専門外来

顎顔面インプラントセンター

インプラント治療とは?

 医療においては、体内に植え込む器具を総称して「インプラント」と言いますが一般的に歯科で扱われるインプラントとは「人工歯根」の呼称です。すなわち、インプラント治療とはこの人工歯根を用いて歯を作り、咬合機能や審美機能の回復を図ることを言います。インプラント治療が従来の歯科修復物と根本的に異なる点は、体内(顎骨内)に長期にわたり人工物を植え込み、また、それを植え込むための手術(埋入)を必要とする点です。現在、全世界のほとんどで使われている骨接合型インプラント(オッセオインテグレーションインプラント)は、成功すれば極めてすばらしい結果が得られることが科学的に証明されております。しかし、わが国で急速に進む超高齢社会を反映し、インプラントを必要とする患者さんは全身状態に何らかの問題を有していたり、顎骨の状態が極めて悪いことが多く、それらをしっかりと見極め安全にインプラント治療を施行するためには、高度な診療体制および治療技術が必要です。

東京医科大学顎顔面インプラントセンターの設立目的

 医科大学病院でなくては達成できない、安心で最先端なインプラント治療を提供することです。

どのようなインプラント治療を進めて行くか

 1.国際基準に則った科学的なインプラント治療の推進
 2.有病者における安全なインプラント治療の推進
 3.インプラントを応用した高度顎骨欠損患者の機能回復の推進
 4.再生医療など最先端の研究成果を応用したインプラント治療の実践

施設認定

 日本口腔インプラント学会認定研修施設
 日本顎顔面インプラント学会認定研修施設
 日本口腔外科学会認定研修施設
 日本有病者歯科医療学会認定研修施設

当科で使用するインプラントシステム

 現在、国内、国外をあわせて多数のメーカーからインプラントが開発・販売されておりますが、そのほとんどは素材に生体親和性が良いとされるチタンを用いています。
 当科では以下の基準に従い、ノーベルバイオケア社とアストラテック社をはじめとした複数のインプラントシステムを採用しております。
 ① 世界のどこででも修理や継続治療ができること。② 過去のたくさんの治療実績に裏付けられたデーターがあること。③ 一つの企業にとらわれないこと。
 また、過去に他院で埋入されたさまざまなインプラントに対するトラブルにも対応できる体制を構築しております。

インプラントセンターにおける治療の流れ

1.全身状態の把握
インプラント治療を行う全ての患者さんに血液検査を施行します。問題点があれば、関連医科診療科と綿密に連携し問題点を解決します。
2.隣接臓器との関係の把握
CT、MRI等により埋入部の顎骨と上顎洞、顎関節、周囲神経、血管等との関係を精査し、必要あれば前処置を行います(症例3参照)。
3.インプラントを埋入する土台である顎骨の精査
CTによる骨の量と質を診断し、適正な位置へのインプラント埋入をコンピュータシミュレーションソフトで解析します(症例2、3参照)。必要に応じ骨質に関し、さらに先端的な解析ソフトで詳細に解析します。
4.安全なインプラントの埋入
・医科大学病院内の診療科の特性を生かし、全身状態や隣接臓器に問題があっても他診療科とのチーム医療により万全のフォローアップ体制が可能です(症例2参照)。
・手術器具や使用機材の感染防御態勢は院内の中央手術室と同一の基準で行われます。
・全身状態・手術の大きさなどを考慮し、必要あれば入院や鎮静、全身麻酔などを行います。
・難症例に関してはコンピュータシミュレーションの結果に基づきガイド下手術(症例2参照)を行います。
5.治療後の定期的なメインテナンス
  ・専属の衛生士による徹底的な口腔内の管理を行います。
・インプラントだけでなく全身の状態も配慮し、その変化に応じた適切な管理が可能です。
・埋入したインプラントに関する情報を日本顎顔面インプラント学会が発行した国際インプラント手帳に記載し患者さんにお渡しします。世界のどこにいてもインプラント記録が分かります。

最新の研究成果に基づく大きな骨欠損に対する最先端の顎骨再建とインプラント治療

 腫瘍(癌)や外傷により顎が大きく欠損した症例に対しては、細胞増殖因子や吸収製トレーなどの研究成果(下記参照)を応用した先端的な再建法とその後のインプラント治療を推進しております。これらの手法は通常のインプラント治療における骨造成にも応用可能です。

Matsuo A et.al, Mandibular reconstruction using a tray with particulate cancellous bone and marrow and platelet rich plasma by an intraoral approach. Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, 69, 2011
Matsuo A et.al Bone quality of mandibles reconstructed with particulate cellular bone and marrow, and platelet-rich plasma. Journal of Cranio-Maxillofacial Surgery, 39 2011
Matsuo A et.al. Application of custom-made bioresorbable raw particulate hydroxyapatite/poly-L-lactide mesh tray with particulate cellular bone and marrow and platelet-rich plasma for a mandibular defect: evaluation of tray fit and bone quality in a dog model. Journal of Cranio-Maxillofacial Surgery, 2012
Chikazu D, et al. Cyclooxygenase-2 activity is essential for the osseointegration of dental implants. Int J Oral Maxillofac Surg, 36, 2007
Huang H, Chikazu D, et al, Parathyroid hormone induction of cyclooxygenase-2 in murine osteoblasts: Role of the calcium-calcineurin-NFAT pathway. J Bone Miner Res, 25, 2009
Chikazu D, et al, Improvement in wound healing by a novel synthetic collagen-gel dressing in genetically diabetic mice. Asian J Oral Maxillofac Surg, 22, 2010
Chikazu D, et al, Cyclooxygenase-2 activity is important in craniofacial fracture repair. Int J Oral Maxillofac Surg, 40, 2011
近津大地、等:臨床を目指して - 口腔外科領域の再生医療 「ティッシュ・エンジニアリング, 2006」 編集 田畑泰彦、岡野光夫、日本医学館、2006
近津大地. 咬合機能の回復-インプラント治療と骨造成について-. 東京医科大学雑誌, 69, 2011
松尾朗.遺伝子医学MOOK13号 患者まで届いている臨床再生誘導治療、海綿骨細片(PCBM)多血小板血漿(PRP)による顎骨および歯周組織の再生、田畑泰彦(編)、メディカル ドゥ、大阪、2009

