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抄読会 2018/5/28
2018.05.28 17:42
投稿者 : HP管理者
カテゴリ : お知らせ
本日の抄読会では、弁証的行動療法(Dialectical behavior therapy:DBT)の中の治療戦略のひとつである「承認」の使用頻度が境界性パーソナリティー障害の診断を受ける者の面接中の感情変化と関連するか検討した論文が取り上げられました。DBT研修クリニックにて、研究参加に同意が得られた35名(平均年齢29.34歳)のDBTのセッション(121回)の内容を録音し、承認の使用頻度と承認レベル(下記※印参照)を数値化しました。診断の確認は、Structured Clinical Interview for DSM-IV, Axis I (SCID-I)とAxis II (SCID-II)によって評価され、セッション前後のクライエントの感情評価にはThe Positive and Negative Affect Schedule (PANAS)が用いられ、結果は反復測定分散分析(ANOVA)および、階層的線形モデルによって解析されました。その結果、承認全体の使用頻度とクライエントの感情の変化の間には有意差は認められませんでした。他方で、高い承認レベルの使用とクライエントのポジティブな感情の変化の増加およびネガティブな感情の減少が関連していることが示されました。他方で、低い承認レベルの使用はクライエントの感情変化は関連していないことが示されました。本研究の抄読を受けて、当科では、DBTに関する基本情報の確認と具体的に承認レベルの違いがどういう状況を示すのかについて共有しました。また、単に承認レベルが上がるとポジティブな感情が上がり、ネガティブな感情が減少するだけではなく、承認が効果的に働いていてもネガティブな感情が喚起されることもあるのではないかという点について議論されました。
Carson-Wong et al. The effect of therapist use of validation strategies on change in client emotion in individual dbt treatment sessions. Personal Disord 9(2): 165-171. 2018
doi: 10.1037/per0000229.
※ 承認:クライエントの中にある真に理解可能な行動(感情・考え・行動)の一片を見出して、それを理解可能だと伝えること。
※ 承認の6つのレベル:
1.意識を集中してクライエントを観察する、2.クライエントが伝えようとしていることを正確に反映する、3.クライエントの言語化されない感情・考え・行動のパターンを明確に言語化する、4. 過去の状況や生物学的背景・個人誌との関係を考えると行動が理解できると伝える(直接的承認)、5. 現在の状況との関係で行動が理解できると伝える(人間全般のノーマルなこととして扱う)、6.真摯に相手を同等な人間として扱う
注)この定義は、日本語訳に加えわかりやすく意訳した箇所を含みますので、正確にはDBTのマニュアル(弁証法的行動療法実践マニュアル―境界性パーソナリティ障害への新しいアプローチなど)をご参照ください。
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