専門外来

顎顔面インプラントセンター

歯を喪失された方に対するデンタルインプラント(人工歯根)は、近年広く普及し、一般的な歯科医療の一つとなりつつあります。当科では、2013年5月より顎顔面インプラントセンターを設立し、これまで以上に充実した診療体制の提供を開始しました。
当センターの特長は、医科大学病院の特性を生かし、複数疾患を持つ患者さんのインプラント治療の対応も可能な点です。全身状態や隣接組織に対し十分に配慮したうえ、最先端の研究成果に基づいた科学的で安全な治療を実施します。

インプラント治療とは?

 医療においては、体内に植え込む器具を総称して「インプラント」と言いますが一般的に歯科で扱われるインプラントとは「人工歯根」の呼称です。すなわち、インプラント治療とはこの人工歯根を用いて歯を作り、咬合機能や審美機能の回復を図ることを言います。インプラント治療が従来の歯科修復物と根本的に異なる点は、体内(顎骨内)に長期にわたり人工物を植え込み、また、それを植え込むための手術(埋入)を必要とする点です。現在、全世界のほとんどで使われている骨接合型インプラント(オッセオインテグレーションインプラント)は、成功すれば極めてすばらしい結果が得られることが科学的に証明されております。しかし、わが国で急速に進む超高齢社会を反映し、インプラントを必要とする患者さんは全身状態に何らかの問題を有していたり、顎骨の状態が極めて悪いことが多く、それらをしっかりと見極め安全にインプラント治療を施行するためには、高度な診療体制および治療技術が必要です。

東京医科大学顎顔面インプラントセンターの設立目的

 医科大学病院でなくては達成できない、安心で最先端なインプラント治療を提供することです。

どのようなインプラント治療を進めて行くか

 1.国際基準に則った科学的なインプラント治療の推進
 2.有病者における安全なインプラント治療の推進
 3.インプラントを応用した高度顎骨欠損患者の機能回復の推進
 4.再生医療など最先端の研究成果を応用したインプラント治療の実践

施設認定

 日本口腔インプラント学会認定研修施設
 日本顎顔面インプラント学会認定研修施設
 日本口腔外科学会認定研修施設
 日本有病者歯科医療学会認定研修施設

当科で使用するインプラントシステム

 現在、国内、国外をあわせて多数のメーカーからインプラントが開発・販売されておりますが、そのほとんどは素材に生体親和性が良いとされるチタンを用いています。
 当科では以下の基準に従い、世界シェアNo.1であるストローマン社をはじめとする複数のインプラントシステムを採用しております。
 ① 世界のどこででも修理や継続治療ができること。
 ② 過去のたくさんの治療実績に裏付けられたデータがあること。
 ③ 一つの企業にとらわれないこと。
 また、過去に他院で埋入されたさまざまなインプラントに対するトラブルにも対応できる体制を構築しております。

インプラントセンターにおける治療の流れ

1.初診
当科初診を受診していただき、患者さんが希望する治療方針を聴取し全身状態や口腔内の状態を確認し、インプラント治療が適しているかをスクリーニングします。
2.全身状態の把握
当センターを受診していただき、初診で聴取した内容を精査します。インプラント治療を行う全ての患者さんの全身状態を把握し、必要な症例では血液検査を施行します。問題点があれば、関連医科診療科と綿密に連携し問題点を解決します。
3.隣接臓器との関係の把握
CT、MRI等により埋入部の顎骨と上顎洞、顎関節、周囲神経、血管等との関係を精査し、必要があれば前処置を行います(症例3参照)。
4.インプラントを埋入する土台である顎骨の精査
CTによる骨の量と質を診断し、適正な位置へのインプラント埋入をコンピュータシミュレーションソフトで解析します(症例2、3参照)。必要に応じ骨質に関し、さらに先端的な解析ソフトで詳細に解析します。
5.安全なインプラントの埋入
・医科大学病院内の診療科である特性を生かし、全身状態や隣接臓器に問題があっても他診療科とのチーム医療により万全のフォローアップ体制が可能です(症例2参照)。
・手術器具や使用機材の感染防御態勢は院内の中央手術室と同一の基準で行われます。
・全身状態・手術の大きさなどを考慮し、必要があれば入院や鎮静、全身麻酔などを行います。
・難症例に関してはコンピュータシミュレーションの結果に基づきガイド下手術(症例2参照)を行います。
6.治療後の定期的なメインテナンス
  ・専属の歯科衛生士による徹底的な口腔内の管理を行います。
・インプラントだけでなく全身の状態も配慮し、その変化に応じた適切な管理が可能です。

