IVR診療について|研究・実績

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IVR診療内容・特色

放射線医学は大きく、画像診断、interventional radiology(IVR)、放射線治療の3領域に分けられます。
IVRとは、「画像下治療」や 「画像支援下治療」を意味し、血管造影、CT、超音波などの画像を見ながら様々な疾患に対して行う低侵襲医療のことです。主にカテーテルを用いた血管内治療や経皮的治療などが代表的なIVR治療です。多数の診療科とカンファレンスを積極的に行い、各診療科の先生方と緊密な連携をとって治療にあたります。
当科には(日本IVR学会専門医5名を含む)8名のIVR医が勤務しており、夜間、休日を含めて、緊急IVR(消化管出血、産科出血、外傷性出血などに対する動脈塞栓術など)の依頼にも対応しております。

■対象疾患と治療法

動脈性疾患 内臓動脈瘤(腎動脈瘤、脾動脈瘤、肝動脈瘤、十二指腸動脈瘤など)
腎動脈狭窄・腸骨動脈狭窄エンドリーク大動脈瘤
肺疾患 肺動静脈奇形(瘻)、喀血
婦人科疾患 子宮筋腫、骨盤内動静脈奇形、産科出血、術中大動脈バルーン留置
出血 消化管出血、術後出血、腹腔内出血、喀血、産科出血、周産期出血、動脈瘤破裂、仮性動脈瘤、外傷、難治性鼻出血、Carotid Blowout Syndromeなど、出血に対する緊急IVR術中出血量を抑えるための術前塞栓術(TAE)
肝疾患 肝細胞癌(TACE)肝腫瘍術前門脈塞栓(PTPE)
門脈圧亢進症 胃静脈瘤・肝性脳症(BRTO, PTO)脾腫(PSE)難治性腹水(TIPS)
頭頸部疾患 上顎洞癌(超選択的動注化学放射線療法)
泌尿器疾患 腎動静脈奇形(瘻)、腎血管筋脂肪腫、腎癌術前塞栓
静脈疾患 上大静脈症候群、Budd-Chiari症候群、透析シャント不全(シャントPTA)
関節疾患 肩、膝、股関節などの関節炎、慢性関節痛(運動器カテーテル治療:TAME)

■IVRの活用

緩和IVR 上大静脈症候群ステント留置術、腹腔神経叢ブロック
その他 生検、ドレナージ、CVポート留置、副腎静脈サンプリング、リンパ管造影、肝動注リザーバー

当院で施術可能なIVR治療について

内臓動脈瘤治療

内臓動脈瘤とは、脾臓、腎臓、肝臓、腸管などを栄養する動脈にできた「コブ」のことです。動脈硬化や高血圧、感染、外傷などが原因となります。通常は無症状で、健診や他の疾患の精査で偶然見つかる場合が多いですが、2.0cm以上のものは破裂しやすく、破裂した場合の死亡率が高いため治療が必要です。カテーテルを用いて金属製のコイルで塞栓術を行います。瘤の塞栓が不可能な場合は、ステントグラフトを用いて治療を行います。

〈症例〉脾動脈瘤

▲脾動脈にコブ(動脈瘤)が形成されています。

 

▲カテーテルを動脈瘤内に進め、動脈瘤の中を金属製のコイルで充満させ、塞栓をおこないました。

 

▲動脈瘤は造影されず、治療が完了しました。

腎動脈狭窄・腸骨動脈狭窄に対するIVR治療

動脈硬化とは、コレステロールが動脈血管に付着することなどによって、血管が硬くもろくなる病気です。脳の血管に動脈硬化が進むと脳虚血発作や脳梗塞などが、心臓の血管に動脈硬化が進むと狭心症や心筋梗塞などが起こります。
腸骨動脈に動脈硬化が起こり、血管が狭くなったり閉塞したりすると、歩くと下腿のしびれや痛みが出たり(間欠性跛行)、ひどくなると安静にしていても足の痛みが生じたりします。放っておくと、足の皮膚がただれたり(潰瘍)、くさってしまい(壊疽)、最終的には足を切断しなければならない場合があります。
腎動脈に動脈硬化が起こり、血管が狭くなったり閉塞したりする病気を、腎動脈狭窄症と言います。腎動脈狭窄症になると腎機能が悪くなり、血圧が高くなります。後者を腎血管性高血圧と言います。
治療は病変部にカテーテルを挿入し、狭窄部(閉塞部)を拡張する治療を行います。血管内にカテーテルを入れ、X線の画像を見ながら目的の血管までカテーテルを進めます。血管を描出するための造影剤を注入し、血管の狭窄程度や血流の状態を詳しく調べます。狭窄部(閉塞部)にガイドワイヤーを慎重に挿入し、狭窄部(閉塞部)を通過させます。その後、バルーンカテーテル(風船のついたカテーテル)を挿入し、狭窄部(閉塞部)をバルーンで拡張し、金属性のステントというものでしっかりと拡張します。

