膵臓がんに対する取り組み|トピックス

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東京医科大学病院での膵臓がんに対する取り組み

 膵がんは治療困難ながんのひとつですが、当院では最高の治療を提供すべく、最新の治療機器を取り入れ、世界トップクラスの消化器内科医による正確な診断と経験豊富で高度な技術をもったエキスパート外科医により、年間120例以上の膵切除術を行っております。消化器外科、消化器内科、放射線科と密接な連携のもと根治性の高い積極的な手術、化学療法(抗がん剤)、放射線療法や免疫療法を組み合わせた様々な集学的治療により、近年の治療成績は大きく向上いたしております。また進行の早い膵がんに対し迅速に対応し、それぞれの患者さんにとって、最も効果的な治療を行うことができるように、専門チームによるカンファランスを週3回行っています。更なる治療成績向上させるための努力を怠らず、国内外の学会に積極的に参加、発表しているほか、新たな治療開発のため、様々な臨床試験を行っております。
 我々は決してあきらめない、最善を尽くす治療をモットーに、積極的な膵がん治療に取り組んでおります。

膵臓がんの手術

高い根治切除率と術後補助化学療法に影響を与えない術後QOLを配慮した膵頭十二指腸切除術

 膵癌の生存率向上にはがんを取り残すことなく切除する根治手術を行うことと術後早期に術後補助化学療法を導入することが極めて重要です。このため、高い根治性を得るための的確なリンパ節・神経叢の郭清ならびに術後化学療法導入に影響を与えない術後QOLを配慮した繊細な手術が必要になります。当科では、以上の条件を満たすべく、癌の進行度に合わせ、高度かつ繊細な根治手術(上腸間膜動脈右斜後方郭清術:Right-oblique posterior dissection of the SMA;ROPS手術、及び、選択的膵外神経叢郭清術:Selective dissection of the extrapancreatic nerve plexus;SDEN手術)を行っております。以上より、根治手術できた(R0手術)率は96.8%(2010年10月~2014年7月)と良好でかつ術後補助化学療法平均導入期間は44.2日と早期に術後抗癌剤導入が可能となっております。(Hepatogastroenterology. 2014;61:2253-8.)

根治切除術と術後QOLを配慮したSMA右斜後方郭清術(ROPS手術)

局所進行膵体尾部癌に対する根治手術を目指した腹腔動脈合併膵体尾部切除(DPCAR)

 膵体部癌において腹腔動脈や総肝動脈に癌が浸潤した場合、手術困難とされていましたが、当院ではこのような局所進行膵癌でも根治を目指し、化学放射線治療後に腹腔動脈合併膵体尾部切除(DPCAR)を積極的に行っております。この術式は、術前に予め、総肝動脈を血管カテーテルで塞栓(血管塞栓術)することにより安全に手術が行えます。血管塞栓術は放射線科のエキスパートによって行われます。この術式を行う事で、根治手術が可能になり、長期生存する患者さんが増えております。

総肝動脈に浸潤した局所進行膵癌に対する腹腔動脈合併膵体尾部切除(DPCAR)

  

術後合併症対策

 膵がんの手術は、難易度の高い手術であり、術後に膵臓から膵液が漏れる膵液瘻をはじめ術後合併症の頻度が高く、時に重篤な合併症へと発展することもあります。一方,膵癌の予後改善には術後化学療法の早期導入が必要不可欠です。そのため術後合併症を減らし、術後早期に抗がん剤治療を導入していくことが極めて重要になります.国内外のデータでは、膵臓の手術件数が年間20-30以上の施設(high volume center)での術後合併症が低く、治療成績が良いとされています。当科では年間120例以上の膵切除術(2015年:膵頭十二指腸切除術;82例、膵体尾部切除術;31例、膵全摘など;10例)を行っており、全国でも有数の手術件数を誇る施設となっております。また我々は,術後合併症を減少させるべく、様々な手術手技の改良、合併症対策をおこない、合併症発生率は著明に減少しております(Grade B/Cの膵液瘻発生率10 %以下)。また膵頭十二指腸切除術では一般的に術後一ヶ月以上入院することが多いのですが、当科ではクリニカルパスを導入し術後在院日数は通常12日~16日間に短縮しています。(J Hepatobiliary Pancreat Surg. 2008;15:359-65. Pancreas. 2013;42:701-6.)