最新の研究成果に基づく大きな骨欠損に対する最先端の顎骨再建とインプラント治療

 腫瘍(癌)や外傷により顎が大きく欠損した症例に対しては、細胞増殖因子や吸収製トレーなどの研究成果(下記参照)を応用した先端的な再建法とその後のインプラント治療を推進しております。これらの手法は通常のインプラント治療における骨造成にも応用可能です。

【論文】
○羽鳥 綾乃、藤居 泰行、菅野 勇樹、吉田 和正、近津 大地、宮澤 利明:カスタムメイドロケーターアバットメントを用いたインプラントオーバーデンチャーの1例. 日本顎顔面インプラント学会誌 2024年
○中村香萌子、池畑直樹、金子児太郎、佐藤麻梨香、藤居泰行、三木 惠、鈴木勘介、清水勇樹、濵田勇人、近津大地:血液・凝固系疾患を有する患者に対し医科と連携してインプラント埋入術を施行した2例. 第28回日本顎顔面インプラント学会総会・学術大会、2024年
○松尾 朗:顎骨再建に対する広範囲顎骨支持型装置の適応. 日本顎顔面インプラント学会誌 2022年
○Yasuyuki Fujii, Ayano Hatori, Sakura Minami, Yuki Kanno, Hayato Hamada, Toshiaki Miyazawa, and Daichi Chikazu: Characteristics and risk factors for the fracture of one-piece implants. Journal of Maxillofacial and Oral Surgery. 2023
○Yuki Kanno, Hideto Saijo, Yoshiyuki Mori, Kazuto Hoshi, Daichi Chikazu, and Yoko Kawase-Koga. A case of occlusal reconstruction using dental implants after Le Fort I osteotomy simultaneously with maxillary sinus floor augmentation: Require to preserve the maxillary sinus membrane? Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine, and Pathology. 2022
○Takuya Murata, Hidetoshi Takahashi, Yoko Kawase-Koga, Daiki Yamakawa, Daichi Kohinata, and Daichi Chikazu: Elucidation of the relationship between peri-implantitis and fluoroide. A correlation study. Journal of Hard Tissue Biology. 2021
○Akira Matuso, Hayato Hamada, Hidetoshi Takahashi, and Daichi Chikazu: Long-term structural changes and outcomes of implants in particulate cellular bone and marrow reconstructed jawbone. Clin Implant Dent Relat Res. 2019
○Akira Matsuo, Hayato Hamada, Hidetoshi Takahashi, Ayako Okamoto, Hiroshi Kaisei, and Daichi Chikazu.: Evaluation of dental implants as a risk factor for the development of bisphosphonate-related osteonecrosis of the jaw in breast cancer patients. Odontology, 2016
○Akira Matsuo, Hidetoshi Takahashi, Harutsugi Abukawa, Daichi Chikazu: Application of custom-made bioresorbable raw particulate hydroxyapatite/poly-L-lactide mesh tray with particulate cellular bone and marrow and platelet-rich plasma for a mandibular defect: evaluation of tray fit and bone quality in a dog model. Journal of Cranio-Maxillofacial Surgery, 2012
○Akira Matsuo, Hiroshige Chiba, Jun Toyoda, Harutsugi Abukawa, Ko Fujikawa, Masako Tsuzuki, Masato Watanabe: Mandibular reconstruction using a tray with particulate cancellous bone and marrow and platelet rich plasma by an intraoral approach. Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, 69, 2011

