医局員・研修医の声

2012_ロシア_ハバロフスクへ病院視察

声の主 : 渡辺大介

カテゴリ : 本院

  201279日から13日までロシア、ハバロフスクへ病院視察に行って来ました。その主目的は極東ロシアでの脳血管内治療の現状を知り、脳血管内治療グループの介入する余地があるかを知ることでした。
  ハバロフスクはロシアの極東に位置し、アムール川を国境として中国と接する場所にあります。人口は民間人が70万人で軍関係者が30万人いる都市です。日本からは成田より直行便があり、2時間程度で到着します。そのハバロフスクにおいて脳外科の領域でトップであるといわれている病院「ハバロフスク第2病院(350床)」へ行って来ました。脳外科部長の年齢は50歳で、その病院長でもありハバロフスク市議会議員でもある方でした。脳外科医、院長、市議会議員と3役をこなす多忙な日々を送っていました。
  ハバロフスク第2病院の脳外科スタッフは常勤18名で構成され、脳外科当直は4名体制で行なっていました。神経外傷がとにかく多く、一日5~6件以上は外傷の手術を行なっているとの事でした。病院内のハード面では、ICU30床あり脳外科専用オペ室は2部屋ありました。また、外傷専用ERとオペ室は別に設置されていました。顕微鏡はzeissで5年毎に買い換えているようです。ナビゲーションも配備されていました。MRI1.5Tで2台あり、CT64列で2台ありました。DSAGE製でフラットパネルがあって、さらにもう一台のDSAの購入が決定しているという事でした。
  脳血管内治療は1名の医師(Dr. Rudman37歳)を中心に行なっていてハバロフスクでは彼1名が施行可能な医師との事でした。Dr. RudmanPCIや四肢末梢、腹部等々すべてのIVRを行なっていました。主なIVRPCIが多く、週30件程度行なっているという事でした。年間の脳血管内治療は脳動脈瘤コイル塞栓術20件、頸動脈ステント留置術20件、脳腫瘍5件、硬膜動静脈瘻2件という構成でした。原則、症候性を対象に治療しているようです。ロシアでは無症候性病変に予防的外科治療の概念があまりなく、strokeとなってからの治療のようでした。偶然にも視察中に頸動脈ステント留置術と硬膜動静脈瘻の治療があり見学しました。その手技は我流であって教育を受けた形跡のない状況と思われました。Dr. Rudmanは脳血管内治療以外は自信がありそうでしたが、脳血管内治療には苦労しているとおっしゃていました。
  視察した感想としては、病院のハード面は十分な機材はあるが、それを使いこなす技術と教育などソフト面がまだ不足しているものでした。それは脳外科部長も思っていて、日本の技術、教育の高さを是非学びたいと熱い思いで語っているのが印象的でした。

  (写真左;アムール川,写真右;ロシア正教の教会)

アムール川.png
ロシア正教教会.png