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抄読会 2017/5/8

投稿者 : HP管理者

カテゴリ : お知らせ

本日の抄読会では、幼児の子どもを持つ母親の主観的社会地位(SSS)と心理的苦痛の関連を検討した論文が取り上げられました。本論文では幼児を持つ母親164名を対象に、SSSおよび客観的社会地位(SES)、心理的苦痛として抑うつ症状(CES-D)、不安症状(STAI)、ソーシャルサポートに関する質問紙調査を実施し、その関連を検討しました。その結果、SSSの中でもその人が所属するコミュニティの中でどのくらいの地位にいるか否かはソーシャルサポートの多さと有意な正の関連を示し(β = 1.34SE = 0.33, p < .001)、抑うつ症状と有意な負の関連を示しました(β = -1.34SE = 0.52, p < .05)。抑うつ症状と。同様に、SESの高さとソーシャルサポートの多さの間に有意な正の関連が認められました(β = 1.17SE = 0.52, p < .05)。一方で、それらの関連は人種により差があることも示されました。以上のことから、幼児の母親において、自分自身でその人が所属するコミュニティの中のどのくらいの地位にいると感じているかは、心理学的な幸福と関連すると考えられ、その影響は特にアフリカ系アメリカ人の黒人の母親の間で顕著であることが示唆されました。

本抄読を受けて、当医局では、本論文で示されたモデルの説明率が低い点に着目し、交絡要因の影響があるのではないかという疑問点が上がりました。SSSはメンタルヘルスの様々な側面に関連する重要な要因です。そのため、SSSが何に対してどのように影響するのかを詳細に知ることで、日常の診療に活かしていくこと(例えば、気分の落ち込みや不安の何%くらいにSSSが関係していて、SSSを高めていくような言葉がけをすることで気持ちの落ち込みを改善、予防していくことなど)ができるようになるかもしれません。

 Michelson, N., et al. Subjective Social Status and Psychological Distress in Mothers of Young Children. 2016 Matern Child Health J. 20(10):2019-29.

doi: 110.1007/s10995-016-2027-8.