(抄)SCORE project 米 産科麻酔 データベース
2014.10.20
報告者:柿沼
Serious Complications Related to Obstetric Anesthesia
The Serious Complication Repository Project of the Society for
Obstetric Anesthesia and Perinatology
Robert D'Angelo, M.D.et al
Anesthesiology 2014; 120:1505-12"SCORE project"2004〜2009 5年間の後ろ向き多施設調査研究です。
307495分娩のうち256795分娩に麻酔が関与、全体の157に合併症(1:1959)
◉経腟分娩 211368
区域麻酔160668/硬膜外100828/CSEA 59027/SAB 359/持続脊髄くも膜下麻酔454
◉帝王切開 96127 (全体の31.3%)
区域麻酔 90795/脊髄くも膜下麻酔 34323/硬膜外麻酔 30632/CSEA 25607/持続脊髄くも膜下麻酔 233/全身麻酔 5332(5.6%)帝王切開における区域麻酔の失敗 1522 (1.7%)
◉PDPH
全ての区域麻酔 237437
認識されているくも膜穿刺 115070
PDPH 1647 区域麻酔の0.7%
Blood patch 917 PDPHの55.7%
繰り返したblood patch 98 blood patch の10.7%
◉重症合併症
周産期死亡 30/心停止 43/重度神経障害 27/高位麻酔 58/呼吸停止 25
偶発的くも膜下カテーテル迷入 14
◉母体死亡原因
出血、心疾患,羊水塞栓,肺塞栓、高血圧,アナフィラキシー,感染/敗血症
などと報告されています。
◉高位麻酔リスク
肥満,硬膜外麻酔の失敗など
ディスカッションでは、
• 高位麻酔の合併症は気管挿管を必要とし,非常用の気道確保の準備は十分にするべきである。
• 過去の報告では、硬膜外膿瘍の発生頻度は,1:1,930~1:205,000であるが、SCORE Projectの硬膜外膿瘍の発生率は,1:62,866。
• 局所麻酔薬の血管内注射と胃内容物の誤嚥については報告がなかった。 以前に言われる程発生頻度は低い可能性がある。
• 気管挿管失敗は高率であったが低酸素血症による重症合併症はなかった。それは,DAMの普及が考えられる。気道確保困難に関する器材を産科手術室では準備すべきである。
• 160000以上の産科麻酔の研究での13の高位麻酔があった。硬膜外カテーテルのテストのルーチン化は重要である。しかし,テスト注入施行ケースにおいて母体死亡例があるので確実に保証するものではない。硬膜外カテーテルの管理については用心深く行う必要がある。
• 2004から2009の帝王切開の発生率は、アメリカ合衆国で31.3%であったが,SCORE Projectでの帝王切開は 31.2%とほぼ同値であったことから,ある程度米国を代表するデータと言える。
• 敗血症が最新の三年間の母体死亡の主要な原因の一つであると分かった。妊婦の重症合併症では敗血症を考慮する必要がある。
• 適切に大量輸血に関してプロトコールを実行するべきである。
• SCORE Projectが300,000以上の出産の情報を捕えたが、同時期の米国の出産の2000万以上のわずか1.5%である。
• 2000万の出生にSCORE Project調査結果を適応すると、640例が挿管、260例の硬膜外膿瘍、65例の硬膜外血腫、3790例の高位麻酔、680例の脊髄カテーテル迷入が米国で5年間に発生したこととなる。
◉ 特筆はやはり、帝王切開における全身麻酔の頻度 5.6%
当然、挿管失敗や誤嚥の症例数も抑制される。低酸素の重症合併症が非常に少ないのはDAM、NEWデバイスの普及と考えられます。
◉ 偶発的くも膜穿刺のPDPHについては、ブラッドパッチをかなり積極的にやっている印象です。当院は1週間は様子を見ていますが検討が必要かも知れません。
ちなみに、東京医科大学病院出産数は、約250例/年です。
産婦人科の産科部門に新しい教授が就任し、将来的に麻酔科が無痛分娩に関わる事も視野に入れた議論が始まりました。
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