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抄読会 2017/10/23

投稿者 : HP管理者

カテゴリ : お知らせ

本日の抄読会では,健常者の小児期の虐待と青年期のストレスフルなライフイベントが抑うつ症状に与える影響を感情気質が調整する効果を検討した論文が取り上げられました。日本の健常者286名を対象に、アンケート調査にて、以下の項目(小児期の虐待を測定するCAT、ライフイベントを測定するLES、抑うつ症状を測定するPHQ-9、気質を測定するTEMPS-A)に回答を求め、その結果を階層的重回帰分析しました。その結果、TEMPS-Aの因子のうち、1)抑うつ気質は小児期の虐待が現在の抑うつ症状に与える影響を強め、2)発揚気質は小児期の虐待が現在の抑うつ症状に与える影響を弱めることが示されました。同様に、3)焦燥気質は、ストレスフルなライフイベントが抑うつ症状に与える影響を強め、4)揚気質はストレスフルなライフイベントが抑うつ症状に与える影響を弱めることが示されました。また、5)循環気質と不安気質が抑うつ症状に与える影響は成人期のポジティブなライフイベントが媒介することで弱まることを示しました。さらに、6)ネガティブなライフイベントが抑うつ症状に与える影響はネグレクト・罰・虐待の合計得点の高さを媒介して強まっていることが示されました。これらの結果から、小児期の虐待と青年期のストレスフルなライフイベントが抑うつ症状に与える影響を感情気質が調整する効果を包括的に検討され、抑うつ症状発症のメカニズムの一部が検証されました。本論文の抄読を受けて、当医局では、階層的重回帰分析の具体的な方法、SPSSの操作コマンドや数式と結果からいえることについて共有し理解を深めました。本研究のように、変数が多い場合、論文の内容が難しくなってしまうため、どのように論文を読むとよいか、学位論文をどうやって進めるかについても話し合われました。

補足:TEMPS-Aの下位因子;抑うつ気質、循環気質、発揚気質、焦燥気質、不安気質

Nakai, Y et al. The moderator effects of affective temperaments, childhood abuse and adult stressful life events on depressive symptoms in the nonclinical general adult population. J Affect Disord. 2015 Nov 15;187:203-10.

doi: 10.1016/j.jad.2015.08.011.