4) 常に進歩する医療・医学に則して、生涯を通じて研鑽を継続する向上心を持つ。弛まぬ努力により知識と技術の向上に努めること「学則不固」をモットーに!リサーチマインドを有すること。
5) チーム医療を担うための人格とリーダーシップを有すること。
以上の資質を修得した医師となることを目的とする。
プログラムの特徴
本プログラムにおける麻酔科専門研修では、あらゆる症例に対応できる手術麻酔の研修を受けることが出来る。特殊症例(小児麻酔、心臓血管麻酔、胸部外科麻酔、産科麻酔、脳神経外科麻酔)は、基幹病院である東京医科大学病院のみならず、多様で特色のある専門研修連携施設で更に学ぶ事が出来る。
麻酔関連領域である集中治療研修は、過大侵襲を受けた術後患者や敗血症、ARDSなど重症患者の病態を把握し、エビデンスに基づいた呼吸・循環管理、感染症管理、代謝栄養管理などの全身管理、集中治療の基礎と最先端を学ぶ事が出来る。ICUスタッフと主治医、感染制御部医師、看護師、薬剤師、臨床工学技士と合同でカンファランスを開き、治療方針の決定を行う。多職種で呼吸管理や感染症、代謝異常の患者の全身状態を把握する。多職種連携の総合医療である集中治療領域でリーダーシップを学ぶ。
麻酔関連領域であるペインクリニック研修では、とくに診断学を重視する。診察・検査・診断・治療のロードマップをしっかり引けるような研修を行う。超音波ガイド下神経ブロックやレントゲン透視神経ブロックなどの手技や薬物療法、理学療法、東洋医学、臨床心理学など幅広い診療を学ぶ事が出来る。また、整形外科、リハビリテーション科、神経内科、看護師、臨床心理士と合同カンファランスを行うことで、多職種連携の医療とチームワークを学ぶ事が出来る。
麻酔関連領域である緩和医療研修では、増加するがん患者のQOLを向上させるための医療を学ぶ事が出来る。がんと診断されがんの治療している患者と家族の苦痛をトータルペインとして捉え、患者主体のアセスメントを行い、適切な緩和ケアを行うことを学ぶ事が出来る。
麻酔科専門研修プログラムの運営方針
● | 研修の前半2年間のうち少なくとも1年間、後半2年間のうち6ヶ月は、基本的に専門研修基幹施設である東京医科大学病院において研修を行う。 | ||
● | 研修内容・進行状況に配慮して、プログラムに所属する全ての専攻医が経験目標に必要な特殊麻酔症例数を達成できるように、ローテーションを構築する。 | ||
● | 本プログラムにおける麻酔研修期間中の年間の麻酔経験件数は約200例以上を経験する。 | ||
● | 特殊麻酔研修では、研修内容の充実を図るため本院以外の専門研修連携施設で更なる研修を行う。 | ||
● | 小児麻酔研修では、小児領域に特徴のある研修連携施設である、国立成育医療研究センター、埼玉県立小児医療センター、自治医科大学附属病院のいずれかにおいて研修を行う。 | ||
● | 心臓血管麻酔では、心臓血管領域に特徴のある研修連携施設である、国立循環器病研究センター、自治医科大学附属病院、自治医科大学附属さいたま医療センター、三井記念病院、東京医科大学八王子医療センター、山形大学医学部附属病院、松波総合病院、立川綜合病院のいずれかにおいて研修を行う。 | ||
● | 産科麻酔では、産科麻酔領域に特徴のある研修連携施設である、国立成育医療研究センター、自治医科大学附属病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院のいずれかにおいて研修をおこなう。 | ||
● | 専門研修基幹施設で研修プログラムをもつ,茨城医療センター、熊本大学医学部附属病院、戸田中央病院、自治医科大学附属病院,自治医科大学附属さいたま医療センター、順天堂大学医学部附属順天堂医院、千葉大学医学部附属病院、東京女子医科大学病院、三井記念病院、山形大学医学部附属病院と連携し共に補い合うことで、専攻医のニーズに合わせた幅広い麻酔科専門研修を行うことが出来る。 | ||
● | すべての領域を網羅するローテーションAを基本とするが、小児麻酔を中心に学びたい者へのローテーション(ローテーション例B)、ペインクリニックを学びたい者へのローテーション(ローテーション例C)、集中治療を中心に学びたい者へのローテーション(ローテーション例D)など、専攻医のキャリアプランに合わせたローテーションも考慮する。 | ||
● | 地域医療の維持のため、最低でも地域医療支援病院である、岐阜県の松波総合病院、あるいは埼玉県の埼玉県立小児医療センターなどで研修を行う。また、プログラム内では基幹施設のある東京都以外に,山形県、茨城県、千葉県、埼玉県、栃木県、岐阜県、大阪府、熊本県、新潟県と幅広い地域に対して医療貢献するプログラムとしている。 | ||
研修実施計画例
コース | A(標準) | B(小児) | C(ペイン) | D(集中治療) |
初年度 前期 |
本院 | 本院 | 本院 | 本院 |
初年度 後期 |
本院 | 本院 | 本院 | 本院 |
2年度 前期 |
研修連携施設 またはB |
本院または 研修連携施設A |
本院または 研修連携施設A |
本院または 研修連携施設A |
2年度 後期 |
研修連携施設 またはB |
小児麻酔研修 | 本院(ペイン) | 本院(集中治療) |
3年度 前期 |
本院または 心臓麻酔研修 |
本院または 本院(集中治療) |
本院または 心臓麻酔研修 |
本院または 小児麻酔研修 |
3年度 後期 |
本院または 小児麻酔研修 |
本院または 本院(ペイン) |
本院または 小児麻酔研修 |
本院または 心臓麻酔研修 |
4年度 前期 |
本院または 本院(ペイン) |
本院または 心臓麻酔研修 |
本院または 本院(ペイン) |
本院または 本院(集中治療) |
4年度 後期 |
本院 本院(集中治療) |
本院または 研修連携施設B |
本院または 本院(集中治療) |
本院または 本院(ペイン) |

