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抄読会 2018/11/5

投稿者 : HP管理者

カテゴリ : お知らせ

本日の抄読会では、双極性障害の自殺の発生頻度、危険因子、生物学的相関、予防的アプローチについて系統的レビューで検討した論文が取り上げられました。所定の手続きに基づいた文献検索の結果、双極性障害患者の25%〜50%が生涯にわたって少なくとも1回は自殺を試み、8%〜19%が自殺を完遂すると推定されました。また、双極性障害では心血管疾患による死亡率が上昇することも示されました。さらに、双極性障害の自殺のリスク要因としては、発症年齢の低さ、過去の自殺企図歴、自殺企図の家族歴、境界性パーソナリティ障害および物質使用障害の併存、絶望感であることが示されました。また、危機介入の必要性のある徴候としては、自傷行為をすると脅す、自殺の方法(銃弾や凶器など)を求める、死について話したり書き込むことが挙げられました。治療に関しては、リチウムの投薬が双極性障害における自殺企図および完遂のリスクを減少させるために強いエビデンスがあるとされ、反対に、抗けいれん薬の使用による自殺リスクの減少についてのエビデンスは乏しいことが示されました(2014年時点)。
本論文の抄読を受けて、改めて、双極性障害では自殺リスクが高いこと、危険因子や防御因子が多く回避可能な事象であることが再確認されました。感情調節の困難さや生活リズムの乱れ安さが症状の中核をなす双極性障害であるからこそ、危険因子を早急に察知する必要性と防御因子を伸ばして再発を防止する視点が改めて必要であることが再認識されました。
本論文の抄読を受けて、心疾患のリスクが高いのはリチウムの使用といった身体への薬理作用と関係があるのか?また、実際の処方では何を使用し、どういうリスクがあるのか?について医局内で再確認する契機となりました。

Latalova et al. Suicide ㏌ bipolar disorder: A review. 2014 Psychiatr Danub 26(2):108-114. PMID: 24909246