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抄読会 2018/8/20

投稿者 : HP管理者

カテゴリ : お知らせ

本日の抄読会では、Temperament and Character Inventory (TCI)によって測定されるパーソナリティ特性が単極性うつ病、双極性うつ病のいずれかに特徴的かを検討した論文が取り上げられました。本論文では、研究参加に同意が得られた、双極Ⅱ型障害(BP-)と診断された者36名、大うつ病性障害と(UP)と診断された者90名、健常人(CL306名を対象に面接および質問紙による調査が実施されました。その結果、CL群と比較してBP群、UP群共に「損害回避」の得点が高く「自己志向」と「協調」の得点が低いことが示されました。また、女性の場合、CL群と比較してBP群、UP群共に「固執」の得点が高いことが示されました。他方で。「新奇性追求」の得点は、CL群、BP群と比較して、UP群の得点が低いことが示されました。反対に、「自己超越」の得点はCL群と比較してBPII群で高得点であり、UP群で低得点であることが示されました。診断の予測としては、うつ症状を呈している女性において、「新奇性追求」と「自己超越」の得点の高さがBPIIの診断を予測することが示されました。以上のことから、うつ症状を呈している女性の場合に、TCIの「新奇性追求」と「自己超越」の得点の高さがBPⅡUPの診断の鑑別に役立つ可能性が示唆されました。本論文の抄読を受けて、当科では、TCIで測定される性格特性にうつ症状が影響していた可能性があるのではないかという点や、どうしてこのような結果になったのかに関して考察的な議論がなされました。

Sasayama et al. Difference in Temperament and Character Inventory scores between depressed patients with bipolar II and unipolar major depressive disorders. J Affect Disord. 2011 Aug;132(3):319-24.

doi: 10.1016/j.jad.2011.03.009.

PMID: 21439649 

TCITemperament and Character Inventory)はCloningerの気質と性格の7次元モデルに基づいて開発された自己記入式質問紙です。Cloningerの気質と性格の7次元モデルでは、パーソナリティの構成概念を気質と性格に分け、それぞれ4次元と3次元の下位次元が想定されています。気質の4次元は、(1)新奇性追求、(2)損害回避、(3)報酬依存、(4)固執であり、性格の3次元は、(1)自己志向、(2)協調、(3)自己超越とされています。