はじめに
東京医科大学麻酔科学分野ペインセンター外来は、前NTT東日本関東病院ペインクリニック科部長の大瀬戸清茂兼任教授の下、神経ブロック療法や薬物療法、心理療法、理学療法などの様々な方法を用いて、患者にとって有害な痛みを緩和するための治療を行っています。
痛みは、身体に生じた異常に対する警告反応として大切な役割を持っていますが、痛みが不必要に長引いてしまうと、有害なものとなってしまいます。痛みが長く存在すると、より強く痛みを感じてしまったり、新たな痛みが現れてきてしまったりと、いわゆる痛みの悪循環が生じ、QOLを低下させることにもなります。このような状態に陥った時は、身体的や精神的な苦痛を適切に緩和することがとても重要になります。ペインセンター外来では、専門的な知識と技術をもとに、神経ブロック療法や薬物療法などの様々な方法を用いて、有害な痛みを緩和するための治療を行っています。
診療体制
外来スタッフは、大瀬戸教授以下、麻酔科医師2~3名で構成されています。外来診療は、月曜・火曜・木曜、第1、3,5土曜の午前中に、3部屋の診察室と15台のベッドを有する処置室、また透視室や手術室などで行います。
1日の外来患者数は平均40~50人です。対象疾患は椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、帯状疱疹・帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、顔面神経麻痺、末梢血管障害痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、開胸術後疼痛症候群、難治性慢性疼痛、網膜中心動脈閉塞症、突発性難聴など多岐にわたり、大学病院のペインクリニックとしては有数の症例数を誇っています。
1日の流れ
治療は8:30より開始し、処置室で各種エコーガイド下神経ブロックや硬膜外ブロック、トリガーポイントブロックなどを行います。また、午前と午後の枠を使い画像診断部にて透視下の神経根ブロック(高周波パルス療法を含む)、大腰筋筋溝ブロック、仙骨硬膜外洗浄、後枝内側枝高周波熱凝固、CTガイド下の交感神経節ブロック、内臓神経ブロック、Disk FX治療などを行っています。午後から手術室で脊髄刺激電極植込術や、ラッツカテーテル挿入術などを行うときもあります。薬物療法では、痛み止めとして普段使われる消炎鎮痛薬のほかに鎮痛補助薬と呼ばれる抗けいれん薬、抗不安薬、抗不整脈薬、または漢方薬なども用います。慢性の難治性疼痛には、医療用の麻薬性鎮痛薬を用います。1日の外来が終了した夕方に、その日の初診症例や透視下のブロック症例を中心に、心理療法士、理学療法士、看護師なども含めたスタッフ全員で症例カンファランスを行い、病状や治療内容を共有しています。
治療方針
ペインクリニックというと、疼痛部位に対しすぐに神経ブロックをするイメージがあるかもしれませんが、当外来では診断を重視しています。まず、最初に十分な問診と診察を行い、さらに必要な検査を施行することにより、漠然と痛みの治療をするのではなく、しっかりと診断を狭めていきます。その上で、患者にとって最良の治療法を選択するという、診察・検査・診断・治療のステップを最も重要と考えています。神経ブロックによる診断的治療も特徴的です。これらの診療は、毎日のカンファランスで評価を行って、症状の変化に対応した治療計画を立てていきます。
今後の目標
現在、疼痛で悩んでいる方はとても多く、神経ブロックの件数は右上がりに増加しています。スタッフ全員で、そのような痛みに苦しみ悩んでいる方の苦痛を少しでも緩和できるよう、できる限り努力していきたいと考えています。