[症例1]38歳、女性で、下顎骨にできた大きなエナメル上皮腫と言う腫瘍(A)を含む下顎骨を切除し、欠損した部分にチタン製のトレーと海綿腸骨、細胞増殖因子である多血小板血漿により顎骨を再建し、(B)、十分な骨が形成されました(C)。その後、歯の欠損に対し(D)5本のインプラントを埋入し咬合機能を回復しました(E)。現在、術後8年以上経過しておりますが、インプラント周囲の骨に吸収もなく良好に経過しております(F)。


全身的に問題のある患者さんのインプラント治療

 インプラント適応患者さんは中高年の方が多いため、高血圧や糖尿病など全身的な問題を有することも多く注意が必要です。

[症例2]64歳、男性で、多数の歯が欠損もしくは歯周病により保存不能でした(A)。全身的には高血圧と脳梗塞の既往があり、降圧剤と抗血小板薬を服用しておりました。手術は入院化・静脈内鎮静下でコンピューターシュミレーション(B)に基づいたガイドサージェリーを行い(C)、9本のインプラントを埋入し、骨量不足部には骨造成を行いました(D)。院内の内科と連携し抗血小板薬の投与に配慮しました。現在、術後8年以上経過しておりますが、インプラント周囲の骨に吸収もなく良好に経過しております(E,F)。


隣接臓器に問題のある問題のある患者さんのインプラント治療

上顎のインプラント治療では隣接する上顎洞までの距離があまりなく、しばしば骨の増量を行わなければなりません。このような場合、上顎洞が蓄膿症に罹患していることもあるので注意が必要です。当科では隣接臓器に関しても十分精査し、上顎洞に問題がある場合は耳鼻科等と連携も含め、それらの治療しっかり行った後、骨造成やインプラント治療を行います。

[症例3]症例は50歳女性で、両側の上顎臼歯部が欠損しておりました(A,B)。CTによる精査では、上顎洞までの距離が最低2.8mmしかありませんでした(C)。幸い上顎洞内に病変はなく、外来静脈内鎮静法で上顎洞挙上術と4本のインプラント埋入術を同時に行いました(D)。現在、術後2年経過しておりますが、骨吸収もなく良好な経過を示しております(E,F)。


担当医

近津大地主任教授
日本口腔外科学会専門医・指導医、日本顎顔面インプラント学会認定指導医、日本有病者歯科医療学会認定医・指導医、日本口腔インプラント学会会員など

古賀陽子講師
日本口腔外科学会専門医

渡辺正人臨床講師
日本口腔外科学会専門医

高橋英俊助教
日本口腔インプラント学会会員、日本口腔外科学会会員

河野通秀助教
日本口腔外科学会会員

米山勇哉助教
日本口腔インプラント学会会員、日本口腔外科学会会員

金修澤非常勤講師
日本口腔インプラント学会専門医、日本歯科補綴学会専門医

篠原健一郎非常勤講師
日本歯科麻酔学会専門医

外来診療日

[初診受け付け:午前9:00-11:00, 午後13:00-14:30]
   月(午後) 火(午後) 木(午前) 金(午前) 土(午前)  
渡辺 近津
高橋
近津
米山
篠原
高橋 近津
古賀
河野
米山
 

患者さんへ

*診療は病院2F歯科口腔外科・矯正歯科内で行っております。
*インプラント治療は基本的に自費診療になります。初診時の私費診療費は5250円(消費税込み)です。また、紹介状をお持ちでない方は、特定機能病院における選定療養費としてさらに5250円(消費税込み)が加算されます。
*腫瘍(癌)や外傷で大きく顎骨欠損されている方は保険適応となる場合があります。担当医にご相談ください。

患者さんへ

・インプラント埋入のみの依頼も可能です。(基本は当院使用インプラントシステムですが、貴院使用システムによる埋入も検討可能です。)全例に埋入結果のデータシートを添付します。(データーシートの内容:全身検査データー 、コンピューターシミュレーション結果、埋入部骨質評価、埋入後レントゲン写真 、埋入時、最終評価時ISQ値)
・症例検討カンファレンス(インプラント連携医承諾書)、勉強会をを隔週木曜日の夕方に開催しております。オープン化しており、どなたでも参加可能です。日程等の詳細に関しましては、当講座HPの「お知らせ」をご覧ください。
・インプラントを使用した顎顔面補綴治療も行っております。
・患者紹介に関するお問い合わせ、症例カンファレンスの参加希望、「相談希望用紙」に必要事項記入の上、医局にFAX(03-3342-1723)してください。

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