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学会・研究会の報告

日本小児麻酔学会第17回大会報告

投稿者:新井

カテゴリ : 学会

9月23日(祝)24日(土)の二日間、大阪・千里ライフサイエンスセンターで日本小児麻酔学会第17回大会が開催されました。

今年の担当は大阪母子総合医療センターで、会長は木内恵子先生でした。個人的には、以前見学に伺った時大変お世話になった先生です。

前日(出発日)は当直明けで午後の症例を1件終わらせ、一度自宅に戻りもろもろ仕事を片付け、新大阪に到着したのは終点千里中央まで行く地下鉄の最終時刻でした。今回はあまり考えることなく、会場に一番近いホテルを申し込みました。

日付が変わったころ千里中央の改札を出て、「適当に行けば見えるだろう」とホテルを探したのですが、偶然見つかったからよかったものの、千里阪急ホテルは低い建物で危うく迷うところでした。チェックイン後、最後の悪あがき?座長の準備をして寝ました。

 

大会第一日目。

朝7時。途中で出会ったS育のS木先生と朝食会場へ。

会場に行くと、S育のS井先生、都立小児のS木G一先生、恩師Y下先生などなど、小児麻酔の巨匠がたくさんいらっしゃいました。

以前御自宅に泊めていただいた、アルバータ小児病院のRobin Cox先生にも直接御挨拶することができて嬉しかったです。

 

日頃追われるように臨床業務をこなしているせいか、今回の学会はとにかく久しぶりに勉強がしたくなりました。以下、個人的な好みで聞いてきた内容です。徒然なるまま記していきます。

 

ワークショップ1「小児の経食道心エコー」:小児の心臓手術でも成人同様、TEEは重要な術前術後診断・評価の手段となります。

*新生児症例は術野からの胸壁心エコー評価も考慮する。

*禁忌 側副血行路の存在、食道静脈瘤、体重2.5kg以下、咽頭腫瘍、食道手術後

*小児心臓外科医の立場から、TEE評価により今までやらなくてよいことまでやっていたかもしれないことがわかった。

*PA banding→PVの血流を見る、bandの位置

*cannulationの状況が確認できる(IVC cannulationはHVに入りやすい、左室のventing不良など)

*現在小児領域で使用されるプローべの目安:シングル→体重3kg、マルチ→6kg、3D→8kg

*CTでもTEEでも3Dによる評価はこれから有用である。

 

教育講演1「小児の周術期輸液管理」:糖をどのくらい含んだ輸液を選択するか?

*低Naは脳浮腫、脳症、高血糖は浸透圧利尿(電解質が狂う)、脳虚血助長の可能性がある。

*未熟児・新生児はモニターを見ながら血糖を調節。3歳以下は1-2%glucoseを含んだ輸液を使用。

 

ランチョンセミナー1「発達期の脳とセボフルラン」:この話題は数年前から出てきており、小児麻酔科医にとって本当にセンセーショナ   ルな話題。

*NMDA+GABAの組み合わせでアポトーシスが起こりやすい。

*吸入麻酔によるアポトーシスのレスキューとして、デクス、キセノン、リチウムなど有効という報告がある。

*動物実験によるアポトーシス発症頻度は、デスフルラン>イソフルラン>セボフルラン。しかし長期的な影響では、3種薬剤差はないらしい。

*これまで出ているデータは動物実験によるものがほとんどで、寿命(マウス2年、人間80年)に対する吸入麻酔薬暴露時間の違いや使用濃度が臨床濃度より多いことなどから、実際の臨床にどこまであてはまるかわからない点もある。

 

Pro&Con「吸入麻酔vs.TIVA」:小児の世界でもTIVAが注目されてくるのでしょうか?

*日本で販売されていないようですが、人工呼吸中の回路途中に組み込むことができるセボの簡易気化器が興味深かった。

*セボによる術後興奮の予防としてプロポフォール1mg/kgを静注する場合もある。

 

1日目の勉強はこのくらいで。

 

今回の座長は1日目「気道管理2」のセッションを担当させていただきました。演題は5題で、気管チューブについてが2題、気管切開患者管理が1題、副咽頭間隙腫瘍の気道管理が1題、小児用単回使用喉頭鏡が1題。小児麻酔学会ではほとんど顔見知りなので、ポスターセッションでの質疑応答は遠慮がなく、個人的にはとてもおもしろく大好きな場です。小児専門施設ではないけれど、以前小児病院で出会った先生方がそれぞれの場所で頑張っておられる姿も見られます。

 

バイオリンコンサート後、会員懇親会が同センター内で行われました。その後、各時夜の大阪の街に繰り出しました。

私は地元A病院F元先生、K川こども医療センターK先生、H木先生、H道小児医療センターK名先生、K本市民病院M瀬先生他数名の先生と、千里中央駅近くの地元民お勧めの居酒屋に行きました。K本市民のM瀬先生は田上先生のK大時代の同級生で、個人的には以前サンフランシスコの学会で初めてお話しさせていただき、以来小児麻酔学会では毎年近況を報告させていただいています。ビールで乾杯した後は焼酎をひたすら飲みました。ノルマは終わったので、心おきなく飲むことができました。

 

大会第二日目。

ワークショップ2「エコーガイド下の小児の末梢神経ブロック」

4つのグループに分かれて、基本操作、腸骨そけい・腸骨下腹神経ブロック+腹直筋鞘ブロック、大腿神経ブロック+坐骨神経ブロック、

腕神経ブロックの4つのブースをまわり、実技を学びました。ちなみにスタッフのお子さん達が被検者でした。エコーガイドでの末梢神経ブロックは時々自分でも行いますが、やはり経験の多い先生方から教えていただく「ツボとコツ」には目から鱗でした。ちょっと操作を変えうるだけで、今まで出しづらかった画像を出すことができるようになりました。早速日常の臨床に生かしてみたいと思います。

エコーガイド下末梢神経ブロックの4つの肝

①準備を十分に行う、体位をきちんと整える②神経以外の周囲組織を描出させる③刺入経路をイメージする④針先が画面上確認できないときはそれ以上針を進めない

 

Robin Cox先生の特別講演「Myths in Pediatric Anesthesia」を最後まで聞いていると帰りの新幹線に間に合わなかったため、後ろ髪を引かれる思いで中座。申し訳ありませんでした。

 

以上、若干消化不良の部分もありましたが、久しぶりに有意義な学会ライフを送ることができました。

日本小児麻酔学会、来年は栃木・自治医大、再来年は北海道です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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