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抄読会 2017/6/5

投稿者 : HP管理者

カテゴリ : お知らせ

本日の抄読会では、医局の新研究の理解を深めるため、当科の小野助教が公表した論文が取り上げられました。本論文では、401名の一般成人を対象に横断的質問紙調査を実施し,一般成人のうつ症状に対する両親の養育態度、神経症的特質、成人期ライフイベントの影響を検討しました。その結果、小児期の父親と母親による養育(PBIの因子であるケア)の低さと過保護が神経症的特質(EPQ-R)の増強を介して間接的に抑うつ症状(PHQ-9)を強めていることが示されました。さらに、神経症的特質は成人期のライフイベント(LES)の否定的評価を強めることを介して間接的に抑うつ症状を増強していることも示されました。以上のことから、小児期の養育は神経症的特質を介して成人期の抑うつ症状に間接的に影響し、神経症的特質はライフイベントの否定的な評価増悪を介して成人期の抑うつ症状に間接的に影響を与えていることが明らかになりました。本抄読を受けて、改めて、新研究の方法論の確認が行われました。また、当医局新研究の新規性は、抑うつ症状と様々な心理社会的要因の直線的な関係性だけではなく、様々な交絡要因を含めた理論を検討することでうつ病に関連する要因のメカニズムを示していくことである点が再確認されました。うつ病は遺伝的な要因だけではなく様々な要因が複雑に関連しあって発症する疾患であるため、その構造の理解が進むことが期待されます。

Ono, Y., et al. The influence of parental care and overprotection, neuroticism and adult stressful life events on depressive symptoms in the general adult population. Journal of Affective Disorders 217: 66-72, 2017.

DOI: 10.1016/j.comppsych.2016.12.005