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医局カンファランス

SVVと片肺換気

報告者:金子

カテゴリ : 本院 抄読会

金子先生の抄読会は「片肺換気におけるSVV測定の検証」で、ケースレポートを1つ、スタディリポートを2つ、ミニレビュー形式で紹介していただきました。

金子先生からのTake Home Messagesは、以下の通り。
・SVV はOLV 中でも輸液反応性の指標になる。ただし、TV ≧8ml/kg 必要。
・カットオフ値は10%。

ここで、輸液管理や循環管理において何をGoalにするか、という事を考えてみましょう。最終的に大切なのは酸素運搬量DO2であり、それはつまり心拍出量COであり一回拍出量SVです。SVの維持こそが目的であって、SVVはその目的を達するまでの方法の適否を示唆しているだけと言えます。
また、呼吸条件の違いがSVVに及ぼす影響を検討した報告はたくさんありますが、当然のことながら、SVVは呼吸に伴う dynamic change を見ているわけですから、呼吸設定の影響を強く受けます。しかし、それらの文献を見ても、SVIに対しては呼吸条件はあまり影響を及ぼさないことが多く、今回紹介してくれた報告でもその傾向があります。それは何故かというと、吸気の影響が呼気時に解消されて、一回のタイムサイクルで平均するとSVIは押し並べて一定となるからです。ちなみにver 1.07以降のSVIは1分間の平均値を算出しています。

こうして考えてみると、次のような事がわかってきます。
①一般的な換気設定の場合
 SVIは前負荷だけでなく後負荷と収縮力の影響を受けるので、SVI=前負荷とはならない。
 SVVは、呼吸によって左室前負荷をdynamicに変えた結果であり、輸液反応性の指標となる。
②異なる(特殊な)換気設定の場合
 呼吸が異なるのだからSVV(特に絶対値)はあてにならない。
 呼吸はSVIへの影響は少ない。後負荷と収縮力が一定なら、SVIの変動は前負荷の指標となる。

私のTake Home Messageを言わせてもらうと、
・片肺換気ではSVVのカットオフ値を気にするよりも、「SVIが下がったら輸液」と考えるべし。

個人的にとても興味ある分野の抄読会でした。金子先生、有り難うございます。(石崎

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