- トップ
- ›
- 医局紹介
- ›
- 診療科概要
口腔外科とは口腔、歯、顎骨およびその隣接組織の全ての外科的疾患、外傷、発育異常を取り扱う専門分野であると定義されています。その歴史は西暦前のエジプト時代までさかのぼることができますが、わが国における口腔外科の歴史については、口腔外科的疾患は主として本道(のちの内科)から分かれて薬物療法を行った歯口科医よりも、むしろ瘍科医(外科医)によって扱われていたと思われ、ご存知華岡青洲(1760-1835)の弟子が著した「瘍科秘録」には唇裂、上顎癌、舌癌などの外科手術例や抜歯術などが記載されています。口腔外科学は臨床医学のなかにあって、すくなくとも明治初期までは一般外科の一つとして行われていましたが、次第に歯学関係者も参画し、今では医学と歯科医学が密接に関わる重要な領域に発展してきました。そもそも口腔には、「食べる」「しゃべる」「豊かな表情を作る」など、有意義な人生を送るための必須不可欠な機能があり、高齢化が急速に進んでいるわが国では、口腔の医療はますます重要になってきています。QOLに直接関わるやりがいのある領域であり、まさに21世紀に向けての必要不可欠の学問でもあります。
東京医科大学口腔外科学分野は、昭和21年に東京医科大学病院(淀橋病院から改称)に歯科が設置され、上野 正氏(元東京医科歯科大学名誉教授)が初代科長として就任された時までさかのぼります。実に70年以上にわたる歴史と伝統を有した診療科です。現在、当科では、臨床においては顎変形症などについて手術、顎顔面骨骨折の整復、唇顎口蓋裂の矯正治療および顎矯正手術、口腔癌の外科的治療や化学療法、またデンタルインプラントを用いた歯科補綴治療などを行っています。研究においては口腔再建における再生医療の基礎的・臨床的研究、口腔癌における診断・治療の基礎的研究、睡眠時無呼吸症候群における顎顔面形態からのアプローチに関する臨床的研究、舌痛症など慢性疼痛の発症機序や治療に関する研究など、歯科口腔外科で扱われる臨床症例と密接に関連した研究を行っています。また、当科は社団法人日本口腔外科学会研修施設でもあり、口腔外科専門医・指導医7名で、口腔外科の専門的知識と経験を有する歯科医師の養成にも力を入れています。現在、非常勤、大学院生を含め医局員は80名を超え、臨床・教育・研究に情熱を傾け、口腔外科学分野におけるリーダーとなるべく日々研鑽に励んでいます。
東京医科大学医学部 口腔外科学分野主任教授
東京医科大学病院 歯科口腔外科科長
近津大地
基本方針を考える上で、わが国の医療の現状を正確に把握しなくてはいけません。高齢化が急速に進んでいるわが国では、口腔の医療はますます重要になってきています。そもそも口腔には、「食べる」「しゃべる」「豊かな表情を作る」など、有意義な人生を送るための必須不可欠な機能があります。また、口腔は感染の門戸でもあり、口腔衛生状態が感染性心内膜炎や誤嚥性肺炎などの循環器系・呼吸器系疾患や頭頸部外科手術・消化器外科手術の術後合併症と密接に関連することも明らかとなっています。よって、医学部学生に対する歯学教育では、将来どの分野の医師になろうとも、良質な医療を提供する上で有用な歯科口腔外科疾患の診断と治療および健康科学の知識の習得を目標とした教育を行い、興味を持って理解できる講義を展開しています。研修医および若手口腔外科医の教育におきましては、抄読会や勉強会、プログレスレポートを行うとともに、手術前および手術後のカンファレンスにおいて口腔外科手術全般について指導を行っています。
