News お知らせ

抄読会 2016/10/17

投稿者 : HP管理者

カテゴリ : お知らせ

本日の抄読会では、双極性障害患者に対する認知行動療法(CBT)の効果を再検証したメタアナリシスを実施した論文が対象となりました。201510月時点でPubmed Embase Chochrane Libraryに表示された520編の双極性障害患者(型・型)を対象とした論文のうち9編が解析の対象となりました。統計解析の結果、双極性障害患者に対するCBTは再発率の減少、抑うつ症状の程度の改善には効果的ではないことが示されました。一方で、客観的に測定される躁症状の重症度の改善に対しては効果的であることが示されました(SMD = -0.54, 95%CI, -1.03 to -0.06, p = 0.03)。さらに、サブグループ解析の結果,CBTは、再発率の減少(6か月のフォローアップ時点:関連リスク=0.49, 95%CI, 0.29 to 0.81, p = 0.04)。と躁症状の重症度の改善(治療直後:SMD = -0.30, 95% CL, -0.59 to -0.01, p=0.04)に短期的な効果が認められました。これらの結果から双極性障害患者に対するCBTは再発率と躁症状の重症度の短期的な改善に寄与することが示されたが、これらの効果は時間経過に伴って弱まる可能性があり、長期的な効果に関しては不十分であることが示唆されました。本研究の抄読を受けて、当医局では対象となった論文の数の少なさとその質のばらつきの大きさが議論となり、双極性障害の心理療法が十分になされておらず、その検証の必要性と重要性について活発に議論されました。当医局でも双極性障害に対する心理社会的治療の臨床研究に力を入れているため、今後は双極性障害の再発予防効果に焦点をあてた臨床研究へ取り組んでいきたいと思います。

 

Bi-Yu, Y., et al. Effectiveness of cognitive behavioral therapy in treating bipolar disorder: an updated meta-analysis with randomized controlled trials. Psychiatry and Clinical Neuroscience, 2016. 70: 351-361