東京医科大学

麻酔科学分野 麻酔を受けられる患者さまへ

Staff Room

医局カンファランス

(抄)冠動脈ステントと非心臓手術

報告者:金澤

カテゴリ : 本院 抄読会

Risk of Major Adverse Cardiac Events Following Noncardiac Surgery in Patients With Coronary Stents
JAMA, 2013; 310(14): 1462-72

 冠動脈形成術(PCI)は, 1977年のバルーン拡張術に始まり, 1990年代のベアメタルステント(BMS), 2004年から使用されるようになった薬剤溶出性ステント(DES)と, 時代を追うごとに進化しています.
また, 近年の高齢化社会, 医療技術の進歩によって, 周術期の合併症は増加傾向にあり, 冠動脈ステントが挿入されている患者の5人に1人が何らかの非心臓手術を受けている, とも言われています.
 DESの登場とその早期合併症であるステント内血栓の発生によって, 2007年にACC/AHAから"非心臓手術患者の心血管系評価とケアのガイドライン"が発表されました. この中では, ステント挿入後の非心臓手術は, BMSで4-6週, DESで12ヶ月以上経過してから行うように推奨されています. しかし, 近年,  否定的な意見が散見されるようになりました.

  今回紹介した文献は, ステント挿入後2年以内に行われた非心臓手術において, 術後30日における心イベント(MACE)の発生を調査したものです.  これによると, 手術の緊急度, 術前の心疾患や合併症の程度(RCRIスコア)がMACEの発生に関与していました. ステントの種類(BMS, DES)とは相関がみられず, また, ステント挿入から6ヶ月以降では, どの時期に手術を行っても, MACE発生には関与していませんでした. また, 周術期の抗血小板療法の継続によってMACE発生率を低下させる事はできなかった, とも記載されています.

 ステント挿入患者の非心臓手術では, 挿入されているステントの種類や時期, 周術期の血小板療法の確認はもちろんですが, 手術自体のリスクと患者自身のリスクをきちんと評価して, 個々の症例に対して柔軟に対応していくことがより重要だと思います.
ガイドライン以後, 今回の文献のような報告が相次いでいるため, 今後の動向に注目していきましょう.

一覧へ戻る