▼血管拡張術

〈症例〉腎動脈狭窄ステント留置

▲右腎動脈の起始部に狭窄が認められます(矢印)。

 

▲右腎動脈狭窄部にステントを留置しました。右腎動脈の内腔は良好に拡張しています。

〈症例〉腸骨動脈狭窄ステント留置

▲左総腸骨動脈の起始部が閉塞し(矢印)、側副路というバイパスを介して末梢側の血管が造影されています。

 

▲左総腸骨動脈閉塞部にステントを留置しました。左総腸骨動脈の内腔は良好に拡張し、側副路も目立たなくなりました。

エンドリークに対する塞栓術(TAE・直接穿刺塞栓術)

ステントグラフト内挿術の治療は、手術のように瘤を切り取ってしまうことではなく、瘤をグラフトで覆うことにより、瘤内圧を下げ、瘤を破裂しないようにすることです。ステントグラフト内挿術を行うと、瘤内圧が急激に低下します。そのため、本来は、大動脈から分枝血管に流れている血流が、分枝血管から瘤内に逆流してくる現象が見られます。この現象のことをエンドリークと言います。また、ステントグラフトの密着不足などにより、ステントグラフトと血管壁の間から血液が漏れて動脈瘤内に血流が流入するタイプのエンドリークもあります。
ステントグラフト治療後、経過観察中にエンドリークが消失せず瘤径が拡大してくるような場合には、動脈瘤壁に血圧がかかり動脈瘤が拡大し、破裂の危険性が出てくるため、経カテーテル的に分枝血管の塞栓術や直接瘤内塞栓術などの追加治療が必要になります。

〈症例〉エンドリーク

▲腹部大動脈瘤に対するステントグラフト留置後ですが、瘤内に造影効果(エンドリーク)が認められます(矢印)。

 

▲カテーテルを腰動脈から瘤内まで進め、流出血管、動脈瘤内、流入血管を塞栓しました。

腸骨動脈瘤のステントグラフト治療

大動脈瘤に対しては、従来、開腹外科手術が行われてきました。しかし、近年の血管内治療の進歩、経皮的止血デバイスの保険適応により、開腹せずステントグラフトを用いて経皮的に血管内より治療することができるようになりました。ステントグラフトとは外科手術に使用する人工血管と同様の布を金属ステント(筒状の金網)に縫い合わせて作成した特殊な人工血管のことです。局所麻酔下で、大腿動脈からカテーテルという管を挿入し、その管を介してステントグラフトを大動脈内に挿入します。ステントグラフトで大動脈瘤の内面を覆うことにより、ステントグラフトの中だけを血液が流れるようになり、動脈瘤の拡大や破裂を防止することができます。ステントグラフトは動脈内で拡張し、金属製のアンカーの働きにより永久的に動脈内に留置されます。
治療前に、造影CTによる詳細な血管計測が必要で、すべての方が治療適応になるとは限りません。
 

肺動静脈奇形(瘻)

肺動静脈奇形(瘻)は肺動脈と肺静脈が直接つながった構造をしています。症状には息切れ、倦怠感、呼吸困難などがあり、脳梗塞、脳膿瘍の原因となることもあります。健康診断などで偶発的に発見されることもあります。CTやMRIなどの検査を行い、肺動静脈奇形(瘻)の流入動脈、流出静脈を同定し、カテーテル治療を行います。
実際の手技は、足の付け根の静脈(大腿静脈)からカテーテルを入れ、肺動脈まで挿入し、肺動脈造影を行います。肺動静脈奇形(瘻)の流入動脈にカテーテルを挿入し、金属コイルで塞栓を行います。血流が早い場合は、バルーンカテーテルを用いてフローコントロール下に行う場合もあります。
腎動静脈奇形(瘻)や骨盤内動静脈奇形も同様の手技で治療を行います。