週間予定表
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | |
午前 | 手術室 | 手術室 | 外勤 | 手術室 | 休み | カンファ | 休み |
午後 | 手術室 | 手術室 | 外勤 | 手術室 | 術前評価 | 休み | 休み |
当直 | 当直 |
到達目標
本研修プログラムでは、専攻医が整備指針に定められた麻酔科研修の到達目標を達成できる専攻医教育を提供し、十分な知識・技術・態度を備えた麻酔科専門医を育成する。
麻酔科専門研修プログラム全般に共通する研修内容の特徴などは別途資料麻酔科専攻医研修マニュアルに記されている。
専門医取得までに学ぶ学問体系

各時期に於いて麻酔科医として各人が目指すべきもの

留学
現在、短期研究のためにスエーデン・ルンド大学に留学をさせています。これまで基礎研究ではスエーデン・ルンド大学で脳虚血の研究およびミトコンドリア機能解析の研究を、臨床留学は、ベルギー・ゲント大学で心臓麻酔、集中治療管理の研鑽を行うべく教室員を送り出して来ました。今後は、オランダ・ユトレヒト大学、ドイツ・マインツ大学、フランス・モンペリエ大学への臨床研修も視野に入れて人材を幅広く海外に送り出すことを考えております。
これまでに留学をした施設
アメリカ・MGH・麻酔科
アメリカ・カンザス大学・麻酔科
スエーデン・ルンド大学・実験脳研究所
ベルギー・ゲント大学・麻酔科
ドイツ・ハンブルグ大学・麻酔科
交換留学
現在、東京医大・麻酔科ではオランダ・ユトレヒト大学から交換留学という形で毎年2名の医学部6年生を6週間受け入れて、参加型臨床実習を行っています。6週間の期間中、手術室、ICU、ペインクリニック外来で実習を行います。この間、教室員によるレクチャーは英語のスライドを用いてすべて英語で行っています。
東京医科大学麻酔科専門研修プログラムの特徴

東京医科大学麻酔科専門研修プログラムのメリット

多くのサブスペシアリティを目指すことが可能

手術室業務

新宿では14室の手術室で年間5,600件の全身麻酔症例を管理しています。心臓血管外科手術、呼吸器外科手術、消化器外科手術、頭頸部外科手術や脳神経外科手術などの外科系のほとんどの手術が日々行われています。そのため、多くの手術症例を経験でき、研鑽を積むことができます。特に、血管外科のステント手術や先進医療としてのロボットによる(Da vinci手術)心臓、前立腺、婦人科疾患の手術件数は全国でも有数であり、他の追随を許していません。
研修施設の指導体制と前年度麻酔科管理症例数
基幹施設麻酔科管理年間症例数:6,734症例
本研修プログラム全体における総指導医数:25人
基幹施設における特殊症例数 | |
小児(6歳未満)の麻酔 | 205症例 |
帝王切開術の麻酔 | 257症例 |
心臓血管手術の麻酔(胸部大動脈手術を含む) | 300症例 |
胸部外科手術の麻酔 | 313症例 |
脳神経外科手術の麻酔 | 286症例 |
集中治療

