専門外来

SAS(睡眠時無呼吸症候群)外来

睡眠時無呼吸外来とは?

最近、新幹線の運転手が走行中に居眠りをし、駅を通過してしまった事件を契機に睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:頭文字をとって「サス」と呼びます)が世間の注目を集めるようになっています。この病気は、主に肥満を原因として、のどの空気の通り道(気道)が睡眠中に狭くなっておきる「閉塞型(OSAS)」と、気道は狭くならないけれども一定の周期で呼吸と無呼吸をくりかえす「中枢型(CSAS)」に分けられます。
SASと診断される方の大部分は「閉塞型」ですが、心臓の機能が落ちた状態(心不全)の方には「中枢型」の無呼吸が約30-40%の方で認められるとされています。

閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)

病状のメカニズムと症状

上に述べたようにSASの大部分をしめるタイプの無呼吸です。この病気は以下のようなメカニズムで起こります。

 (1)肥満、顎の小ささなどを原因に気道が狭くなる。
 (2)睡眠中は、気道がさらに狭くなる。
 (3)いびきをかく。
 (4)気道がさらに狭くなり、ついには閉塞してしまう。
 (5)無呼吸となる。
 (6)体内の酸素が猛烈に低下する。
   (窒息しているのと同じ状況です。)
 (7)そのままでは死んでしまうので、睡眠が浅くなり、
   呼吸が再開する。
 (8)酸素が十分に入ると、しばらくして(3)の状態へ戻る。
 (9)(3)~(7)を一晩中繰り返す。

このような状態のため、脳は深い睡眠をとることができません。簡単に言えば、患者さんご本人はまったく気づきませんが毎晩徹夜に近い状態となっているわけです。そのため、昼間に強烈な眠気や体のだるさが襲ってくることになります。新幹線の運転手はまさにこの状態だったと思われます。これに付随する症状として、

 (1)睡眠時間はとっているが、熟眠感がない
 (2)昼間、集中力が続かない
 (3)起床時に頭が痛い

といったものがおきてきます。また、この病気は肥満をもとにしておこることが多いため、高血圧、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病と密接に関連しています。事実、SASの患者さんは高血圧を合併する頻度が、普通の方に比べて1.5-3倍高くなり、狭心症、脳卒中などの動脈硬化に起因する病気も、約3倍多くなることがわかってきました。右記の項目に該当する方は、SASの可能性が高いといえます。

 (1)太りぎみで、首がみじかめ、あごが小さい。
 (2)家族、仕事仲間などから夜間のいびき、無呼吸を指摘されたことがある。
 (3)睡眠時間のわりに熟眠感がない。
 (4)昼間の仕事中や車の運転中に、耐え難い眠気に襲われることがある。
 (5)集中力が続かず、いつも疲れている。

診断

上に述べたようにSASの大部分をしめるタイプの無呼吸です。この病気は以下のようなメカニズムで起こります。

睡眠ポリソムノグラフィー
診断には、睡眠ポリソムノグラフィーという機械を用います。右の写真のような専用の部屋に1泊2 日の入院をしていただき、二十数か所にセンサーを取り付け、睡眠中の脳波、呼吸、心電図などを別室で検査技師が終夜モニターします。痛みを伴うモニターはありませんので極めて安全な検査で、ほとんどの方がお休みになれます。睡眠中の呼吸の状態、脳波などを専門の技師が解析し、無呼吸の有無、重症度を判定します。睡眠時無呼吸症候群の診断は、一般に10秒間の呼吸停止、あるいは呼吸の低下を「無呼吸、低呼吸」と定義し、これが1時間に何回認められたかによって重症度を判定しています。(無呼吸低呼吸指数:AHIといいます。)AHI≧5の場合に、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。5≦AHI<15を軽症、 15≦AHI<30を中等症、AHI≧30を重症と定義しています。
簡易型睡眠呼吸モニター
ご自宅で、いくつかのセンサーを患者さんご自身で取り付けていただき、一晩おやすみいただく検査です。翌日に機械を病院に持参いただき、呼吸、心拍数などの解析を行います。きわめて安全な検査ですが、脳波を計測していないので、あくまでスクリーニングとして活用されています。この検査でポリソムノグラフィーの必要性を判断することも多いです。