〈症例〉肺動静脈瘻

▲左肺動脈にカテーテルを挿入し、肺動脈造影を施行しました。左肺に2か所、曲がりくねった血管(肺動静脈瘻)が認められます(矢印)。

 

▲コイル塞栓術を行った結果、肺動静脈瘻は描出されなくなり、治療完了です。

子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術(UAE)

子宮筋腫は40歳以上の女性の20~50%が罹患している極めて頻度の高い子宮の腫瘍です。無症状であれば、経過観察となりますが、有症状例は治療が必要です。主な治療法は、外科的手術療法、ホルモン治療、子宮動脈塞栓術(UAE)があります。当科では、子宮動脈塞栓術(UAE)を施行しております。
子宮動脈塞栓術(UAE)は、子宮筋腫に対する治療法で、カテーテルを用いて子宮動脈の血流を塞栓物質で閉塞する治療です。子宮筋腫は子宮動脈より栄養を受けており、塞栓物質により血流を失った筋腫は栄養を受けられなくなり、小さくなっていきます。筋腫が小さくなれば症状の改善が期待できます。
子宮筋腫に由来する症状(過多月経)、圧迫症状(頻尿、下腹部の圧迫感、便秘など)などは85~90%改善し、筋腫の体積も40~70%縮小します。ただし、筋腫の縮小はゆっくりであり、治療効果を実感できるのはおおむね1~3ヵ月以降です。また、子宮全摘術と比較して症状の改善度が劣る場合があります。しかし、術後の回復は早く、早期退院が可能で、かつ保険診療で行えます。
実際の手技は、足の付け根の動脈(大腿動脈)からカテーテルを入れ、子宮動脈まで挿入し、造影剤を注入しながらCTや血管造影を撮影します。その上で、塞栓物質を流して治療を行います。

適応外
無症状の子宮筋腫、子宮癌などの悪性腫瘍がある、骨盤内に炎症がある、挙児希望の方、閉経後、ホルモン療法中、妊娠中など。
(UAEについては詳しくはこちら)

〈症例〉子宮筋腫UAE

▲左子宮動脈にカテーテルを挿入し、子宮動脈造影を施行しました。非常に強い腫瘍濃染像が認められます。

 

▲子宮動脈塞栓術を行いました。腫瘍濃染は消失し、子宮筋腫への血流はほとんど消失しております。この後、右子宮動脈の塞栓も行っています。

出血に対する緊急IVR

主に、消化管出血、術後出血、腹腔内出血、喀血、産科出血、周産期出血、動脈瘤破裂、難治性鼻出血、Carotid Blowout Syndrome、外傷、などに対して行います。
消化管出血の原因には、潰瘍、膵炎、静脈瘤、大腸憩室、腫瘍、術後などがあります。内視鏡による止血が困難な場合や、外科的治療では身体への侵襲が大きい場合に血管塞栓術を行います。
遺残胎盤や弛緩出血など産科危機的出血に対しても血管塞栓術を行っています。
また、鼻の奥から出血する難治性鼻出血に対して、鼻の穴から耳鼻科的に処置しても対応困難な場合があります。そのような場合、血管にカテーテルを挿入し、出血血管の塞栓術を行います。
Carotid blowout syndromeとは、頭頸部癌の治療後に頸動脈が咽喉頭内や体外に露出して出血する症候群です。出血している血管に対して塞栓術を行います。
そのほか、骨盤外傷や喀血などに対しても血管塞栓術を行います。
通常、造影CTにて出血部位を同定し、カテーテルを出血部位に挿入し、塞栓物質により止血を行いますが、塞栓できない場合は、ステントグラフトを用いて止血を行います。

〈症例〉出血に対する緊急IVR

▲小腸出血の患者さんです。腸管を栄養する血管にカテーテルを挿入し、血管造影を行いました。空腸に造影剤の血管外漏出像が認められます(矢印)。

 

▲出血部近傍にまでマイクロカテーテルを進め、出血部位を確認し、塞栓術を施行しました。

 

▲金属コイルによる塞栓を行い、止血に成功しました。

▲Carotid blowout Syndromeの患者さんで、吐血を主訴に来院されました。血管造影にて、外頸動脈に口径不整像が認められ、出血源と考えられました(矢印)。

 

▲金属コイルによって出血血管を塞栓し(矢印)、止血に成功しました。

▲上腸間膜動脈本幹より血管外漏出像(出血)が認められます(矢印)。

 