【学会発表】
◯金子児太郎、池畑直樹、吉田昂司、羽鳥綾乃、村田拓也、河野通秀、近津大地:自家製サージカルガイドを用いてインプラント埋入前の異物を低侵襲で除去を行った1例;第29回日本顎顔面インプラント学会総会・学術大会、2025年
◯大場英典、金子児太郎、濵田勇人、近津大地、松尾 朗:歯性上顎洞炎治療後に上顎にインプラント治療する際の工夫;第44回日本口腔インプラント学会関東・甲信越支部学術大会、2025年
◯三木 惠、松尾一郎、鈴木勘介、小田陽菜乃、近津大地、松尾朗:PCBMを用いたインプラント治療における長期経過を見た後ろ向き研究;第29回日本顎顔面インプラント学会総会・学術大会、2025年
◯小川 隆、瀬戸晥一、長谷川温、近津大地:知的障害者に対してインプラント埋入術を施行した1例;第29回日本顎顔面インプラント学会総会・学術大会、2025年
◯松尾一郎、三木 惠、鈴木勘介、大場英典、毛利 環、近津大地、松尾朗:先天部分無歯症の姉妹に対して、矯正歯科医と連携した広範囲顎骨支持型装置の治療経験;第29回日本顎顔面インプラント学会総会・学術大会、2025年
◯中村香萌子、池畑直樹、金子児太郎、佐藤麻梨香、藤居泰行、三木 惠、鈴木勘介、清水勇樹、濵田勇人、近津大地:血液・凝固系疾患を有する患者に対し医科と連携してインプラント埋入術を施行した2例;第28回日本顎顔面インプラント学会総会・学術大会、2024年
◯Megumu Miki, Hayato Hamada, Kotaro Kaneko, Yuko Fujii, Marika Sato, Naoki Ikehata, Michihide Kono, On Hasegawa, and Daichi Chikazu: Analysis of Semaphorin expression in areas of bone resorption in peri-implantitis caused by titanium and zirconia implants; IAO-EAO-SldP joint meeting 2024. 2024.10.24-26 (Milan, Italy).
◯池畑直樹、金子児太郎、藤居泰行、佐藤麻梨香、山川 樹、濵田勇人、河野通秀、長谷川温、近津大地:Extended Reality (XR)とSimilar Real Patient Model (SRPM)を用いた新規歯科インプラント手術トレーニング手法;第27回日本顎顔面インプラント学会総会・学術大会、2023年
◯山川 樹、池畑直樹、濵田勇人、近津大地、松尾 朗:L-乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)ピン、吸収性メンブレンと骨造成法を併用したインプラント埋入術の提案;第52回(公社)日本口腔インプラント学会学術大会、2022年
◯池畑直樹、金子児太郎、杉崎リサ、河野通秀、濵田勇人、長谷川温、近津大地:Extended Reality(XR)とSimilar Real Patient Model(SRPM)を用いたサイナスリフト症例;第26回日本顎顔面インプラント学会総会・学術大会、2022年
◯Yoko Kawase-Koga, Jin Chikira, Daiki Yamakawa, Yuri Matsui, Megumu Miki, Ayano Hatori, Sakura Minami, Yuki Kanno, Eva Dohle, Sarah AI-Maawi, Robert Sader, Daichi Chikazu, and Shahram Ghanaati: Bone Regeneration potential of human dental pulp stem cells with platelet-rich fibrin in vitro;第26回日本顎顔面インプラント学会総会・学術大会、2022年

【著書・共書】
◯松尾朗: 全身的診察・検査「インプラントの専門医を取得するための研修マニュアル」:クインテッセンス出版株式会社
◯松尾 朗:上顎欠損と下顎欠損の分類「再建顎骨とインプラントによる治療指針 -広範囲顎骨支持型装置マニュアル- 公益法人 日本顎顔面インプラント学会編」:ゼニス出版
◯松尾 朗:チタンメッシュトレーと海綿、腸骨再編移植による顎骨再建と広範囲顎骨支持型装置及び補綴治療(インプラント治療)「再建顎骨とインプラントによる治療指針 -広範囲顎骨支持型装置マニュアル- 公益法人 日本顎顔面インプラント学会編」:ゼニス出版

[症例1]38歳、女性で、下顎骨にできた大きなエナメル上皮腫と言う腫瘍(A)を含む下顎骨を切除し、欠損した部分にチタン製のトレーと海綿腸骨、細胞増殖因子である多血小板血漿により顎骨を再建し、(B)、十分な骨が形成されました(C)。その後、歯の欠損に対し(D)5本のインプラントを埋入し咬合機能を回復しました(E)。現在、術後8年以上経過しておりますが、インプラント周囲の骨に吸収もなく良好に経過しております(F)。


