肝臓・門脈圧亢進症

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グループメンバー

肝がんの画像診断

肝がん診療において,「早期発見・早期治療」はとても重要です。肝がんの画像診断法として,(造影)超音波,CT,MRI,血管造影などがありますが,当科ではそれぞれの検査の長所,短所を考慮し,患者毎に最適となるような検査を計画しています。特に,当科ではマイクロバブルでできた造影剤を超音波検査の際に積極的に使用し,肝がんの早期検出・(悪性度)診断に努めています(図1)。しかも,この超音波造影剤(ソナゾイド)はCTやMRIの造影剤と比べ副作用は少なく,安全に使用することができます。

図1
図1.ソナゾイドを使用することで,微小ながんでも明瞭に描出されています(矢印が腫瘍です)。
A:通常の超音波,B:ソナゾイドを使用した造影超音波

肝がんの治療

1. 悪性肝腫瘍に対する窄刺局所治療
当科では2000年よりラジオ波焼灼療法(RFA)を導入し、2018年よりマイクロ波焼灼療法(MWA)を導入しています。超音波下で主に体外からアプローチします。したがって、超音波で腫瘍を描出できないと治療が困難となります。そのような場合当科では、超音波造影剤を使用したり、超音波装置上にCTやMRIなどの画像を超音波画像とリアルタイムに同期して表示するシステムであるフュージョン画像超音波システムを積極的に用いて、より確実で安全な治療を行なっています。(図2)

図2A

図2B

図2C
図2.A:当科におけるRFAの治療の様子。B, C:通常の超音波で描出困難な微小な病変でも造影超音波やMRIとのfusion imagingを用いることで描出し,RFA治療が可能です。

2. 肝がんに対する肝動脈化学塞栓療法(TACE)治療
TACEは肝がん治療の中で最も広く用いられている治療法です。(図3) しかし、窄刺局所治療と比べ局所の根治性が弱いため、当科では積極的に窄刺局所治療とTACEを組み合わせて治療を行なっています。

図3
図3.当科におけるTACEの治療の様子。

3. 肝がんに対する分子標的治療
当科では比較的進行した肝がんに対し分子標的治療薬(ネクサバール、スチバーガ、レンビマ)を積極的に使用しています。また、分子標的治療は副作用のマネージメントが最も重要ですが、当科では十分な経験のあるスタッフが治療に当たります。

ウイルス肝炎の治療

C型慢性肝炎、B型慢性肝炎の治療を中心におこなっています。C型慢性肝炎に対する治療の目標はウイルスの陰性化(治癒)であり、これが達成されると、肝発がん抑制と生命予後の改善をもたらすことができます。現在では経口の抗ウイルス剤(DAA)により、90%~95%の割合でウイルスの陰性化が得られています。また、B型慢性肝炎の治療はインターフェロン、経口核酸アナログ製剤を用いておこなっています。

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の診断・治療

近年ではC型肝炎やB型肝炎からの肝がんの割合はやや減少し,そのかわりウイルスマーカーが陰性の患者に肝がんの割合が増えている傾向があります。このような方々には肥満・高血圧・糖尿病などの生活習慣病がベースにあり,NASHが肝がんの発生に寄与していることが最近の研究で分かってきています。そこで当科では,当院の糖尿病内科と共同でNASHの診断と治療を行っています。また,NASHの非侵襲的な画像診断の開発にも力を入れています(通常NASHの診断には肝生検が必要です)。

門脈圧亢進症に対する治療

肝硬変症に伴う門脈圧亢進症に対しての治療も当科において積極的に取り組んでいます。

1. 内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS),内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)
EISは食道静脈瘤に対し内視鏡的に硬化剤(オルダミン)を注入し,静脈瘤を消失させる治療法です。一方,EVLはO-リングを用いて食道静脈瘤を機械的に結紮することにより,静脈瘤を消失させる治療法です。

2. バールーン閉塞化逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)
上記の内視鏡的な処置では治療効果の乏しい胃静脈瘤に対し,カテーテルを用いて硬化剤を注入して行う治療法です。

3. 部分的脾動脈塞栓術(PSE)
門脈圧亢進症に伴い脾機能亢進(脾臓の腫大)をきたすため血小板減少症をはじめとする汎血球減少が肝がんの治療や肝炎の治療において大きな問題となります。PSEとは経カテーテル的に脾臓の動脈を選択的に塞栓し,脾臓の体積を意図的に6から7割程度壊死させ減らしてしまう治療法です。そうすることで血小板数が増加し肝がんや肝炎の治療を行える可能性があります。

お問い合わせ 医療関係の方

東京医科大学 消化器内科
電話 : 03-3342-6111(代表) 内線 5913