部門紹介

小脳橋角部腫瘍(聴神経腫瘍を含む)

部位の特徴と症状

後頭蓋窩(こうずがいか)と呼ばれる後頭部の下部には、主に生命維持・大脳の活動制御機能を有する脳幹と、運動機能を調整する役割を担う小脳という、脳の重要な部分が存在します。その脳幹と小脳と内耳道に囲まれた部分が小脳橋角部です。小脳橋角部は脳幹から枝分かれする重要な多数の脳神経が頭蓋の外に出てゆく通路でもあり、この部分に腫瘍ができた場合には、高い確率で脳神経と接触するため、脳神経症状が発症します。主な症状は、難聴・耳鳴り・顔面のしびれ感や違和感・燕下 (のみこみ)困難・声がれ・顔面麻痺 (曲がって非対称)・二重視 (物がダブって見える)などです。頭痛やめまいなどの症状で受診した際の検査で発見されることもあります。

腫瘍の種類と特徴

●聴神経腫瘍

聴神経は、前庭神経(ぜんていしんけい)と蝸牛神経(かぎゅうしんけい)の総称で、これらにできる腫瘍が聴神経腫瘍(ほとんどが良性)です。顔面神経が伴走するため、顔面神経麻痺(運動障害)や顔面痙攣(けいれん)、知覚麻痺、神経圧迫による歩行障害や意識障害などが生じることもあります。

<治療のポイント>
手術の際に最も重要となるのは、顔面神経の温存と、聴力の温存(聴力がある程度保たれている患者さんの場合)です。当科では術中神経モニタリング (神経機能を電気刺激や音を聞かせることによりチェックすること) ※1を行うことで、顔面神経だけでなく聴力の温存も目指せるようになりました。また、合併症を減らすための手術方法の改良も最近目覚ましいものがあります。

※1

術中神経モニタリング
術中に神経機能の反応を持続的にモニタリングする方法で、処理の前後で時々顔面神経を刺激し、神経の反応を確認できます。また、「警告機能」が付いているため、神経機能悪化を未然に防ぐことができます。

●髄膜腫

良性腫瘍で、後頭蓋窩の中のさまざまな部位に発生しますが、症状は腫瘍のできた場所と接触する脳神経の種類により異なります。この腫瘍に対しても、良好な成績を出すためには手術モニタリングや手術方法の選択が重要と考えています。

●その他の腫瘍

後頭蓋窩腫瘍においては前述の2つの腫瘍が代表的ですが、この他にも数種類の腫瘍が知られています (血管芽腫、血管腫、脊索腫、類上皮腫など)。


これらの腫瘍の手術は、腫瘍に接触している多数の脳神経の機能を守りながら腫瘍を切除しなければならず、技術的には最も難しい部類の手術とされています。