東京医科大学

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医局カンファランス

早期再分極症候群の長期予後

報告者:岩瀨

カテゴリ : 本院 抄読会

以前の抄読会で岩瀨先生がしてくれた、
「早期再分極が見られる中年層の人は、心疾患や不整脈による死亡リスクが高い。」(NEJM 2009;361:2529-37)
が、明日、私が担当する症例でとても参考になりました。
術前の心電図で、V2,3,4でST上昇、Ⅱ,Ⅲ aVfでスラー型のJ波(約0.2mV)が認められました。失神歴や家族歴はありません。入院後の1回の心電図しかなかったので、手術室入室後に12誘導をとってみようと思います。もしも、心電図所見に変動が認められたら・・・・、とりあえずDCだけ運び込んでおいて、(術中に貼ることは可能なオペなので)パッドは貼らずに経過観察するつもりです。

J点の0.1mV程度の上昇は健常者の約2%に認められ、以前は非特異的ST-T changeとして、気にしなくても良い心電図所見として教わりましたが、実は、中には致死的不整脈のハイリスクとして捉えた方がよい症例があるというのが、最近のトピックスになっています。
それでは、どの様な人がハイリスクなのかというと、コレがよく判っておらず、今のところ挙げられているのは、心電図上、①下壁誘導で0.2mV以上のJ点上昇、②J点上昇のみならずJ波(ノッチ、スラーの2種類)、③中年、④J波の日内変動が大きい、⑤過去の心電図では指摘なし、などがあると要注意で、問診で①失神歴、②家族の突然死、などもチェックすべきと言われています。
ブルガダ症候群と病態がオーバーラップすることも多く、早期再分極症候群をブルガダ症候群と同様に扱うとする意見もあるようですが、そのブルガダ症候群も本当に危ないのは一部であることが判ってきており、早期再分極症候群を麻酔中に何処までケアすれば良いのかも、今後の検討が待たれます。

岩瀨先生の資料もよくまとまっていますが、日経メディカル2010.3.19(日経BP社)にも出ていますので参考まで。(石崎)

資料はスタッフページからDLできます。

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