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抄読会 2016/11/7

投稿者 : HP管理者

カテゴリ : お知らせ

本日の抄読会では、世界の低所得な地域における収入がウェルビーイングとどのような関連を示すかを解析した論文が取り上げられました。23のラテンアメリカ・アジア・アフリカの地域の国の地方の低所得地域に在住する6973世帯が解析の対象となりました。研究に参加した全世帯の一人当たりの平均年収は1555米ドル(162千円)であるものの、地域別の年収差が大きい(ラテンアメリカ3602米ドル;アジア1580米ドル;アフリカ1062米ドル)ことが分かりました。また、各地域の年収がウェルビーイングに対してどのように影響するかを解析したところ、総年収(福利厚生・農作物や土地などの現金以外の利益を含めた所得)とウェルビーイングには正の相関が認められました。アフリカとアジアにおいては、総年収がウェルビーイングに影響を与えている一方で、相対的な年収(周囲の年収と比較した自分の年収の立ち位置)を考慮すると、総年収がウェルビーイングに与える影響が消失するという結果となりました。このことからアフリカとアジアの地域の住民のウェルビーイングには所得の多さだけではなく社会的な立ち位置の影響があることが明らかになりました。他方で、ラテンアメリカの地域の住民の総年収はウェルビーイングに影響せず、社会的な立ち位置の影響も強くないという結果となり、年収がウェルビーイングに与える影響には地域差があることが示されました。

 

本研究の結果から、公衆衛生にかかわる調査の研究手法や数値の扱い方に関して理解を深め、本医局の新研究の公衆衛生的な側面における考察の一助となることを確認しました。また、本論文のモデルの説明率(決定係数:R2)は10~13%と低いことからウェルビーイングに影響を当てる他の要因について活発なディスカッションがなされました。

 

Reyes-García, V., et al. Subjective Wellbeing and Income: Empirical Patterns in the Rural Developing World. Journal of Happiness Studies 2016. April; 17 (2): 773-791.

doi: 10.1007/s10902-014-9608-2