▲ステントグラフトを留置して、止血に成功しました。

術前塞栓術(TAE)

腎癌など血流豊富な腫瘤を手術する場合、術中に大出血を起こす可能性があります。また、大きな腫瘍のため、術中にすべての栄養血管を確認し、結紮できないこともあります。
術中の出血を極力抑えるために、術前に腫瘍の栄養血管の塞栓を行います。血管造影にて腫瘍の栄養血管を同定し、経カテーテル的に塞栓術(TAE)を行います。
通常、足の付け根の動脈(大腿動脈)からカテーテルを動脈内に挿入し、造影剤を用いた血管造影やCTで腫瘍動脈を確認し、腫瘍の栄養血管を塞栓物質で塞栓します。

〈症例〉術前TAE

▲舌の裏に、強く造影される血流の豊富な腫瘤が認められます(矢印)。手術の際に多量の出血が予想されます。

 

▲術前に塞栓術を行い、腫瘍の造影効果は消失しました。術中、出血はほとんど見られず、手術が終了しました。

肝細胞癌に対する肝動脈塞栓術(TACE)

肝細胞癌の治療法には、「手術」「穿刺局所療法」「TACE」などがあります。「TACE」は、手術不能かつ穿刺局所療法の対象とならない肝細胞癌に対して標準的に行われており、肝細胞癌に対する局所治療として、わが国で開発され進歩してきた治療法です。具体的には、カテーテルを肝臓の動脈まで進め、癌を栄養する動脈を選択し、塞栓する治療法です。肝細胞癌は、肝動脈のみから栄養を受けますが、正常肝実質は門脈からも栄養を受けるため、肝動脈を塞栓することにより肝細胞癌のみが兵糧攻めの状態となり、壊死に陥ります。実際の手技は、足の付け根の動脈(大腿動脈)からカテーテルを入れ、肝動脈まで挿入し、造影剤を注入しながらCTや血管造影を撮影します。

〈症例〉肝細胞癌TACE

▲造影される巨大な腫瘤が認められます。マイクロカテーテルを腫瘍の栄養血管に挿入し、肝動脈塞栓術を行います。

 

▲肝動脈塞栓後、腫瘍濃染は消失し、腫瘍に造影剤の流入が見られず、治療が完了しました。

術前門脈塞栓術(PTPE)

肝臓に腫瘍があり、肝臓を切除する必要がある場合、肝切除後、残肝機能が著明に低下する可能性があります。そのため、残存させる肝臓を手術前に肥大させる目的で、術前に門脈を塞栓する治療を行います。
門脈を塞栓することにより、塞栓された肝臓は萎縮し、塞栓されていない肝臓は代償性に腫大します。切除する肝臓の門脈を塞栓することにより、残存予定の肝臓の体積が増大し、術後の残肝機能の上昇が得られ、術後肝不全を予防することが可能です。
門脈を塞栓しても、肝臓は肝動脈と門脈で栄養を受けているため、肝梗塞や肝不全になることはありません。門脈を塞栓された肝臓は徐々に萎縮します。
実際の手技は、経皮的に超音波ガイド下で門脈を穿刺し、カテーテルを門脈内に挿入し、造影剤を用いた血管造影やCTを行います。その後、切除予定の肝臓の門脈を塞栓物質を用いて、塞栓します。

〈症例〉PTPE

▲胆管癌で手術予定の患者さんです。経皮的に肝臓を穿刺して、カテーテルを門脈内に挿入し、門脈造影を施行ました。肝内の門脈が良好に描出されています。

 

▲門脈右枝をバルーンカテーテルで閉塞しながら、塞栓物質を注入し、門脈右枝を塞栓しました。

 

▲門脈右枝塞栓後の門脈造影です。門脈右枝は造影されず、治療を完遂できています。1か月後、肝切除が施行されました。

胃静脈瘤治療・肝性脳症治療(B-RTO)

