診療科の方針

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Total Nephrology

 腎臓病学はNephrologyの訳語ですが、じつはこのNephrologyという言葉は日本人の作った言葉です。腎臓病の特徴としては「経過が長い」ことが挙げられます。健康診断などで蛋白尿・血尿を指摘されてから腎機能が低下して生活に支障が出るまでには、30年以上かかります(一部の疾患を除く)。たとえば25歳のときに健康診断で異常を指摘された場合には50歳を過ぎるまでずっと経過観察が必要になります。このあいだ高血圧や脂質異常などさまざまな合併症をきたすこともありますし、これだけ長い間には腎臓とまったく関係ない疾患を合併することも多くなります。その場合に複数の診療科の医師が関与することになりますが、患者さんがもっとも相談しやすいのは長い間診ている腎臓内科の医師であることが多いようです。まさに内科医として身体全体のコーディネートをすることになり、必須である慢性疾患の管理に加え、救命救急の陣頭に立つこともあります。透析に用いるアクセスの管理として小手術や血管インターベンションも行います。このように一人の患者さんを長い間、身体全体に眼を配るのが腎臓内科の診療の特徴なので、これをTotal Nephrologyという概念として提唱しています。受診された患者さんに「腎機能は大丈夫ですから、後は主治医の先生にお任せします」といっておしまいにしてしまうのではなく、おせっかいかもしれませんが、患者さんの身体全体についていろいろな心配をして、少しでも快適に暮らしてもらえるような診療を心がけています。

安心感

 生活習慣病としての腎臓病を長い間診るためにはたくさんの方の協力が欠かせません。看護師、管理栄養士、臨床検査技師、臨床工学技士、ソーシャルワーカーといったさまざまな職種のかたがそれぞれの専門性を活かして診療に参加してくれます。さまざまな合併症が起きたときには、他の診療科の医師に専門的な意見を求めることになります。また慢性腎臓病の管理法として「二人主治医」という言葉があるように、地域の一般医家の先生方とは腎臓病の発見や長期管理を通して密接に連携をする必要があります。さらに地域医療を支えるケアマネージャーや訪問看護のスタッフ、自治体のスタッフにも参画してもらいます。患者さんやその御家族を含めてこれだけ多くの人に関与してもらい、その中で長期間の疾病管理の中心となるにはそうした方々と強い信頼関係が必要です。私はこの信頼関係を築くための大切なキーワードとして「安心感」 を提唱します。健康診断で異常を指摘されて不安を抱えて受診する患者さんやご家族には、診察室を出るときには安心して帰ってもらいたいと思っています。Total Nephrologyを実践する意味で「東京医大の腎臓内科にかかっているから安心だ」と思ってもらえるのが理想です。そして地域医療を支える先生方やスタッフの方には「東京医大の腎臓内科に診てもらっているから、この人に関しては安心だ」、「わからなければ東京医大の腎臓内科に相談できるから、腎臓については安心だ」と思っていただけるような信頼関係を築きたいと思っています。

患者さんのご紹介について

 地域の先生方と交流する際に良く伺うのは「こんな軽症の症例を大学病院に紹介していいのだろうか、怒られないだろうか」という心配です。東京医科大学の腎臓内科にはそういう心配はご無用です。慢性腎臓病の管理には日本腎臓学会のCKD診療ガイド2012が基本になりますが、ここにも専門医への紹介基準、かかりつけ医の役割が記載されています。しかしこれに従った紹介をするのは非常に煩雑で、まずは18段階もあるCKDのステージングをして、さらに年齢や他のリスクを考慮しなくてはいけません。この作業をすることでCKDの管理の大原則である早期発見に遅れを生じるようでは何もなりません。

 ●健康診断で蛋白尿・血尿を指摘された。
 ●健康診断で高血圧を指摘された。
 ●健康診断でeGFRの低下を指摘された。
 ●定期の採血をしてみたら血清クレアチニン値が正常より少し高かった。

 こうした患者さんがいらっしゃいましたら迷わず一度、東京医科大学の腎臓内科にご紹介をください。面倒なCKDのステージングを行い、先生方が通常の診療をされる際に腎臓について配慮いただくそれぞれの患者さんに合わせたポイントを形にまとめてお返事いたします。
 表は実際の受診例です。数名に一人はやはり本物の重篤な腎疾患患者がいらっしゃいますので、これは大学病院で診療を続けますが、多くの方は3-4回の受診でいったん終診として先生方の御施設に戻しています。一度きちんと腎機能の評価を行うことで、高齢者への薬剤投与量の調整なども迷わずに行うことができると思いますし、実際に患者さんからも安心できたという声をいただいておりますので、軽症症例も大歓迎しています。