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抄読会 2018/5/21

投稿者 : HP管理者

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本日の抄読会では、21種類の抗うつ薬の効果をメタ解析で比較した論文が取り上げられました。Cochrane Central Register of Controlled TrialsCINAHLEMBASELILACS databaseMEDLINEMEDLINE In-ProcessPsycINFO、規制当局のウェブサイトにて、201618日までに報告された抗うつ薬の無作為化二重盲検比較試験(非公表も含む)を検索し、うつ病成人患者(18歳以上の男女)の急性期治療として使用された第1および第2世代の抗うつ薬21種に関するプラセボまたは実薬対照比較試験を実施した論文をメタ解析しました。その結果、包含基準を満たし、除外基準を満たさなかった論文は522編(計116,477名)のデータが解析されました。

プラセボと実薬の比較では、有効性に関しては、21種類の抗うつ薬は全てプラセボと比較して有意に効果的であることが示されました。ORsはアミトリプチリンの2.1395%CI1.892.41)が最も高く、reboxetine1.3795CI1.161.63)が最も低いという結果になりました。忍容性に関しては、agomelatine0.8495CI0.720.97)とfluoxetine0.880.800.96)のみがプラセボより有意に中止が少なく、クロミプラミン(1.3095CI1.011.68)はプラセボより有意に中止が多いことが示されました。

実薬の直接比較では、agomelatine、アミトリプチリン、エスシタロプラム、ミルタザピン、パロキセチン、ベンラファキシン、vortioxetineは他の抗うつ薬よりも有効ということが示されましたが(ORs範囲:1.191.96)、fluoxetine、フルボキサミン、reboxetine、トラゾドンは効果が低いことが示されました(ORs範囲:0.510.84)。忍容性に関しては、agomelatine、シタロプラム、エスシタロプラム、fluoxetine、セルトラリン、vortioxetineは他の抗うつ薬よりも良好でしたが(ORs範囲:0.430.77)、アミトリプチリン、クロミプラミン、デュロキセチン、フルボキサミン、reboxetine、トラゾドン、ベンラファキシンは中止率が高いことが示されました(ORs範囲 1.302.32)。

以上のことから、すべての抗うつ薬は、大うつ病性障害を有する成人においてプラセボより有効であることが示されました。他方で、抗うつ薬間の直接比較では、有効性と忍容性のバラツキが多いことが示されました。これらの結果は、エビデンスベースドプラクティスを提供に貢献し、患者、医師、ガイドライン作成者、政策立案者に、異なる抗うつ薬の相対的なメリットについて知らせる結果となりました。本研究の抄読を受けて当科では、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるreboxetineの有効性が低かった点について薬理学的な観点から議論や考察を行いました。また、精神療法的なかかわりの影響を考慮せずに結果が議論されているので、プラセボ群で効果が出ている点についても精神療法の観点を取り入れた新たな研究が必要なのではないかという点が話し合われました。

 

Cipriani et al. Comparative efficacy and acceptability of 21 antidepressant drugs for the acute treatment of adults with major depressive disorder: a systematic review and network meta-analysis. 2018 Lancet, 391(10128):1357-1366.

doi: 10.1016/S0140-6736(17)32802-7.