東京医科大学

麻酔科学分野 麻酔を受けられる患者さまへ

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学会・研究会の報告

ESA報告

投稿者:臼井

カテゴリ : 学会

ESA報告 続き

 

Paris congress

 

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★パリ市内公立病院

フランスの衛生事情は概して良好に保たれ、医療水準や論文数も世界トップレベルです。

 

OECDヘルスデータによると100床あたりの医師数は48.4人と日本の15.6人に比べてかなり多く、平均在日日数は5.2日(日本は18.8日)とマンパワーは充実していそうです。

実際、医師を含む医療従事者の非労働時間は確保されており、プライベートの時間を尊重することは当然といった感じでした。

 

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パリ公立病院協会は37病院から成り立ち、パリ市周辺の1150万人の健康を担っていますが今回はその中の一つの病院へ見学に行きました


ここは整形外科と消化器外科を専門とする病院で、手術症例はその二つに限っているとのことでした。

手術室は5室であり、年間600-700症例程度の手術数であるとのこと。

病院全体は古く、手術室も最新の設備という訳ではなかったですが肝臓移植など大きな手術も行っていました。



フランスでは吸入麻酔薬はデスフルランを低流量で使用することがほとんどで、セボフルランもあるが使っていないらしいです。日本でいうイソフルランのような扱いです。

デスフルランは覚醒が早いから使いやすそうです。うちの病院でも早く使用出来るようになって欲しいです。

意外だったのは外科医に女性が多いことでした。話を聞くと、フランスでは外科医の仕事は女性のものになりつつあるらしく、医師全体としても女性の割合は増えているとのこと。日本でも女性医師は増えているが、外科に関しての状況は正反対なので、驚きでした。

違いの理由の一つに労働環境にあるのかなと思った。フランスは労働時間がしっかり決められているからプライベートに時間を割けるだろうし、おそらく出産とか育児とかのサポートも手厚くって出産休暇とかも男性がとったりするのが普通で、だから性別のdisadvantageが小さいんだと思いました。

それに手が小さいから、細かい手術を上手に出来たりして。あとは医師の社会的地位が日本のように高くないため、フランスの優秀な男性はグランゼコールに進学するからとか。

 

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オペ室には大きな窓があって外の光を取り込めるようになっていました。そのため開放感を感じられ、労働ストレスを軽減できると思ったし、一日のリズムを肌で感じられるので良い仕事環境だと思った。

オペ室自体の大きさの差はあまりないのに、麻酔科のワーキングスペースが広いということも不思議だった。使っている麻酔機や薬剤、輸液、その他医療機器は同じなのに、スペースが広い。ケーブルとかが少ないのかもしれません。

他には離被架をかなり高く設定しているのも印象的でした。これは後に書くモンペリエ大学病院でも同じでした。

理由を聞くと、①清潔野をはっきりとわけるため②外科医の視界を術野に集中させるため③麻酔科医が患者の気道などにアクセスしやすいようにスペースを広くとるためだそう。

 

手術室見学が終わったら、リカバリールームを見せてもらいました。

基本的に手術が終わったら、リカバリーに移動して、そこで麻酔からゆっくり覚ましていきます。リカバリには専門の医師が常駐しています。

術後鎮痛法の中で初めてみたものに、手術創に沿ってチューブを留置し(皮下ドレーンのように)持続的に局所麻酔薬やopiatesを流す、持続皮下注鎮痛法があります。手術創が閉鎖されておらず、チューブで外界と交通しています。ドレーンと違って体外から体内に向かう方向に薬が流れていく訳なので感染が増えそうだけど問題ないらしいです。鎮痛効果も良いらしいんですが、残念ながら日本にはないとのこと。iv-PCAキットとかで代用できそうですが。

 

という感じで見学を終え、その後教授おすすめのビストロで食事をして(超美味しかった、昨夜とは段違い!)解散。翌日はモンペリエへ。

 

 

 

 

 

 

★モンペリエ大学病院

パリから750km、TGVでモンペリエへGo.

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出発時、チケットを日本に忘れるという失態を犯し、危うく列車に乗り遅れるところでしたが現地のマニュエルさんに助けてもらい、なんとかチケット購入し無事モンペリエに向かうことが出来ました。

買い直す必要があったんですがチケット代は日本で買うより、片道一万円くらい安かったです。

 

 

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こんなイメージが頭をよぎりました。いろいろな商売が世の中にはあります。

気をとりなおして、モンペリエへlet's go!

