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抄読会 2018/8/27

投稿者 : HP管理者

カテゴリ : お知らせ

本日の抄読会では、韓国において、小児期の逆境体験が成人期の抑うつ症状の有病率と発症率にどのように影響しているかを検討した論文が取り上げられました。包含基準を満たし除外基準に合致しなかった一般成人8563名を対象に前方視的調査を行った結果、有病率において、17歳以下の時点での逆境体験(両親の死、両親の離婚、金銭的問題による学校教育の中断、金銭的問題による親族の家での成育)が、成人期の抑うつ症状と有意に関連していることが示されました。また発病率において、学校教育の中断(OR 1.55, 95% CI 1.32 to 1.82)と両親の離婚( OR 1.65 95% CI 1.00 to 2.71)が成人期の抑うつ症状と関連があることが示されました。さらに、年齢層別分析の結果、高齢者(60-98 )の抑うつ症状と両親の離婚の影響に有意差が認められなかったものの、それぞれの年代で逆境体験と抑うつ症状の関連が認められました。以上のことから、小児期の逆境体験は成人期の抑うつ症状の有病率と発生率に関連しており、両親の離婚と金銭的問題による親族の家での成育の抑うつ症状に対する影響には、性差があることが示唆されました。本論文の抄読を受けて、当科では、本論文において明確な診断はされておらず抑うつ症状の測定のみであることから、どういった意味合いでprevalenceincidenceを使い分けているのか、CES-D9点というのはどのような臨床像に当たるのかについて、確認と議論がなされました。また本研究参加者の社会的な背景を読み取ると日本の文化とは大きく違いがあるようにみられたため、文化差の考慮の必要性について疑問が残りました。

Kim et al. Association between childhood adversities and adulthood depressive symptoms in South Korea: results from a nationally representative longitudinal study. BMJ Open. 2013 3(7). pii: e002680.

doi: 10.1136/bmjopen-2013-002680.

PMID: 23878171