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抄読会 2016/11/14

投稿者 : HP管理者

カテゴリ : お知らせ

本日の抄読会では、主観的社会地位と精神疾患の診断の関連を検討した大規模調査の論文が取り上げられました。アジア、南太平洋、アメリカ、ヨーロッパ、中東の18か国20の調査により、その地域住民56085名が対象となりました。主観的社会地位と精神疾患の関連をロジスティック回帰分析によって検討し,変数単独の関連をオッズ比を用いて算出した結果、参加しした全ての国において主観的社会地位と精神疾患の診断に関連が認められたました(客観的社会状況(収入、教育歴など)調整済みオッズ比:1.0-3.2)。同様に、主観的社会地位と各精神疾患の種類の関連も認められました(客観的社会状況調整済みオッズ比:1.44.9)。

 

本研究の結果から、研究の対象となった18か国の全てにおいて、客観的社会状況を調整した上であっても、主観的社会地位低いほど精神疾患に罹患しているリスクが高いことが認められました。これらの関係性に関する社会的な因果関係や経過に関して本研究結果から言及することは困難ですが、本研究の知見から、主観的な社会指標を客観的な社会指標と並行して使用していく視点が重要であると示唆されました。

本研究の抄読を受けて、今後始まる当医局の新研究一部の基礎的な知見となることを医局員内で確認し、研究手法や分析の詳細点に関してディスカッションされました。客観的な社会経済的指標の関連は国による文化差が大きく、特に日本で調査を実施する場合には,その背景要因の統制などを丁寧に実施する必要があるようです。

 

Scott, K. M., et al. Associations Between Subjective Social Status and DSM-IV Mental Disorders. JAMA Psychiatry 2014. April; 17 (2): Dec 1;71(12):1400-1408.

doi: 10.1001/jamapsychiatry.2014.1337.