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抄読会 2018/6/4

投稿者 : HP管理者

カテゴリ : お知らせ

本日の抄読会では、小児期の虐待体験が成人期の抑うつ、不安、ストレスに与える影響における愛着スタイルの媒介効果について検討した研究が取り上げられました。アイルランドの大学生190名がソーシャルメディアによる公募によってリクルートされ、本研究に参加しました。参加者は、小児期の虐待、愛着スタイル、抑うつ、不安、ストレスおよび主観的ウェルビーイングに関する質問紙に回答しました。その結果、少なくとも67.4%の学生が1回以上の小児期虐待を体験していることが明らかになりました。また、小児期の虐待体験は心理的苦痛および主観的ウェルビーイングと関連していることが示されました。さらに、愛着に関する全般的な(例えば見捨てられ不安といったような)不安は、小児期の虐待が心理的な苦痛や主観的ウェルビーイングに与える影響の媒介要因であることが示されました。これらのことから、心理的な支援において愛着全般に関する不安に焦点を当てることで、小児期虐待の影響を軽減させる可能性が示唆されました。本研究の抄読を受けて、当科では、まず、愛着スタイルがどのようなものかについて確認と共有をしました。その上で、愛着スタイルを成人期に観測することの難しさについて議論されました。小児期の虐待体験が成人期の様々な心理的要因にどのように影響を与えるかについて、大規模の追跡研究が必要であるといえますが、そのような研究支援体制が整備されていない点を考慮すると、発展には本論文のような研究にはまだ発展の余地があるのではないかと考えられます。

Corcoran et al. Examining the role of attachment in the relationship between childhood adversity, psychological distress and subjective well-being. Child Abuse Negl 76:297-309. 2018

DOI: 10.1016/j.chiabu.2017.11.012