当科の魅力

血液内科が診療を担当する疾患は、貧血や血小板減少といった日常診療でよく遭遇する病態から始まって、白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫といった造血器腫瘍や難病とされている希少疾患まで多岐にわたります。悪性腫瘍に対して診断から治療まで一貫して自科で行い、治癒を目指した治療が可能であることは血液内科の特徴のひとつであり大いなる魅力です。当科では血液疾患の診断から造血幹細胞移植を含めたすべての治療を一貫して行います。現在は自家移植やハプロ移植を含む同種移植、臍帯血移植など、造血幹細胞移植にも様々なバリエーションがありますが、すべての移植に対応しています。2019年に開院した新病院では、10床ではありますが無菌病棟レベルの使い勝手の良い無菌病床と、同じ階に血液内科の一般病床の計約40床を有しており、都内でも有数の血液内科として効率よく血液疾患の診療と研究にあたることができます。

血液領域には限りませんが、診断・病態解明には遺伝子レベルの解析や基礎医学の様々な知識が必要です。予後に関しても関係する遺伝子レベルの解明が行われて来ていて、日常診療レベルで基礎と臨床の融合が自然と行われています。すなわち、基礎的研究の成果が即座に臨床に反映され常に最先端の治療が行われますので、まさに"Bench to bedside"の大醐味を感じることができます。私自身も医師になった当時は不治の病であったいくつもの疾患が、治る病気へと大転換をとげるのを目の当たりにしてきて、これ以上やりがいのある分野はないと確信しています。そういう意味でも入局した若い医師の諸君には、当科の研究室や国内外への留学などを通じて一度は基礎医学の研究にどっぷりと携わってもらい、その面白さを味わい、臨床の場に生かしてもらいたいと思っています。逆に日本や世界と症例を共有するケースレポートは臨床教室にとって基本であり極めて重要です。1例1例を大切にリサーチマインドを持って日常診療に当たることで"Bedside to bench"というクリニカル・クエスチョンからオリジナリティ溢れる臨床研究や基礎研究のアイデアが生まれ、さらなる医学の高みを経験することができると信じています。

さらには、血液疾患は全身すべての臓器に発生し、その治療においてもあらゆる合併症がおきます。したがって自ずと高いレベルの全身管理が要求され、自然とgeneralistとしての能力が養われるのも魅力です。また、患者さんやそのご家族と初診時から十分時間をかけてコミュニケーションを行うのも血液内科の特徴で、患者さんと担当医との関係は10年以上になることが稀ではありません。私の患者さんにも若くして重い血液疾患に見舞われ、長い治療を経て克服し、やりがいのある仕事につき(医療従事者になった方もいらっしゃいます)、新たな家族をもって、今はお子さんと一緒に通院してくれている方々が少なくありません。そのためでしょう、これも自然に患者さんとの信頼関係を第一と考える人間味溢れる臨床医に皆が育っていくように思います。治験薬を含む最先端の抗腫瘍薬を扱うことから腫瘍内科医を目指す方々にもベースの診療科として最適な診療科です。

こうした沢山の魅力をもった血液内科ですが、残念ながら全国的には血液内科医は減少しています。一つには重篤な疾患を扱うので時間的にも精神的にも負担が多いと感じるからかもしれません。しかしながら、わが血液内科はワークシェアリング的な考え方を積極的にとり入れており、一人一人の負担をミニマイズしてかつ診療・研究・教育の質を落とさないような取り組みを早くから行っています。その点では全国的にもユニークかつ先端的だと自負しています。多くの女性医師が結婚・妊娠・出産といったイベントを経て働き続けてくれていますし、介護などが必要になった医局員にも必要な期間にはできる範囲で診療や研究をしてもらえるような環境を作るよう、全医局員が協力してくれています。

学閥など全くありませんのでいずれの大学の出身の方でも、またどんな経歴の方も大歓迎です。特に「科目としての血液はなんかとっつきにくいし嫌いだった」という方はだまされたと思って覗きに来てみてください。全員が笑顔で診療・研究に当たれる診療科を目指しています。必ず虜になるはずです!

東京医科大学 血液内科学分野 主任教授
後藤明彦

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