腸管や脾臓から肝臓に流れ込む血管のことを「門脈」と言います。肝硬変になると、肝臓が硬くなり門脈の圧が上昇し、肝臓を迂回する側副血行路が発達します。側副路は、食道や胃の周囲を通って形成され、大きくなると食道静脈瘤や胃静脈瘤が形成されます。静脈瘤は破裂しやすく、出血するリスクがあり、特に胃静脈瘤から出血した場合は、致死率が高いため、破裂する前に治療が必要です。
また、食道や胃を経由せずに側副路が発達する場合があります。側副路の血流が増加すると、肝臓で代謝されるべき毒素が肝臓を通過せず全身に回ってしまい、肝性脳症が生じます。
胃静脈瘤も肝性脳症も治療方法はほぼ同じです。
実際の手技は、足の付け根の静脈(大腿静脈)からカテーテルを入れ、先端に風船のついたバルーンカテーテルを静脈内に挿入し、左腎静脈(もしくは、側副路の流出路)に誘導します。胃静脈瘤の流出路をバルーンで閉塞し、血流を遮断した状態で、カテーテルから硬化剤を注入し、静脈瘤(側副路)を血栓閉塞させます。

〈症例〉胃静脈瘤BRTO

▲胃後壁に胃内に突出する拡張した胃静脈瘤が認められます(矢印)。

 

▲胃静脈瘤の流出血管をバルーンカテーテルで閉塞しながら硬化剤を静脈瘤に注入し、胃静脈瘤を血栓化させます。

 

▲治療後、胃静脈瘤は血栓化し、造影効果は消失しております。

部分的脾動脈塞栓術(PSE)

肝硬変など何らかの原因で門脈圧が上昇すると、門脈につながる脾静脈の圧も上昇し、脾臓が腫大してきます。脾臓は主に古くなった血球をとらえ、破壊する機能を持っています。脾腫が生じると、脾機能が亢進し、血小板が減少します。血小板が減少すると出血傾向がでてきます。
脾動脈を塞栓すると、脾臓が壊死に陥り、脾機能が低下し、血小板が増加します。また、門脈に流れ込む血流が減るため門脈圧も低下することにより、腹水など門脈圧亢進に伴う症状も軽減します。

〈症例〉脾腫PSE

▲脾動脈造影で、画面に入らないぐらい大きくなった脾腫が認められます。

 

▲脾動脈塞栓後の血管造影です。脾臓の造影効果が部分的に消失しており、治療目的を達成しました。

経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術(TIPS)

門脈圧亢進により様々な症状が生じますが、その一つに難治性腹水があります。利尿剤など保存的治療でも改善されない場合に、この治療法が検討されます。
門脈と肝静脈との間に金属性のステントを留置し、門脈‐大循環短絡路を形成し、門脈圧を下げる方法です。門脈血が体循環へと流れ込むために、門脈圧が下がり難治性腹水など様々な症状の改善が期待できます。
実際の手技は、内頸静脈を穿刺し、肝静脈にカテーテルを進め、肝静脈から門脈を特殊な針で穿刺して、バルーンでその経路を拡張し、ステントを留置します。
ただし、この手技は保険適応ではありませんので、全て自費診療となります。

〈症例〉難治性腹水TIPS

▲治療完了後の血管造影です。肝静脈からの造影で、肝内から肝外門脈が描出されており、治療に成功しました。

 

▲治療のシェーマです。青い三つ叉の血管が肝静脈、橙色の血管が門脈系で、肝静脈と門脈の間にステントグラフト(網掛け構造)が留置されています。

関節慢性疼痛に対する治療(運動器カテーテル治療:TAME)

運動器の慢性疼痛への治療法としては、従来、保存的治療(薬物療法、理学療法)や手術療法が行われてきました。薬物療法には、消炎鎮痛剤や神経障害を改善する薬など症状改善のための薬剤が用いられています。理学療法は全身の主に筋肉の緊張や姿勢などにアプローチすることで疼痛症状を改善させることを目的として広く行われています。ただし、これらの一般的な保存的治療では満足に改善しない方が7割以上に上ることが報告されています。

運動器カテーテル治療(経動脈的微細血管塞栓術:TAME)は、慢性疼痛に対する新たな治療法として最近行われるようになり、注目されている治療法です。血管造影を行い、疼痛部分にできている異常な微細血管に塞栓物質を注入して閉塞させることにより、除痛を得る治療法です。慢性疼痛への治療法としては、2012年に日本で行われたのが最初で、以後、多くの方がこの治療を受けています。新たな治療の選択肢として期待される治療法です。