全身的に問題のある患者さんのインプラント治療

 インプラント適応患者さんは中高年の方が多いため、高血圧や糖尿病など全身的な問題を有することも多く注意が必要です。


[症例2]64歳、男性で、多数の歯が欠損もしくは歯周病により保存不能でした(A)。全身的には高血圧と脳梗塞の既往があり、降圧剤と抗血小板薬を服用しておりました。手術は入院化・静脈内鎮静下でコンピューターシュミレーション(B)に基づいたガイドサージェリーを行い(C)、9本のインプラントを埋入し、骨量不足部には骨造成を行いました(D)。院内の内科と連携し抗血小板薬の投与に配慮しました。現在、術後8年以上経過しておりますが、インプラント周囲の骨に吸収もなく良好に経過しております(E,F)。


隣接臓器に問題のある問題のある患者さんのインプラント治療

 上顎のインプラント治療では隣接する上顎洞までの距離があまりなく、しばしば骨の増量を行わなければなりません。このような場合、上顎洞が蓄膿症に罹患していることもあるので注意が必要です。当科では隣接臓器に関しても十分精査し、上顎洞に問題がある場合は耳鼻科等と連携も含め、それらの治療しっかり行った後、骨造成やインプラント治療を行います。

[症例3]症例は50歳女性で、両側の上顎臼歯部が欠損しておりました(A,B)。CTによる精査では、上顎洞までの距離が最低2.8mmしかありませんでした(C)。幸い上顎洞内に病変はなく、外来静脈内鎮静法で上顎洞挙上術と4本のインプラント埋入術を同時に行いました(D)。現在、術後2年経過しておりますが、骨吸収もなく良好な経過を示しております(E,F)。


担当医

近津大地 主任教授
日本口腔外科学会専門医・指導医、日本顎顔面インプラント学会認定専門医・指導医、日本有病者歯科医療学会認定医・指導医、日本口蓋裂学会口唇裂・口蓋裂認定師(口腔外科分野)、日本顎変形症学会認定医・指導医(口腔外科)、日本口腔インプラント学会会員など

金子児太郎 講師
日本口腔外科学会専門医、日本顎顔面インプラント学会会員、日本口腔インプラント学会会員など

佐藤麻梨香 講師
日本口腔外科学会専門医、日本アンチエイジング歯科学会認定医など

羽鳥綾乃 助教
日本口腔外科学会認定医、日本顎顔面インプラント学会会員など

松尾 朗 教授(茨城医療センター)
日本口腔外科学会認定口腔外科専門医・指導医、日本口腔インプラント学会暫定指導医、日本顎顔面インプラント学会指導医など

高橋英俊 非常勤講師
日本顎顔面インプラント学会専門医、日本口腔科学会認定医・指導医、日本睡眠歯科学会認定医・指導医、日本口腔外科学会会員、日本口腔インプラント学会会員など

村田拓也 非常勤講師
日本口腔外科学会認定医、日本顎顔面インプラント学会会員、日本口腔インプラント学会会員など

吉田昂司 大学院生
日本口腔外科学会認定医、日本顎顔面インプラント学会会員など

篠原健一郎 非常勤講師(静脈内鎮静担当)
日本歯科麻酔学会専門医

酒井有沙 非常勤講師(静脈内鎮静担当)
日本歯科麻酔学会専門医

外来診療日

初診受付時間:午前8:00-11:00
 
(第1/3/5)
 
江越 美空 近津 大地 佐藤 麻梨香 金子 児太郎 金子 児太郎 羽鳥 綾乃  

 ※当科が始めての方は、初回は初診にて診察後、次回以降に顎顔面インプラントセンターの受診となります。

 当センター医師の診察日は以下の通りとなります。
  木曜日:近津 大地、吉田 昂司
  金曜日:高橋 英俊、村田 拓也、羽鳥 綾乃
  土曜日:金子 児太郎、佐藤 麻梨香

患者さんへ

*診療は病院3F歯科口腔外科・矯正歯科内で行っております。
*インプラント治療は基本的に自費診療になります。当センター初回受診時の相談料は5500円(消費税込み)です。また、紹介状をお持ちでない方は、特定機能病院における選定療養費としてさらに7700円(消費税込み)が加算されます。
*腫瘍(癌)や外傷で大きく顎骨欠損されている方は保険適応となる場合があります。担当医にご相談ください。

医療機関の方々へ

・インプラント埋入のみの依頼も可能です。但し、当センター使用のインプラントシステムとなります。

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