当大学の集中治療室は日本集中治療医学会認定施設であり、10床で運営を行っています。心臓血管外科、消化器外科、呼吸器外科、泌尿器科、産婦人科などのほとんどの外科系手術の術後の患者や病棟からの重症疾患患者に対してエビデンスに基づく、質の高い、循環、呼吸、栄養管理を行うことで生体侵襲から患者さんの生命の安全を護ることを心掛けています。現在、スエーデンの医師たちと共同で、血小板および白血球のミトコンドリア機能解析を行い、敗血症患者の予後判定指標の確立に向けた研究を進めています。
ペインクリニック

急性・慢性の疼痛患者さんのケアを外来および病棟で行っています。2010年7月よりNTT東日本関東病院から大瀬戸 清茂教授が招聘されました。これを機に外来を活性化し、従来の神経ブロックに加えて超音波ガイド下神経ブロックを併用して安全な神経ブロックを施行するとともに、透視下において三叉神経ブロック、神経根ブロック、椎間板注入術、高周波熱凝固など多岐に亘る神経ブロックを行っております。また、脊髄硬膜外電極植え込み術などの先進的な医療も経験できます。大瀬戸教授は、ペインクリニックの分野では日本一に近い知識と技術を有しておられます。そのため、ペインクリニック外来では、患者の問診を通じて痛みの原因を診断する能力を身につける教育を提供することを目指しています。そして、除痛のために自らが選択した神経ブロックを行うことで自分の診断・治療が正しいものであったのかを検証し、ペインクニック専門医を目指しての研鑽を積むことができます。現在、約50件/月の透視下神経ブロックを行っており、日本の大学機関の中でも有数の施設となっております。
緩和医療

本年4月より、当科の田上教授が緩和医療部の責任者となり、がん患者に対しての緩和医療にあたっております。ペインクリニック外来と協力する形で、がん患者のQOLの向上に取り組んでおります。
このように、プロフェッショナルな麻酔科医を目指すみなさんに取りまして、自分の能力を高めていくことができる医療環境を提供できるようにしていくことを心掛けています。教室員の和を大切にして、出身大学の壁がない東京医大麻酔科学は、世界に通じる麻酔科医を目指したい気概のある方を待っています。
経験豊富なスタッフによる指導
各分野において経験豊富なスタッフによる指導が行われています。

研究
当科では様々な研究を行っておりますが、その大半が科学研究費を獲得しております。
研究は、大学院生が主体となって行っていますが、大学院生でなくても研究をして学位を取得することは可能です。

1. | 虚血性脳神経細胞障害とミトコンドリア機能不全の連関解析(科研費獲得) |
2. | 麻酔薬と神経毒性研究 |
3. | 脳保護薬開発のためのトランスレーショナル研究。 |
4. | 麻酔薬が血小板ミトコンドリア機能に及ぼす影響(科研費獲得) |
5. | 脳内トランスポーター機能から観たと麻酔薬神経毒性の連関解析 |
6. | 敗血症状性脳症とミトコンドリア機能不全の連関解析(科研費獲得) |
7. | 敗血症状性肝障害とミトコンドリア機能不全の連関解析(科研費獲得) |
8. | Bertolotti 症候群患者の腰痛に対する解剖学的解析(科研費獲得) |
9. | 敗血症状性脳症の分子生物学的解析(科研費獲得) |
10. | モニタリング機器の医療安全における調査研究(科研費獲得) |
11. | 呼吸障害に対する人工呼吸管理 |
専門医取得後の進路
麻酔科医も将来性は高く、その活躍の場は限りなく広いと言えます。後期研修が終了し、専門医取得後は、附属病院・関連病院での勤務が可能です。また、さらなる専門性の研鑽(心臓麻酔、小児麻酔、産科麻酔等)やICUやペインクリニックなどのサブスペシアリティーを目指すことや留学をすることが可能です。また、御自宅の事情で他科へ進まれる場合、麻酔医療を学ばれた方は、どの科にも自信をもって進むことが出来ます。医局では、各人の進路について親身に相談に乗っております。
