本日の抄読会では自尊感情の低さと抑うつおよび自尊感情と不安の関連を検討したメタ解析した論文が取り上げられました（抑うつと自尊感情の研究77編、不安と自尊感情の研究18編）。対象論文の解析はランダム効果モデルで予測変数を統制した上で、変数間の予測効果を算出しました。自尊感情が抑うつに与える効果（β = －0.16)は、抑うつが自尊感情に与える効果（β = －0.08）よりも有意に強いことが示されました。一方で、自尊感情が不安を予測し（β =－0.10）、不安が自尊感情を予測する（β = －0.80）ことが示されました。その後、関連要因の検討が行われ、自尊感情の低さが抑うつに与える影響には、性別・年齢・自尊感情と抑うつを測定する尺度の違い・評価期間のタイムラグは影響しないことが示されました。今後、自尊感情の低さが抑うつに与える因果関係が明らかになることで、自尊感情の向上を狙った介入によって抑うつを提言させることに役立つ可能性が示されました。本論文の抄読を受けて、具体的に自尊感情を高めるためにどのような取り組みができるかについて議論されました。当科で注目している幼少期の養育に対する介入や成人期に幼少期のトラウマについて扱うなどの可能性が考えられました。また、以前の抄読会でも取り上げられたように環境や周囲との相対的な地位の比較による影響をうける可能性があることが話し合われました。

Sowislo & Orth. Does low self-esteem predict depression and anxiety? A meta-analysis of longitudinal studies. Psychol Bull. 2013 Jan;139(1):213-240.

doi: 10.1016/j.jad.2016.07.013.