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留学報告

独国ハインリッヒ・ハイネ大学 脳神経外科(深見真二郎)

 私は2008年8月より2009年12月までドイツのデュッセルドルフにあるハインリッヒ・ハイネ大学病院に留学をしてまいりました。デュッセルドルフはドイツ北西部に位置するドイツ最大の州であるノーダーラインウエストファーレン州の州都であり、人口は約65万人と日本でいえば熊本市ぐらいの規模の都市です。とはいってもドイツ国内では8番目の大きさの都市であり、2007年の世界暮らしやすいランキングでは第5位と(東京は35位)ドイツの中でも人気のある都市です。犯罪率はそれほど高くなく、生活コストも安く、特にビール・ワインなどは日本の半額以下で買えます。また、ドイツの鉄道網は非常に発達しており、どこでもいつでも乗れます(終電という概念がありません)。夜中の二時に町中で泥酔しても一人で安全に帰れます。デュッセルドルフ最大の特徴といえば約7000人の日本人(100人に1人が日本人!)が住んでいることであり、ある町の一角にすめば日本語で生活ができるといわれています。実際大学病院でも脳外科の二人を含め、血管外科に一人、心臓外科に一人、一般外科に一人、整形外科に一人と一時期には計七人の日本人医師がいました。ドイツ人は仕事後の一杯をしないので、よく日本人医師の同僚と飲食をしました(そのためドイツ語の上達が遅い!)。

 最初の半年は脳神経外科での手術研修を主に行いました。脳神経外科は年間手術数約2500件、教授が4人とドイツでも最大規模の施設の一つであり、特徴としては他の施設より血管障害の開頭手術を積極的に行うことやglioma以外の脳腫瘍の手術にも5-ALAやICGなどの蛍光物質を使うことです。私は教授の一人であるProf. Stummerに一番お世話になりました。彼は5-ALAによるgliomaの研究が有名ですが、実際は下垂体手術を含めた頭蓋底手術グループのtopであり、TSS, acoustic tumor , skull base meningiomaなどは彼のチームで行っていました。TSSに関しては私が留学した時期から内視鏡単独手術を始めたこともあり、耳鼻科の先生と試行錯誤しながら行っているのに立ち会えたのが幸運でした。しかし、手術時間の長さや出血のコントロールのしやすさから、拡大TSSが必要でない場合は顕微鏡手術に戻っていました。頭蓋底髄膜腫の手術の特徴としては前方の腫瘍に関しては小型の前方側頭開頭を使い、高齢者の場合はeye blow skin incisionのkey hole approachも行っていました。中頭蓋から後頭蓋窩腫瘍にかけてはmiddle fossa approachからのintradural からのdrilling (trans-dural drillingと言っていました)を積極的に行っています。時間が通常のpetrosal approachより短縮できますが、余程慣れていないと危険です。以上の様に最初の半年間は手術見学や手術助手をしながら研究のメインテーマを絞っていきました。その後、以前より興味のあった髄膜腫の遺伝子解析を開始しました。そのために、研修の場所を神経病理部門に移し今度はメスではなくピペットやサーモサイクラーと格闘することになりました。ハインリッヒ・ハイネ大学病院神経病理部門の主任教授はoligodendroglioma等の研究で世界的に有名なProf. Reifenberger (WHO blue book 2007のoligoのsectionも執筆されております)です。スタッフはMD, scientist, technician併せて50人以上おり、日本の神経病理部(そもそも神経病理が一般病理と分かれていることは少ない)では考えられない規模です。神経病理部の中でもneuro-oncology, Alzheimerなどの変性疾患、neuromuscular disease, 精神疾患の4つのグループに分かれており、私はneuro-oncologyのグループに入れてもらうことになりました。私を直接指導していただいたのはDr. Riemenschneiderという私より2歳年下のneuro-oncologistでした。彼は35歳とまだ若いのですが、毎年のようにhigh impact factorの雑誌に投稿し、またgrantも沢山持っており、非常に優秀なdoctorです。

 そこで、私は豊富なmenigniomaのサンプルを使い、遺伝子解析を行いました。そこで髄膜腫の悪性化に関与するとおもわれる2つの遺伝子を見いだしました。

 最後にこのような機会をくださった原岡教授、医局の皆様、単身での留学を認めてくれた妻に感謝をし、報告を終わりたいと思います。

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