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林田泰斗先生の学位申請のための論文が受理されました

投稿者 : HP 管理者

カテゴリ : お知らせ

Hayashida T, Higashiyama M, Sakuta K, Masuya J, Ichiki M, Kusumi I, Inoue T: Subjective social status via mediation of childhood parenting is associated with adulthood depression in non-clinical adult volunteers. Psychiatry Res. 2019 Apr;274:352-357. doi: 10.1016/j.psychres.2019.02.061. Epub 2019 Feb 25. PubMed PMID: 30851598. 

 
和文タイトル「主観的社会的地位は小児期被養育体験の効果を媒介することによって非臨床成人ボランティアの抑うつ症状と関連している」 

【背景と目的】 主観的社会的地位は、うつ病を含む多くの精神疾患と関連していることが報告されている。しかし、主観的社会的地位がどのように抑うつ症状の発症メカニズムに関与しているかは明らかでない。小児期被養育体験、自尊感情がうつ病発症、抑うつ症状の程度に影響することは知られているが、これらの因子間の作用に主観的社会的地位がどのように影響するかは不明である。本研究は、小児期の親からの養育体験と自尊感情が抑うつ症状に及ぼす影響において、主観的社会的地位が媒介効果を示すという仮説を立てて、共分散構造分析により検討した。 
【対象および方法】 2014年1月から8月の期間において、自記式の質問紙による調査を行い、同意と有効回答が得られた404人の一般成人ボランティアを対象とした。Patient health Questionnaire-9 (抑うつ症状)、主観的社会的地位、Parental Bonding Instrument (小児期の親からの被養育体験)、Rosenberg Self-Esteem Scale (自尊感情)の自記式質問紙を使用し、それらの得点の関連について共分散構造分析(Mplus 7.3)を用いて解析した。本研究は、東京医科大学及び北海道大学病院の医学倫理委員会の承認を得て実施した。 
【結果】 共分散構造分析の結果、自尊感情は成人期抑うつ症状に直接的な効果を示したが、小児期の親からの被養育体験、主観的社会的地位は成人期抑うつ症状に直接的効果を示さなかった。小児期の親からの被養育体験は主観的社会的地位と自尊感情に直接的に影響し、主観的社会的地位は自尊感情に直接的に影響することにより、それぞれ成人期抑うつ症状に対して間接的な影響を与えていた。このモデルは成人期抑うつ症状の変動の31%を説明し、モデルの適合度は良好であった。 
【結論・考察】 本研究は、小児期の親からの被養育体験の成人期抑うつ症状に対する影響において、主観的社会的地位と自尊心は媒介因子であることを示唆している。さらに、主観的社会的地位の抑うつ症状に対する媒介効果は自尊感情によって媒介されていることも示された。主観的社会的地位の抑うつ症状に対する媒介効果を検討した研究はこれまでになく、本研究が抑うつ症状発症における主観的社会的地位の役割解明に寄与することが期待される。