Glioma組織におけるneural stem cell marker Nestin発現の臨床病理学的意義

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1.はじめに

脳形成期に一過性に発現されるTyper Ⅳ collagenであるnestinのglioma組織における発現の、病理学的および臨床的意義を検討する。

2.対象と方法

当科において手術を含めた集学的治療を行った、初発成人テント上グリオーマ70症例に対し、摘出した腫瘍の本体(tumor bulk)と正常脳との境界部(tumor margin)の2つの切片に対し、マウス抗ヒトnestinモノクローナル交代を用いた免疫染色を行い、病理像との相関、その発現とsubventricular zone(SVZ)との連続性の関連性、治療予後との相関などを解析した。対象となった腫瘍の病理診断はGradeⅡ6例、GradeⅢ21例、GradeⅣ43例である。

3.結果

Nestinの発現性はastrocytomaのcell lineageに特異的に発現しており、oligodendroglioma系腫瘍においては、分化度の低い形態を示す細胞や、astrocytomaの混在を思わせる細胞にのみ発現していた。Astrocytoma系腫瘍においては、その悪性度が高いほど、nestin発現率および発現度が高かった。術前画像による造影域のSVZとの連続性と、nestin発現度の間には有意な相関関係を認めず、治療予後との相関性も認めなかった。

4.結語

Neural stem cell marker nestinはglioma組織におけるastrocytoma lineageに特異的に発現しており、悪性度とその発現度との間に正の相関を認める。しかし、その発現度と、腫瘍局在のSVZとの関連性や治療予後との相関は認めなかった。