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虚血性心疾患における硬膜外麻酔

報告者:柿沼

カテゴリ : 本院 抄読会

柿沼先生の今日の抄読会はReview形式で、虚血性心疾患における胸部硬膜外麻酔の有用性に関する8つの文献を紹介してくれました。

胸部硬膜外麻酔により死亡率低下、術後肺炎減少、心筋梗塞減少、ASOグラフト開存率上昇、狭心症状の軽減などを認めたとする文献が集められました。一方で、これらの疾患でしばしば併用される抗凝固薬による硬膜外血腫の危険性にも触れてもらいました。
ERAS protocolの概念の普及によって、それまでの硬膜外麻酔からIVPCAに向かう流れが少し引き戻された感がありますが、私たちがあまり認識していないところにも、硬膜外麻酔がもたらす恩恵がありそうだということを、今回のReviewが示してくれました。Risk and Benefitを天秤にかけながら、結局、最後はどこに落ち着くのでしょうか。

ある治療の有用性を問うようなReviewを行う場合、EBMの盲点とも言うべき注意が一つあります。意地悪な見方ですが、残念ながら有意差を認めなかった研究は、論文投稿されないまま終わることがあり、単純に文献数だけでPro Conを戦うと、ネガティブデータは圧倒的に不利になります。
毎日の抄読会で、エビデンスレベルの高い研究かどうかを一つ一つ見抜く力を養っていきましょう。(石崎)

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