心不全グループ

グループの概要

今や世界中で心不全患者は増加の一途をたどっています。特に本邦では高齢化が急速に進行しているため高齢者の心不全患者が急増しており,いわゆる"心不全パンデミック"を呈しています(図1)。また、多くの高齢者心不全は心臓以外にも多数の併存疾患を有していることが多く、その管理は一筋縄にはいかず入退院を繰り返してしまうことも多くなっています(図2)。

当教室の心不全グループはそのような高齢者心不全や治療抵抗性重症心不全に対して、再入院回避を含めたトータルマネージメントを行う専門家チームとして、2015年から編成された比較的若い研究グループです。

都心部大学病院という特徴柄,高齢者心不全患者の多くは独居者が多く心不全治療に加えて退院後の介護・福祉を含めた在宅環境整備が重要です。当院では医師,看護師をはじめとした多職種チームによるカンファレンスを定期的に開催し,心不全患者さん一人一人に合った医療を提供できるよう日々努力をしています。当グループはその多職種チームの中心的存在として活動しています。また、専門外来も行っております。

当院は高齢患者さんのみではなく若年の重症心不全患者さんも多く入院してきます。その中には薬物治療,デバイス治療を含めた最適な医療にも関わらず心不全コントロールがうまくいかないため人工心臓/心臓移植の適応になる方もいます。そのような患者さんには適切なタイミングで治療が受けられるよう近隣の認定施設と密に連携をとっています。

図1 心不全パンデミック時代の到来
図2 心不全の重症度ステージ

スタッフ

岩崎 陽一(助教、日本内科学会認定医、日本循環器学会専門医、植込み型除細動器[ICD]/ペーシングによる心不全治療[CRT]研修修了医)
渡邉 雅貴(兼任講師、医学博士、日本内科学会認定医、日本循環器学会専門医、みやびハート&ケアクリニック院長 https://miyabi-heart.jp/
小林 正武 (フランスナンシーのローレンヌ大学 臨床研究センターに留学中)

診療内容

当院の心不全症例は若年者から超高齢者まで様々です。心不全グループでは、すべての心不全患者が退院後も心不全再増悪することなく日常生活を過ごせるよう患者個々にあった医療を提供できるよう心がけています。

心不全の原因は虚血、不整脈、弁膜症、心筋症など様々です。我々のグループはカテーテルインターベンション、不整脈、画像診断などの各研究グループと協力しながら心不全の診断・治療に取り組んでいます。当科は各研究グループとの垣根が低くいつでも相談できる環境にあることが強みです。

当院は非心臓移植施設ですが、原因不明の心機能低下に対しては積極的に心筋生検を実施しています。その結果診断に至るケースも少なくありません。(図3~5)

また、当院は都心部にある大学病院ですが、やはり高齢者の心不全患者さんは増加しています。当グループのデータでは、CCUに入室する心不全患者さんの約半数は75歳以上です。高齢者の場合、心不全以外にもフレイル、低栄養、多くの併存疾患を有しており、また老々介護、独居など社会背景にも心不全再増悪をきたす要因が有ります。これらを解決するためには多職種による介入が必要です。当院には慢性心不全看護認定看護師が所属しており、医師、看護師、理学療法士、薬剤師、栄養士、MSWが常に個々の患者の情報を把握するよう心がけています。さらに各職種が把握しているだけではなく、週1回心不全カンファレンスを開催することにより情報を共有する機会を設けています。多職種での勉強会も定期的に行っており、心不全に対する知識を深めています。

研究活動

研究面では当グループ独自のデータベースをもとにした自主研究を行っております。また他の研究班と共同研究も進めております。

研究実績(論文)

【2018年】

1. Masatake Kobayashi, Patrick Rossignol, João Pedro Ferreira, Irene Aragão, Yuki Paku, Yoichi Iwasaki, Masataka Watanabe, Marat Fudim, Kevin Duarte, Faiez Zannad, Nicolas Girerd Prognostic value of estimated plasma volume in acute heart failure in three cohort studies Clin Res Cardiol. 2018 Oct 19. doi: 10.1007/s00392-018-1385-1
2. Yoichi Iwasaki, Hirofumi Tomiyama , Kazuki Shiina, Chisa Matsumoto, Kazutaka Kimura, Masatsune Fujii, Yoshifumi Takata, Akira Yamashina, Taishiro Chikamori Liver stiffness and arterial stiffness/abnormal central hemodynamics in the early stage of heart failure Int J Cardiol Heart Vasc. 2018 Jul 23;20:32-37. doi: 10.1016/j.ijcha.2018.07.001

【2016年】

1. Masatake Kobayashi, Kazutaka Oshima, Yoichi Iwasaki, Yuto Kumai, Alberto Avolio, Akira Yamashina, Kenji Takazawa Older age is associated with greater central aortic blood pressure following the exercise stress test in subjects with similar brachial systolic blood pressure Heart Vessels (2016) 31:1354-1360 DOI 10.1007/s00380-015-0733-6

当グループでの研修

心不全治療は心臓カテーテル治療、カテーテルアブレーション、デバイス治療などと比べると地味な存在かもしれません。しかし、当教室では心不全グループ自ら心臓カテーテル検査,右心カテーテル検査,心筋生検などを積極的に行っており、基本的手技もたくさん経験できます。
当院は心不全のトータルマネージメントを勉強するには十分な症例数と環境が整っています。心不全グループは若手医師が活躍できるチャンスが多いグループです。われわれと一緒に活動していただける仲間を募集しています。興味のある先生はぜひ見学に来てください。

【連絡先】 岩崎 陽一(いわさき よういち) E-mail: iwasunone517@gmail.com

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