ISO(国際標準化機構)年次総会報告
2011.09.11
投稿者:平林
カテゴリ : 学会
現在の呼吸器モードの用語は余りにも数多く、我々ユーザーが人工呼吸器の理解を困難にしている大きな原因となっているようにも思われます。例えばIPPV; Intermittent Positive Pressure Ventilation、 CPPV; continuous positive pressure ventilationに関しては陽陰圧式が存在した過去はともかく、現在あえてCPPVとIPPVの違いを区別する意義はありません。また、現在の人工呼吸モードはすべてCPPVの概念(すなわちPEEPを付加した換気法の総称)の範疇にあります。そう言った意味でIPPV、CPPVなどは歴史的使命を終えた用語で、時代的にそぐわない古い用語と言えます。
各人工呼吸器製造メーカーごとの呼び名の違いも存在します。AutoFlow(Drager )、PRVC; Pressure Regulated Volume Control(Siemens Servo)は若干の差があるが基本となる原理は同じ概念の換気モードで、簡単に表現すれば先行する換気において計測したコンプライアンスに基づいてPCVレベルを演算し自動設定することで、圧制御型の換気で擬似的に量換気を提供する機能です。
BIPAP; Biphasic Positive Airway Pressure (Drager)は二つのCPAPレベルを交互に切り替えることでCPAPに換気補助能力を付加したものです。APRV; Airway Pressure Reliese Ventilationは狭義のBIPAPの変法で、低圧相には一つの呼気のみの状態をAPRVと呼ぶ。BiPAPはRespironics社の登録商標で、BiPAPのBiはIPAP(Inspiratory Positive Airway Pressure)とEPAP(Expiratory Positive Airway Pressure)の2つのPAPという意味です。これらも基本となる原理は同じ概念の換気モードです。
一般的な名称や、各人工呼吸器製造メーカーごとの呼び名の違い、使われることばの曖昧さと多様性を整理して標準化するべきであるとの要望が出てきました。SC4ではそれら乱立する呼吸モード用語を大まかに4分類、すなわち強制換気あるいは自発呼吸補助に分け、さらにそれぞれをFlow-ControlあるいはPressure-Controlに分ける提案がされました。
これから原案が作成され、今後各国で審査されて修正され、投票による承認を得て標準化されることになります。今後の日程は、2012年1月にボストン・ケンブリッジで中間会議、2012年6月に京都で年次会議が予定されています。
ISOの委員として3年目を迎えましたが、英語もできるわけでもなく、貢献できているわけでもありませんが、5年後あるいは10年後にはもう少し活躍できるよう自分自身に期待しています。
八王子医療センター 平林剛
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