モンペリエは中世からの学園都市で地中海気候のため、とても過ごしやすいです。

到着日にカプテビラ教授(モンペリエ大学)とマニュエルさん、内野教授の四人で夕食をとりました。そこのレストランはカプテビラ教授一押しのところでミシュランの★付きで料理はどれもとても凝っているし、レストラン内は異様にオシャレだし最高でした。ただ、三時間程のディナータイムでしたが、オンリーイングリッシュで疲れた体には応えました。

英語でもっと自分の言いたいことを表現できれば世界が広がるだろうなとしみじみ実感しました。

カプデビラ教授はとてもフレンドリーな方で話も面白く、大きなエネルギーを感じさせるような人でした。

いろいろな話を聞かせてもらいましたが、留学の話のときに、「神経ブロックとか、こっちで勉強したいならいつでもウェルカム。二ヶ月も来ればかなり勉強になるよ。もしフランス語が出来るならスタッフにすることもやぶさかではない、ニコッ☆(笑顔)」と言ってもらえました。フランス語レベルの要求は現地の人と確実なコミュニケーションをとれること、ということでハードルは高そうです。短期留学でも、こっちは気候もいいし(地中海まで10km!)ご飯もおいしいしオススメです。皆さん英語を勉強しましょう!

モンペリエ大学は1220年に成立し、その歴史は古く特に医学部はヨーロッパ最古です。

麻酔科のカプテビラ教授に案内して頂きましたが、手術室はパリ市内の病院に比べて、かなり大きく一日に70件以上全身麻酔を行っていました。ブロックも盛んにやっていて、麻酔前室で神経ブロック及びチューブを留置して手術開始まで待ちます。で手術が無事終わったらリカバリーへ戻り、そこで覚醒、抜管するという流れでした。リカバリーのベッドは20以上ありました。


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オペ室では手術のみを行うという感じで(麻酔導入も前室でやってしまう、ちなみに前室は各部屋に一つずつある!)効率的に手術室運営がなされています。麻酔科の仕事も完全に分業制で導入する人、麻酔管理する人、覚醒・抜管する人に分けられていて一人の麻酔科医が最後まで完遂するということはないようです。どこからどこまでが自分の仕事かはっきりしていて、それぞれが決められた仕事に集中することで仕事全体が効率的にまわっていく。まさにチーム医療ですね。

最後にカプテビラ教授に神経ブロックのDVDをいただいてモンペリエの地を後にしました。

 

 

 

 

★ルンド

その後、TGVでパリに戻ってシャルルドゴール空港からコペンハーゲンへ。夜遅くに着いたのでその日は空港近くのビジネスホテルに泊まりました。

翌日、午前中はコペンハーゲン観光しました。内野教授に色々と案内してもらいながら街を散策、さすが北欧は家具とか照明とかおしゃれなものばかりでした。その中に気に入ったものが一つあって、その時は時間がなかったので帰国してから探して買おうとメモしておいたんですが、日本には売っていませんでした。また次の機会にでも買おうと思います。

その後、スウェーデンのルンドへ移動しエスキルと合流し、中華料理屋でランチ。なんでスウェーデンで中華?っと思うかもしれませんが、心配いりません。僕もそう思いました。

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料理の味は、少し日本の中華とは違った感じで内野教授一押しの春巻きが特に強烈でした。春巻きは、なんというかカロリー摂取に重点をおいているような味で、14ほど食べ進んだ時点で、これ以上食べると体を壊すと思い残してしまいました。隣のエスキルを見るとばくばく食べていました。味覚って生来のものと育った環境によるものがあるんですよね。

内野教授もほとんど箸をつけておらず、やはり日本人の舌には合わないようでした。






中華料理店を出て、露店のソフトクリームを食べながらルンド大学のラボへ。

ラボで日本からのおみやげを渡したり、ESAの報告をしたり研究をみせてもらったりした後、エスキル宅へみんなで向かいます。エスキル宅の庭でBBQが用意されていました。

肉も美味しいし、みんなフレンドリーでいい人達ばかりだし最高だったんですが、やはりここでも英語オンリー。しかもswedishは英語が達者です。話に相づちを打つのが精一杯でした。こうして、いつもニコニコしていてあまり意見を言わない典型的な日本人像が形成されていくんだと思いましたし、英語である程度表現出来ないと、いつも挨拶とか表面的な話で会話が終わってしまってなかなか実りある会話が出来ないのでもったいないなと思いました。英語が出来てはじめてスタートラインに立てるというか。

 

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食事が終わって、エスキルの家の中を見せてもらい、少しゆっくりしてコペンハーゲンに戻りました。

そしてパリで乗り換えて東京へ戻りました。

 

海外の学会は初めてだったのに加えて色々な病院見学をしたり、ルンド大のラボに行ったりと移動に次ぐ移動でなかなかタイトな学会旅行でした。

しかし、普段個人旅行では見る機会のない場所へ行ったり、会うことのないような人達と教授の紹介で話すことが出来たりと、貴重な経験の連続ですごく充実していました。このような貴重な機会を与えていただいた内野教授に深く感謝いたします。

またこのESAの期間中、病院での仕事は休まなければならならず仕事のカバーをしていただいた関根先生、奈倉先生はじめ医局員の皆様に厚く御礼申し上げます。

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