専門外来

粘膜疾患外来

口腔は咀嚼、嚥下、発音などの機能をつかさどる器官で、口腔粘膜により覆われています。当専門外来では口腔粘膜に症状を呈するさまざまな疾患を診査・診断・治療しています。口腔粘膜のみに症状が現れる疾患もあれば、全身的な疾患の1症状として現れる場合もあります。
口腔粘膜は歯や食物によって常に刺激され(物理的・化学的に)、口腔内には多種の口腔内常在菌が存在していることから感染を起こしやすい環境にあります。

口腔はご自身の目で直接見ることができる範囲が大きい臓器です。
例えば頬や舌、歯肉に
『赤い』・『えぐれている』 (炎症性病変・潰瘍・悪性腫瘍 など)、
『白い』  (角化性病変 など)、
『水ぶくれ』  (自己免疫性水疱性病変 など)
など表面に変化が現れます。
上記のような表面の変化をみつけたら、かかりつけ歯科医に相談するか当科の口腔粘膜疾患専門外来へ受診されることをお勧めします。
口腔粘膜疾患の種類は多岐にわたりますが、当外来においては血液検査・病理組織検査などを行い、確定診断と適切な治療の遂行につとめております。
また、歯科用金属のアレルギーや、全身的な疾患の1症状として口腔粘膜に異常が現れる場合もあります。必要に応じて皮膚科や内科など、他科と連携して治療にあたります。

炎症性病変

【アフタ性口内炎】(図1a、b)
口腔内では高頻度に認められる炎症です。白色の潰瘍で、周囲に赤みを伴います。うがい薬による口腔衛生状態の向上が必要です。症状に応じて副腎皮質ステロイドの噴霧薬や軟膏による対症療法もおこないます。

 

図1a:アフタ性口内炎

 
 

図1b:アフタ性口内炎

【ウイルス性口内炎】
ヘルペス性口内炎・帯状疱疹など、ウイルスの感染によって引き起こされる炎症です。抗ウィルス薬による治療をおこないます。

【口腔カンジダ症】(図2)
真菌(カビ菌)による粘膜の炎症です。口腔清掃の困難な状況の高齢者や免疫機能の低下した方の口腔内に好発します。抗真菌剤による治療をおこないます。

 

図2:口腔カンジダ症

【口腔扁平苔癬】(図3)
傷などの原因が存在しないのにもかかわらず粘膜に角化と炎症が生じてしまう疾患です。赤くなった粘膜の上に白いレースがかかったように見えるのが特徴的です。難治性であり、薬物による消炎などの対症療法を行います。中年以降の方に多く発生し、発生原因は不明で確立された治療法もありません。扁平苔癬は癌化する可能性は低いとされていますが、長期にわたり慎重な経過観察が必要です。確定診断には病変部を一部切除する病理組織検査が必要です。治療方針では、扁平苔癬は手術をすることはまれで、軟膏や内服薬で経過を観察します。また、過去に輸血を受けた方、肝臓に異常のある方に多く発生するという報告もあるため必要に応じて血液検査などを行ないます。

 

図3:口腔扁平苔癬

角化性病変

【口腔白板症】(図4a、b)
粘膜の表面が肥厚し、白色を呈する病態で舌・歯肉・頬粘膜などに発生します。癌化する可能性もあり、病理組織検査をおこなった上で慎重な経過観察もしくは外科的な切除が必要です。病変部が大きい場合などは入院して全身麻酔下に手術を行なう場合もあります。

 

図4a:口腔白板症

 
 

図4b:口腔白板症

自己免疫性水疱性病変

【尋常性天疱瘡・類天疱瘡】(図5)
自身の組織を守るべき自己免疫系のバランスが崩れ、自分の組織を攻撃してしまう自己免疫疾患です。自己免疫による粘膜への攻撃の結果、粘膜表面に水疱が生じます。血液検査や病理組織検査を行い、全身疾患と関係する場合も考慮して慎重に診断します。全身的な治療が必要になる場合には皮膚科と連携して行います。

 

図5:尋常性天疱瘡

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