東京医科大学

麻酔科学分野 麻酔を受けられる患者さまへ

Staff Room

医局カンファランス

(抄)Effect of Eritoran, an antagonist of MD2-TLR4 on Mortality in Patients with severe sepis

報告者:宮田

カテゴリ : 本院

緒言

エリトランは、リポ多糖(LPS)が細胞表面のMD2-TLR4受容体に結合するのを阻害する合成リピドA拮抗薬である。LPSはグラム陰性菌外膜の主要構成成分であり、急性炎症反応の強力な活性化因子である。

目的:TLR4拮抗剤エリトランが、敗血症による死亡率を有意に低下させうるか否かを検証する。

研究デザイン

世界各国の197ICUにおいて、無作為化2重盲検プラセボ対象比較試験を実施した。患者は20066月から20109月の間にICU入室し、20119月に最終フォローアップを終了した。

治療:重症敗血症患者(n=1961)は、最初の臓器不全発症から12時間以内に、計105㎎のエリトラン3ナトリウムを6日間にわたって投与されるエリトラン治療群(

n=1304)と、プラセボ群(n=657)に2:1の比率で無作為振り分けされた。

Primary endpoint28日後の死亡率

Secondary endpoint: 治療開始後3612か月後の死亡率

結果:

両群の患者背景因子に差は見られなかった。修正Intent-to-treat解析(少な

くとも1回のエリトラン投与を受けた患者を解析)の結果、primary endpointであ

28日死亡率は、エリトラン群で28.1%366/1304)、プラセボ群で26.9%

177/657 (P = .59; ハザード比, 1.05; 95% CI, 0.88-1.26; 死亡率の差, -1.1;

95% CI, -5.3 to 3.1)sedondary endpointである1年後死亡率は、エリトラン

群で44.1%290/657)、プラセボ群で43.3%565/1304)であり、いずれも有意差はなかった。1年後までのKaplanMeier解析による死亡までの時間の比較でもP=0.79(ハザード比、0.98;0.85-1.13)と有意差はなかった。サブグループによる解析でも、いずれのグループにおいても有意な差は見られなかった。2次感

染の比率を含めた有害事象の発生頻度は両群間で差はなかった。

結論

重症敗血症患者において、エリトランの投与はプラセボと比べて、28日後死亡率を低下させなかった。

 JAMA 2013 309(11) 1154-1162


ということでエリトランお前もか!! がっくし という感じです。

敗血症の動物モデルでは、歴史的にも様々な薬剤が効果があることが報告されています。(anti TNFa、anti IL-6など)

TLRは感染が起こると最初にシグナルが入る受容体ですので、ここを押さえるとある呈度のケモカインなどは押さえられると思っていましたが、やっぱり残念な結果でした。サブグループ解析も結果は振るわずこの薬は世の中にでることはないのでしょう

敗血症やARDSで予後に差が出る薬物は今後開発される可能性はあるのでしょうか?


 

一覧へ戻る