手術手技の指導においては、将来口腔外科の専修医や専門医の取得が可能となるように、各種手術についての指導を行っています。具体的には、顎変形症などについて手術、顎顔面骨骨折の整復、唇顎口蓋裂の矯正治療および顎矯正手術、口腔癌の腫瘍切除術、デンタルインプラントを用いた歯科補綴治療などの指導を、教授・准教授・講師陣が指導しています。大学院教育では、骨代謝学や創傷治癒を基礎とした顎骨再建や口腔腫瘍を主な研究課題とし、基礎医学にも精通する臨床研究者の育成を目標としています。この目標達成のために、学内外、国内外を問わず他の研究施設との交流を活性化し、各大学院生が自らの手で様々な研究手法を体得しつつ、将来に繋がる研究ネットワークを構築する機会を提供しています。
近年では病院内におけるリスクマネージメントが重要な業務となっております。リスクマネージメントについては、日常的にその意義を常に心がけておくべきものであり、安全な業務遂行が習慣となるよう指導する必要があります。このため病棟管理および手術時のリスクマネージメントについて、特に若手歯科医師を中心に指導を行っています。さらに、若手歯科医師の教育においては臨床のみならず可能な限り基礎的な研究にも参加するように指導を行っています。
外来診療では補綴治療や矯正・歯科治療を始めとする歯科治療に重点を置いています。歯科診療は医学部歯科口腔外科にとって非常に重要な分野です。積極的な口腔ケアが耳鼻咽喉科・消化器外科・血液内科・呼吸器内科領域等の様々な手術・治療の経過に大きな影響を及ぼすことが明らかとなっています。また、我が国は超高齢化社会を迎え、国民病ともいえる歯周病に対する治療やデンタルインプラントのニーズが高まってきています。20年ほど前に比べ、疾病構造は大きく変化し、疾患のパラダイムシフトに対応した歯科治療体制の構築が必要と強く考えています。院内患者の口腔ケア、歯科一般の治療に力を注ぐとともに、地域歯科医師会との連携を強化し、開業医を対象に様々な口腔外科の講習会や口腔がん検診なども積極的に取り組んでいます。入院診療では、歯科医師としてのアイデンティティーを大切にし、歯科口腔外科と咬合再建に力を入れています。具体的には、咬合再建を目的として顔面骨の骨切りを行う顎変形症手術や再建された顎骨へのインプラントによる咬合再建に力を入れています。また、口腔がんに関しましては耳鼻咽喉科、形成外科、放射線科、病理部と、口唇口蓋裂に関しましては小児科、形成外科、耳鼻咽喉科、産科・婦人科といった関連各科とチーム医療を実践することで、患者のQOL向上に寄与しています。
大正5年 |
日本医学専門学校の学生約450名が同盟退学し、東京医学講習所開設。 |
大正7年 |
東京医学専門学校設立認可。 |
昭和6年 |
附属淀橋診療所(後に博済病院を統合し、淀橋病院に改称)開設。 |
昭和21年 |
淀橋病院内に歯科設置。東京医科大学設立が認可され、附属淀橋病院を東京医科大学病院に改称。上野 正氏(元東京医科歯科大学名誉教授)が専門部助教授として初代科長に就任。 |
昭和26年 |
池沢 基講師が第2代科長に就任。 |
昭和30年 |
学制改革による6年制医科大学の設置が認可。 |
昭和32年 |
大学院の設置が認可。 |
昭和37年 |
内田安信講師が第3代科長に就任。 |
昭和41年 |
歯科口腔科学教室として昇格発足。 |
昭和45年 |
内田安信助教授が教授に昇任。東京医科大学口腔外科学講座発足。 |
昭和48年 |
東京医科大学霞ヶ浦病院(後に東京医科大学茨城医療センターに改称)に歯科口腔外科開設。 |
昭和52年 |
日本口腔外科学会認定医制度指定研修機関に指定。 |
平成4年 |
東京医科大学八王子医療センターに歯科口腔外科開設。 |
平成7年 |
千葉博茂定員外教授が第2代主任教授に就任。 |
平成22年 |
近津大地氏が第3代主任教授に就任。 |