東京医科大学

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学会・研究会の報告

ESA報告 局所麻酔の教育

投稿者:内野

カテゴリ : 学会

ESA report2です。

今回は、「Education concepts in regional anaesthesia」です。

麻酔科医として必要な手技の上達をいかにして習得していくべきか?

いかなるコンセプトが必要なのかを述べていました。

推奨されている必要症例数として、気管挿管は57例、脊髄くも膜下麻酔は72例、硬膜外麻酔は90例、腕神経叢ブロックは62例、動脈ラインの確保は60例とされています(Konrad等)。

超音波ガイド下の腕神経叢ブロックは、40回の施行で分析を行った結果、最初の10症例までは、神経刺激装置(NS群)で施行した場合も超音波ガイド下(US群)で施行した場合もlearning curveは高くなっていきますが、14例位を境にUS群の方が高い成功率でプラトーを迎えるためUSにての手技の習得が望ましいとLuyet等は報告しています。

超音波ガイド下の神経ブロックに必要な教育については明確なデータがありません。

超音波ガイド下の神経ブロックに必要な6つのステップを挙げています。

①解剖学的位置関係の熟知

②超音波装置の基礎的知識の習得

③ハンズオンワークショップに参加して知識を深める

④Phantomによるワークショップに参加

⑤御遺体によるワークショップに参加

⑥インストラクターと一緒に超音波ガイド下の神経ブロックを行う

 ASAでは、大学院生としては、習得に必要なpractice pathwayとして①ASAのCME(Continuous Medical Education)主催のイベントに参加したり、②他の学会やイベント等で教育を受けること③超音波装置による描出の技術を身につけること④ファントム(模型)によるワークショップへの参加⑤インストラクターに教えてもらう⑥毎日超音波を使うことを挙げています。

また、研修医として必要な修練(residency-based pathway)は、①患者の扱い②超音波の知識③人間関係の構築④プロ意識を持つ⑤システムに合った修練(system-based practice)を行う⑥parctice-based learningとそれに基づく改善を行う。

超音波ガイド下ブロックのガイドラインの作成とCMEのpractice pathwayの定義を行い、敵的なreviewを行うことを提案しています。

さらに、熟練された能力と技術を獲得するために、A超音波装置による画像の描出と各deviceの状態をチェックすることが大切で以下の6点を挙げています。①超音波装置使用下でのイメージング②正しいぷろーべの選択③深さや焦点のセット④gainの調節⑤カラードップラーの使用⑥イメージのを行うこと記録

画像の最適化を行う。以下の点に注意①transducerにかかる圧力②transducerのalignment③transducerの回転④transducerの揺れ

画像の理解を行う。以下の点に注意

①神経の同定②筋肉と筋膜の同定③血管(動脈と静脈)の区別④骨と胸膜の同定⑤acoustic artifactsの同定⑥解剖学的なartifacts⑦針の軌道と血管の関係

針の挿入と薬液の注入 以下の点に注意

①平行法による針の最大限の描出②交差法による針の最大限の描出③両法の利点と欠点の理解④筋肉内での針の位置の理解⑤局所麻酔薬が正確にあるいは不正確に拡がっているかの確認⑥人間工学に沿ったブロックの実施⑦transducerは最小限しか動かさない⑧神経の近くに針が位置していることを確認

超音波ガイド下神経ブロックを行うための10原則 

①針、血管、筋膜、骨などのカギとなる目印を可視化する

②短軸像での神経、神経叢の同定

③正常の解剖と個人個人の違いを認識する

④不必要な組織外傷を避けて針を刺入する(腕神経叢ブロック時の横隔神経ブロックなど)

⑤標的に向かうようにリアルタイムに可視化して針を進める

⑥超音波ブロックを無菌捜査で行う

⑦神経刺激による同定(secondary confirmation):神経刺激で筋収縮がえら得なくても針が神経の近くにある場合(全体の14%に起こる)と筋収縮が得られて薬液を注入しても効果がなく手術終了後に効果を認める場合:神経の周囲に結合組織の被膜があって局所麻酔薬が神経に広がらないのが原因

⑧目標の位置に針が来たら少量の局所麻酔薬を注入する。薬液が可視化されないときは血管内か標的から大きくそれた場所に針がある

⑨望ましくない局所麻酔薬の拡がりが得られるときは、針の位置の調整を行う。局所麻酔薬の可視化は血管内への注入を防ぐうえでも必須。

⑩古典的な安全指針に則って施行する。蘇生の器具、吸引、血管内のテストドースの準備、標準的んあモニタリング、患者の反応、注入する物質の性質を理解する

以上の点をASRAおよびESRAの標準的な方法に則って行うことが重要であると述べていました。

Zetlaouらは、超音波ガイド下に腋窩神経ブロックをおこなっても血管内への注入は避けられないと報告しています。今後、さらに検討が必要かもしれません。

局所麻酔薬中毒に陥った場合、イントラリピッドを投与するLipid Rescueによる治療法が少しずつ広まってきています。

超音波ガイド下神経ブロック法を用いても合併症を100%減らせるということではないのですが 超音波ガイド下の神経ブロックを安全に施行するためには、正しい知識の習得が必要であることを本セミナーでは強調していました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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