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第91回日本産業衛生学会若手優秀演題賞受賞!
2018.05.21 09:57
投稿者 : HP 管理者
カテゴリ : お知らせ
2018年5月18日当科の志村哲祥兼任助教(睡眠健康研究ユニットリーダー)が第91回日本産業衛生学会若手優秀演題賞受賞を受賞しました。志村兼任助教は、「夜型のクロノタイプを持つ者の早すぎる起床時刻はプレゼンティーイズムを招く」というテーマで演題発表し,その内容が高く評価され本賞の受賞となりました。当科では、引き続き学会発表を行い、その成果を積極的に論文として公表し社会発信していきたいと思います。
以下に発表の概要を示します。
始業時刻が固定されている一般就労者において、クロノタイプ(朝型―夜型傾向)と不調や、不調による生産性(パフォーマンス)の低下(「プレゼンティーイズム」と呼ばれます)が関連することが想定され、多くの研究で「夜型傾向と不調」の関係が示されています。また、近年の研究では、クロノタイプを考慮せずに社会生活を送らせることで生じる健康被害が次々と明らかになっています。たとえば学生を対象とした研究では、クロノタイプに合わせた始業時刻の遅延によって、様々な健康の指標や学業成績が大幅に改善することが明らかとなっております。このことから、夜型であることが問題なのではなく、始業時刻の早さが(夜型のクロノタイプをもつ者を早く起床させすぎることが)問題であるのではないかという仮説が考えられます。そこで、本研究では、一般就労者2905名のWork Limitation Questionnaire(WLQ)という労働生産性(プレゼンティーイズム)に関する問診票、ピッツバーグ睡眠問診票(PSQI)をはじめとする睡眠に関する問診票、職業性ストレス簡易調査票の後方視的データを用いた調査研究を実施しました。
単回帰分析の結果、夜型であることがわずかに労働生産性を低めていることが示されました(標準化β=0.114, p < 0.001, R2=0.013)。他方で、睡眠の問題と心身のストレス反応を共変量とした重回帰分析を行ったところ、クロノタイプは有意な説明変数ではなくなることが示されました。また共分散構造分析の結果、クロノタイプは直接的ではなく、睡眠がうまくとれないことや、心身の不調を引き起こすことを介して間接的に生産性を低下させるということが示されました。さらに、交互作用項を用いた重回帰分析では、クロノタイプは生産性低下とは有意に関係しないものの、起床時刻との相互作用が負の係数で有意であり、夜型傾向のある者は遅く起きることでプレゼンティーイズムが改善し生産性が向上することが示されました。
以上のことから、夜型の就労者の早すぎる起床時刻は、クロノタイプとの交互作用により、睡眠の問題や心身のストレス反応とは独立して、生産性の低下を招くこと、特に、本研究の対象となった若年社員を多く含む母集団では、8時以前の起床が従業員の過半数で生産性の低下を引き起こす可能性が示唆されました。本研究の結果から、個々人のクロノタイプを考慮した始業時刻を設定することで職域の生産性が向上すると考えられます。
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