東京医科大学

麻酔科学分野 麻酔を受けられる患者さまへ

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学会・研究会の報告

日本心臓血管麻酔学会@仙台

投稿者:濱野

カテゴリ : 学会

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仙台で開催された"日本心臓血管麻酔学会"へ参加してまいりました。

震災からちょうど1年半。

国民の復興への思いからか、東北新幹線はかなり混雑しており、

また宿泊施設は確保が極めて困難な状況で、

学会参加者の中には近隣の温泉に宿泊した方や、

日帰りを強行した方も多数(?)いらっしゃいました。


(この宿泊施設の状況ですが、某アーチストのコンサートという説が有力ですが、

実は復興工事に携わる人のために建設会社が宿をおさえている、という裏話もあるようです)


心臓血管麻酔学会ということで、もちろん、経食道心エコーや

普段接することのできない小児心臓手術のセッションなども聞いたのですが、

今回一番印象に残ったのは"術後せん妄"でした。

股関節手術や心臓手術後に多発するといわれる術後せん妄、

今後"超高齢者社会"を迎える我が国にとっては大きな問題です。

患者の予後(死亡率、施設入所率)を悪くすること、

医療経済を悪化させることは明らかとなっており、

発症した後の薬物治療に効果がないことも知られています。

また"活動過剰型"のせん妄は認識され易いですが、"活動低下型"は見逃されがちです。

こうした状況の中でポイントとなってくるのが"予防"です。

術前にhigh risk群を認識、

術後は"予防"に加え"早期発見"と"原因の除去"が重要になってきます。

適切な鎮静・鎮痛、せん妄の評価、睡眠の促進を基本的柱に、

できる限り日常生活に近づけてあげること(たとえば普段家で使っている物を側に置く)、

早期離床などが効果的とのこと。

人工呼吸に接続したまま歩行リハビリをしている写真が衝撃的でした。

これは極端な例としても、当院のICUで関根先生が中心となって

積極的な早期離床を促している姿は、皆さんも見たことがあると思います。

手術だけでは患者さんの予後を改善することは不可能です。

そのことを思い知らされたシンポジウムでした。

そんな中で私たちができることは、脳血流維持を意識した麻酔管理でしょうか。

今回の発表ではBISrSO2と術後せん妄の関連性は高くなかった、

といった内容がありましたが、

脳低還流が様々な問題を引き起こすことは明らかですし、

これらのモニターを今まで以上に意識していきたいと思います。


この学会は懇親会が楽しめます。

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顔見知りが増えたこともありますが、

優秀演題(藤田昌雄賞)の発表があったり、

余興があったりと、

あっという間に時間が過ぎて行きます。

今回は某球団のチアガールが。

N先生が大喜び、その横で

T先生が来年の藤田昌雄賞獲得にむけて

野心を燃やしておりました。


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仕事を休んで参加させていただき、

ありがとうございました。

皆さんにはご迷惑をおかけしてしまいましたが、

今回得た知識を今後の臨床に

還元していきたいと思います。


ちなみに懇親会では、牛タンをはじめ

芋煮、笹かま、だだちゃ豆、ずんだ餅など

東北の美味しいものが勢揃いでした。

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