ESA報告術中と周術期の合併症
2012.07.24
投稿者:内野
カテゴリ : 学会
第2回は、麻酔に伴う合併症や死亡率を検討した講演についてです。
Morbidity in anaesthesia and peri-operative care
内容は以下のように訳しました。
① 麻酔に伴う合併症
死亡率:7/100000
② 合併症発生の原因:薬物誤投与、心臓イベント、気道トラブル、high spinal、 出血に対する麻酔管理の未熟さ、→知識不足、上級医師の不足、不適切なモニタリング、道具不足、予期せぬ薬物の作用、疲労
③ 合併症(18-20%):PONV、のどの痛み(14-70%),歯牙損傷1/1000、硬膜穿刺(0.5-0.6%)、頭痛(3%)脊損(0.8-0.9%)、心停止(1/10000)、脳損傷(0.15-0.9/10000)
↓
④ 予測できたもの(術前評価、麻酔計画、適切な技量などが要因)、重篤な合併症:原因を以下に述べていく。患者がとても重症(呼吸不全:麻酔器がはずれていた。Leak、チューブの閉塞、)薬剤投与(誤投与、誤用量、誤投与ルート)、気道トラブル(気管挿管失敗、誤嚥、事故抜管)、麻酔関連機器のトラブル(麻酔器、気化器、微注ポンプ)、関連因子:スタッフが疲労していた。経験不足、術式を把握していない、チームの因子:poor communication、麻酔計画の失敗、チームの混乱、組織的な問題:全体の把握、慣れていない道具の使用、監督不行き届き、疲労
⑤ 特殊な状況:アナフィラキシー(1/10000):薬剤、ラテックスが原因、重症脳損傷(0.9/10000):低酸素、低血圧、年齢、ASAのハイリスク、緊急、National Project 4では重症脳外傷は依然として問題視されている。術中覚醒:1-2/1000の頻度、麻酔薬の薬物動態の知識不足、モニタリング、道具の不備、挿管困難などが要因
⑥ 局所麻酔薬:0.5/1000心停止、硬膜外血腫、脊損、神経根損傷、要因:high spinal、全身麻酔下の神経ブロック、薬物、低血圧、エピネフリン
⑦ 神経損傷:神経外傷、神経への薬物注入による。その他:尺骨神経圧迫、血圧変動、タニケットによる橈骨神経圧迫、砕石位による坐骨神経の伸展
⑧ 眼球損傷:保護が不十分、外傷、術中の不注意な眼球の動作、腹臥位
⑨ 妊婦:全身麻酔による覚醒、脳損傷、局所麻酔:神経損傷、痛み、後頭痛、局所麻酔下の苦痛
⑩ 塞栓:多発外傷、不動、タニケット、脳外科手術、骨盤手術、心臓外科手術が要因となることが多い。
⑪ 薬剤誤投与:スキサメトニウム、オピオイド、局所麻酔薬、昇圧薬、抗生剤、筋弛緩薬、ヘパリン
⑫ その他:落下、手技に伴う外傷、気胸、血胸など
予防策:トレーニング、教育、自覚、ガイドライン、標準化
これらのことを施行しても1%のひとが不適格者となる。
死亡率や合併症を減らすには
① 周術期の概念:40%は評価や準備不足が要因、43%は出血や道具の不備が要因
② Human Factor:50%以上の死亡の原因、チームトレーニング、チェックリストや標準化によって克服可能かもしれない。
③ チームワークと会話:60%以上の危機的状況の対応に貢献、間違った側の手術、KCL投与、間違った輸血、シミュレーションによる回避
④ 組織的要因:麻酔計画の未熟さ、スタッフ不足、ローテーターが多数、混乱、疲労、ストレス
術中、術後合併症は減らせるか?
① すでに抱えている合併症、複雑な手技、多くの手技を用いる手術、多くのチームが関与する場合に起こりやすいが、周術期管理、IT,安全管理を重視する文化、human factorの存在の理解、技術やモニターの進歩により減らしていくことを目指す。
以下の点から合併症の軽減を目指している。
技術の進歩
① IT,微注器
② ラべリング、バーコード、prefilled syringeの改良
③ 持続的な輸液のモニタリング
④ 超音波ガイド下ブロック、カニュレーション
⑤ 自己血輸血、セルセーバー
⑥ 体温管理
安全を意識した介入
① 手指の消毒
② 患者の同定
③ 手術部位の同定
④ 高濃度電解質溶液の調整
⑤ 呼吸器ケアbundleの適応
⑥ 敗血症bundleの適応
⑦ CVline関連感染
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