治療

生活習慣の是正
上に述べたように、この病気は肥満を原因にして起こることが多いため、減量が有効な治療になりますが、日中の眠気のため運動量が減少していることが多く、減量単独ではコントロールが困難なことが多いのが現実です。とはいっても糖尿病、高血圧などの生活習慣病も、肥満と密接な関係があるため、常日頃体重を増やさない努力は必要です。この他無呼吸の悪化要因である過度の飲酒、喫煙、睡眠薬の使用は控えるようにします。
経鼻的持続陽圧呼吸療法(nasal CPAP : シーパップと読みます)
CPAPは、一定の圧を加えた空気を鼻から送り込むことによって、気道の閉塞を取り除き、睡眠中の気道閉塞を防ぐ非常に有効な治療法です。OSASのほとんどの患者さんに有効であり、第一選択となる治療法です。原理は下の図のようになっていて、お休み前にご自身で機械を装着していただきます。治療効果はすぐに現れ、個人差はありますが、CPAP装着翌朝から気持ちのよいめざめと、昼間の眠気の改善が見られ、患者さんの生活の質(Quality of Life)の劇的な改善が得られます。また、OSASの方に合併する高血圧、耐糖能異常などの生活習慣病の改善効果も認められ、長期的にはOSAS患者様の脳卒中、心筋梗塞などの発症を減少させることがわかっています。保険適応がある治療法で、原則的に1ヶ月に1度の受診が必要となります。
手術による治療
耳鼻科医による手術による方法です。著しい扁桃肥大などは摘除することで著名な改善が得られることがあります。またせまくなった気道をひろげる一般的な手術は口蓋垂、口蓋扁桃、軟口蓋の一部を切除する口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(こうがいすいなんこうがいいんとうけいせいじゅつ:UPPP)です。OSASの方の半数程度に有効とされていますが、再発や術後の喉の痛み、鼻声などの合併症もあり、第一選択ではありません。また、あごが特に小さい方には口腔外科医によりあごを前方に出し、大きくする手術が行なわれることもあります。
マウスピースによる治療
主に軽症の患者さんに行う治療です。お休みになる際に口の中に装着していただき、あごと舌を前方に固定することで気道の閉塞を防ぎます。比較的軽症のOSASに適応がありますが歯の本数の少ない人や、あごの関節に問題のある方は装着できないこともあります。専門の口腔外科医による作成が必要です。
現時点では、睡眠時無呼吸症候群を根治させることは難しいですが、生活習慣の改善による減量と伴に、「血圧を下げる薬を飲む」のと同じ感覚で治療を継続していただくことが重要です。

当院では、毎週木曜日に予約制の睡眠時無呼吸外来を行なっております。
外来予約はお電話(03-3342-6111)、または直接内科外来受付にお願い申し上げます。
内科、耳鼻科、歯科口腔外科などから多角的な治療戦略を考えていきます。予約制ですので、当日の受診はできませんので、あらかじめご了承ください。

中枢型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)

病状のメカニズムと症状

閉塞型と異なり、気道の閉塞なしに呼吸が停止するタイプの無呼吸です。いくつかのタイプに分けられますが、心不全の患者さんに認められる無呼吸は、「チェーンストークス型無呼吸」とよばれる特徴的な中枢型無呼吸です。閉塞型にくらべ、いびき、昼間の眠気などの自覚症状が少ないことも特徴です。病気のメカニズムは不明なことも多いのですが、心不全により、呼吸中枢への血流の低下、二酸化炭素への過剰反応にともなう頻呼吸などが原因とされています。慢性心不全の30-40%の方に見られるとされていて、この異常呼吸のある場合はない場合にくらべて、一見心臓の機能が同じようでも余命に差がでることがわかってきました。

診断

閉塞型同様、睡眠ポリソムノグラフィー、簡易型無呼吸モニターなどを用いて診断します。チェーンストークス型の中枢性無呼吸は、下の図のようにまったく呼吸をしていない状態(1)胸も腹も動いていないので、完全に呼吸が停止しています)と、だんだん呼吸が強く早くなってやがて止まる(2)無呼吸による酸素飽和度の低下(3)を周期的に繰り返す非常に特徴的な呼吸をします。重症度の判定は閉塞型同様、無呼吸低呼吸指数を用いて行います。

治療

治療の目的は、この異常呼吸を是正して余命をのばし、患者さんの生活の質を改善させることにあります。現在のところ、閉塞性無呼吸に対するCPAP療法ほどの確立された治療はありませんが、以下のような方法が行われています。

CPAP
閉塞性同様、就寝時にCPAPを行うことで無呼吸と酸素飽和度の低下を防ぎます。海外では、この治療により、心移植をうけなければならない重症の心不全患者の心移植までの時間を延ばした、という成績があります。しかし、中枢性無呼吸の場合、閉塞性に比べて昼間の眠気、だるさなどの自覚症状があまりないため、継続して機械を使用していただけないことも多いのが現状です。
在宅酸素療法
就寝時に酸素を鼻チューブから吸入していただくだけで、CPAP同様無呼吸が消失することがわかっています。CPAPに比べ簡便にできるため、継続性がよく患者さんへの負担が少ないことが最も大きなメリットです。現在のところ、CPAPのような余命を改善させる報告はありませんが、昼間の活動性の向上(息切れ、倦怠感の改善など)があったことが報告され、余命の改善効果については、今後の研究結果が待たれているところです。なお、平成16年4月から慢性心不全に対する治療として保険適応となりました。

現在のところ、どちらの治療がより優れているかという結論は出ていないため、進行中の臨床試験もあります。
当院では、毎週木曜日に予約制の睡眠時無呼吸外来を行なっております。
外来予約はお電話(03-3342-6111)、または直接内科外来受付にお願い申し上げます。
内科、耳鼻科、歯科口腔外科などから多角的な治療戦略を考えていきます。予約制ですので、当日の受診はできませんので、あらかじめご了承ください。

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