膵頭十二指腸切除術クリニカルパス

決してあきらめない膵臓がん治療

 遠隔転移(肝転移、播種など)を認めませんが、主要血管(膵周囲の大切な血管)に癌が進行し、手術が不可能(手術しても予後が期待できない)な膵がんを切除不能局所進行膵癌といいます。当院では切除不能局所進行膵癌に対しても決してあきらめない治療を目指し、積極的な抗癌剤投与や放射線治療を行っております。近年これらの治療により、根治手術が可能となるケースがあります。

膵癌に対するIMRT(強度変調放射線治療)

 根治手術の難しいボーダーライン膵癌や切除不能局所進行膵癌に対して、有効な治療法の1つとして放射線療法と化学療法を併用する化学放射線療法があります。しかしながら放射線の副作用で抗がん剤が投与できず、十分な効果が得られない問題がありました。当院では臨床試験として最新の放射線治療である強度変調放射線治療(IMRT)とより強力な抗癌剤(gemcitabine+S-1)を併用した化学放射線療法を行っております。IMRTはコンピューター制御で必要に応じて強度を変えることができ、これにより高精度に腫瘍をターゲットにした照射ができるほか正常組織に照射される線量が減り、十分な抗がん剤との併用療法が可能になりました。少ない副作用で,抗癌剤を減量することなく十分な放射線治療ができることによって、根治手術が可能となるケースも増えてきました。

IMRT(強度変調放射線治療)による放射線化学療法

  

治療前
(切除不能な膵がん)

  

IMRT後
(著明に縮小し根治手術可能となった)

不可逆電気穿孔法(Irreversible Electroporation:IRE;ナノナイフ)

 IREは、がんの周りに針を刺し、高電圧で通電しがん細胞をアポトーシスに導くという新しい治療法で、欧米を中心に多くの主要病院で取り入れられつつありますが、日本ではまだ保険未承認です。当院ではIRE(NanoKnife System)をいち早く導入し、局所進行膵癌に対して、消化器内科との連携のもとIREを臨床試験として行っております。この治療が適応となる(効果の期待できる)患者さんは詳細な進行度診断によって判断されます。(本治療は保険未承認のため東京医科大学医学倫理審査委員会の承認のもと、病院の費用を用い、適応のある患者さんに行われます。)

局所進行膵癌に対する不可逆電気穿孔法:IRE(ナノナイフ)

HIFU(高密度焦点式超音波治療)

 切除不能局所進行膵癌に対して、HIFU(高密度焦点式超音波治療)といった最新治療をとりいれております。この治療が適応となる(効果の期待できる)患者さんは詳細な進行度診断によって判断されます。(本治療は保険未承認のため東京医科大学医学倫理審査委員会の承認のもと、病院の費用を用い、適応のある患者さんに行われます。)

HIFU(高密度焦点式超音波治療)

樹状細胞を用いた免疫療法(WT1またはMUC1ペプチド免疫療法)

 更なる治療成績を向上させるため、東京ミッドタウン先端医療研究所との連携のもと、がん細胞に存在するWT1ペプチドやMUC1ペプチド呼ばれるがん抗原をターゲットとした樹状細胞ワクチン療法を、手術後の患者さんを対象に取り組んでおります。

臨床試験

1 局所進行膵癌に対する術前強度変調放射線療法(IMRT)とゲムシタビンおよびS-1併用化学療法を
 用いた臨床第II相試験
2 膵がん切除患者を対象としたゲムシタビンとS-1の併用療法(GS)をゲムシタビン単独療法と
 比較する術後補助化学療法のランダム化試験
3 切除可能膵癌に対する術前化学療法としてのGemcitabine+S-1療法(GS療法)の
 第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験
4 膵癌腹膜転移に対するS1+PTX iv and ip療法第II相試験
5 切除不能局所進行膵癌に対する不可逆電気穿孔法の有効性と安全性の評価
6 局所進行膵癌に対する術前化学療法としてのmodified FOLFIRINOX療法を検討する
 第Ⅱ相臨床試験
7 ボーダーライン切除可能膵癌に対する術前治療としてのゲムシタビンとS-1化学放射線療法
 第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験

後方視的研究へのご協力のお願い

 当科では、過去に下記のような診療を受けていただいた患者様のデータを用いた臨床研究を行います。患者様個人のお名前や、個人を特定できる情報は一切公表いたしません。皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。

1 ボーダーライン膵癌に関する治療方針の実態調査ならびにボーダーライン膵癌の予後因子の解明

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お問い合わせ

東京医科大学 消化器・小児外科学分野(消化器外科・小児外科)
電話 : 03-3342-6111(代表)
メールアドレス : geka-3@tokyo-med.ac.jp