甲状腺疾患の診断・治療の概略
東京医科大学病院 呼吸器甲状腺外科では、甲状腺疾患、副甲状腺疾患の診療をおこなっています。甲状腺と副甲状腺は頚部にある内分泌臓器です。外科的な治療を必要とするさまざまな疾患に対応しています。
我々が行っている外科的治療(手術)
甲状腺良性腫瘍の手術:腺腫様甲状腺腫、甲状腺濾胞性腫瘍
甲状腺悪性腫瘍(甲状腺癌)の手術:乳頭癌、濾胞癌、低分化癌、未分化癌、髄様癌
バセドウ病の手術:甲状腺ホルモンのバランスが崩れる病気
副甲状腺手術の手術:副甲状腺腺腫、副甲状腺過形成、副甲状腺癌
甲状腺腫瘍の治療は基本的に外科的切除(手術)です。当科では、手術に伴う合併症を最小限とするため以下の取り組みを行っています。
エネルギーデバイスの使用:手術の出血を少なくする、手術時間を短縮する
術中神経モニタリング:音声を保つために反回神経の動きの状況を確認しながら手術をすすめます
副甲状腺機能温存:血液中のカルシウムバランス調整する副甲状腺の機能をできるだけ残すように工夫しています
我々が行っているそのほかの治療
気管内視鏡を使用した気管拡張術、気道内腫瘍焼灼術、気道ステントなど:
進行した甲状腺癌や再発した甲状腺癌が、甲状腺の背側に位置する気管に浸潤した場合、気管の内腔に腫瘍が進展し、気道(空気の通り道)が閉塞する危険性が生じます。腫瘍からの出血、腫瘍による気道閉塞は窒息を生じて、生命の危機に関わります。当科では、気道に浸潤した腫瘍に対して気管支鏡を用いた治療を行っています。
胸腔鏡を使用した手術、開縦隔手術:
進行した甲状腺癌や再発した甲状腺癌が、上縦隔(胸部)に進行した場合、頚部の操作では手術が困難な場合には、胸腔鏡を使用し胸部からの操作で対応します。
また、開縦隔といって胸骨を切開し、術野を展開するアプローチ法を用います。
甲状腺癌に対する薬物療法:
放射性ヨウ素治療が終了した再発甲状腺癌や進行した甲状腺癌に対して、薬物療法(抗がん剤治療)を行っています。
甲状腺癌に選択される治療は、分子標的薬とよばれる薬物療法です。
甲状腺癌の遺伝子診断について:
最近では、甲状腺癌で腫瘍が持つ遺伝子にさまざまな変異があり、病気と関わっていることが判明してきました。実際の臨床で使用されている治療薬の数はまだ少ないですが、それらの変異した遺伝子を標的とする治療薬が開発されてきています。
進行再発甲状腺癌に対して、遺伝子パネル検査が保険適応となりました。東京医科大学は、がん診療拠点連携病院として、癌の遺伝子パネル検査を行っています。