上顎洞癌に対する超選択的動注化学放射線療法

進行した上顎洞癌に対する治療方法として手術療法、抗癌剤と放射線治療を合わせた化学放射線療法がありますが、カテーテルを用いて癌の栄養血管に直接抗癌剤を流した上で放射線治療を行う超選択的動注化学放射線療法という治療が2000年代より脚光を浴び、手技・手法が洗練されてきています。日本ではJCOG1212という局所進行上顎洞癌に対する超選択的動注化学放射線療法の有用性を確かめる臨床試験の症例登録が既に終了しており、結果を待っているところです。当院もJCOG1212の参加施設であり、治療が可能です。

〈症例〉上顎洞癌

▲血管造影にて、上顎洞癌が強く染まっています(〇印)。

 

▲血管造影を行いながら撮影したCTです。腫瘍が造影されており(矢印)、腫瘍の栄養血管に抗癌剤を注入しました。

IVRの活用

緩和IVR

・上大静脈症候群ステント留置術
上大静脈症候群とは肺癌などの腫瘍により上大静脈が圧排され、顔面浮腫など様々な症状がでる病態です。右内頚静脈あるいは右大腿静脈からカテーテルを入れ、狭窄あるいは閉塞した上大静脈にステントを留置し、狭くなった上大静脈を広げることにより、症状の緩和を得る治療法です。保険適応になったことにより、当科でも積極的に行っています。

・腹腔神経叢ブロック
主に膵臓癌の神経浸潤により腹痛の増悪をきたしている病態に対して背中から針を刺し、直接神経に薬剤を注入することで腹痛の改善が得られます。

その他のIVR

・生検
診断のために、超音波やCTを用い、針を刺して組織を採取する方法です。肝臓、腎臓、腹腔内、後腹膜の腫瘤、リンパ節、骨、軟部病変などが対象となります。近年は必要に応じ、単なる細胞の診断だけでなく、遺伝子解析による治療薬の適応判断も行っています。
 

▲CTガイド下で、目的とする腫瘍に生検針を刺入し、組織を採取しました。

・ドレナージ
超音波やCTを用いて、体内にたまった膿や液体などに針を刺してチューブを留置し、体外に排出する治療法です。胸腔、腹腔、後腹膜、肝臓、胆嚢、胆管、腎臓、腸腰筋、椎間板などに生じた感染や炎症に伴う膿瘍、嚢胞、閉塞した管腔構造、感染した血腫、術後の胸水や腹水などが対象となります。嚢胞性疾患に関しては、留置したドレナージチューブから硬化剤を注入し、嚢胞を縮小させる硬化療法も行っています。
局所麻酔のみで行うことができ、皮膚の切開も小さい範囲で済むため手術と比較して体への負担が少ない治療です。
 

▲CTガイド下で、左大腰筋に形成された膿瘍にドレナージのチューブを挿入し、留置しました。

・CVポート留置
CVポートとは、皮下に埋め込む直径2~3cmの円盤状の構造をした中心静脈用のポートです。体外から皮下に埋め込まれた円盤状のタンク (ポート部分) を穿刺することにより、接続されたカテーテルを通じて中心静脈内に薬剤を注入することが可能です。癌治療のための抗癌剤や高カロリー輸液など、繰り返し薬剤を中心静脈内に投与可能です。カテーテルは鎖骨下静脈、内頸静脈、上腕尺側皮静脈、大腿静脈などから挿入され、ポート部分は胸部、上腕、大腿、腹部などの皮下に埋め込まれます。

・副腎静脈サンプリング
副腎静脈サンプリングとは、血液検査や臨床症状よりアルドステロン症と確定診断された方に、大腿静脈から左右の副腎静脈にカテーテルをそれぞれ挿入して採血を行い、病変が一側性か両側性か判定する検査です。採血の結果で、病変が一側性であることが確認できれば、片側の副腎を手術で摘出することが薦められます。一方、両側性と判定された時には、手術ではなく、薬物療法での治療が行われます。そのため、副腎静脈サンプリングは、手術を行うか否かを決定するのに非常に重要な検査となります。

・リンパ管造影
リンパ節廓清術などの手術を受けた後に、リンパ液が胸腔や腹腔内、骨盤内に貯留することがあり、リンパ瘻といいます。長期経過しても自然に治らない場合に、リンパ管造影を行い、リンパ管の破綻部位を調べます。多くは、両側鼠径部のリンパ節を穿刺し、リピオドールという造影剤を緩徐に注入し、リンパ管の破綻部位を同定します。

▲治療を担当する放射線科スタッフ