学会・研究会の報告

血栓止血学会に参加してきました

報告者 : 篠澤 圭子

カテゴリ : 学会 研究会

第39回日本血栓止血学会(2017年6月8日~10日)  参加 覚書 篠澤圭子

 

1・State of the Art Lecture 2(新生児と小児期に発症する遺伝性血栓症)九州大学 大賀正一先生

 日本人成人の遺伝性血栓症の割合の多い順番は、①PS欠乏症②AT欠乏症③PC欠乏症。しかし、患児の約20%が遺伝性血栓症で、その半数が①PC欠乏症(40%)で、次が②PS欠乏(20%)と③AT欠乏(10%)(2017年に小児血栓症の全国調査 石黒先生ら)。抗凝固因子欠乏症の発症は、(1)誘因なく電撃性紫斑病や頭蓋内出血・梗塞を発症する新生児型、(2)新生児期以降に感染症などを契機に動脈または深部静脈血栓症を発症する小児型、の2病型に大別。「新生児・小児血栓症研究班」で遺伝子解析を行った結果、新生児・小児期発症PC欠乏症の47名で、新生児型が約半数であった。47名中発症時に血栓症の家族歴の明らかな患児は2名のみ。PROC変異を検出した19名に両allele変異であり(複合ヘテロ接合体変異、compound heterozygoteの事らしい)、15名は生後2週間以内に発症した新生児型だった。特発性血栓症は難病指定受けたが、成人例と新生児・小児例は異なるので、それに応じた診断基準と治療管理方針の作成が必要。

 

2・プロテインS研究会シンポジウム

(1)遺伝性血栓性素因の概要 名古屋 小嶋哲人先生

 DVTPEVTE、深部静脈血栓症は肺塞栓症を合併し合わせて静脈血栓塞栓症と呼ぶ。PEのほとんどはDVTが原因。VTE発症人数は60歳代を超えると急激に増加する。Virchow`s Triad(血流、血管、凝固)。血栓止血機構(1)AT制御系。ATZPI(プロテインZ依存性プロテアーゼインヒビター)はFXa, FXIa, FIXaに作用。FIXaにはATのみ。FIIにはATHCII。(2)APCTM抗凝固システム。特発性血栓症は難病指定、平成29年4月1日施行「327特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る。)」<診断基準>に加えて、<重症度分類>がある。

(2)九州大学 大賀正一先生

 小児のPCPSAT活性は、生後6か月ぐらいで成人と同じくらいの値になる(1994年奈良の高橋先生の論文→ただしVKをやっていたか不明)。血栓症の発症は、(1)新生児期の1ヶ月以内(胎盤からの移動)(2)20歳前までが起こりやすい。Blood 2012120:1510-5Hoizhaver S

らは新生児ではPC欠乏症の発症が多いと報告している。Acral necrosis末端壊死。新生児でPCPS欠乏かわかならかったら、PS活性とPC活性の比をみて考える。

(3)  シンガポールのLee先生 2004年から2015年にPE0.82 per10.000deliveriesなどの発生頻度を報告

(4)北海道医療大学 家子正裕先生

 「327特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る。)」は、DVTPEなどの血栓症の確認とAT,PSPCかっせいが成人の基準値の下限未満であることを確認し、抗リン脂質抗体小国軍などを除外した上で判断する(probable)と、さらに、遺伝学的検査で病因となる遺伝子変異が同定されれば確実診断(definite)と基準に明記。問題としては、①凝固因子活性測定方法は標準化されていないし、凝固時間法や合成基質法などもあり、試薬や機器、施設で異なる。「成人の基準値の下限」の定義により、極端な話、他施設に通えば認定にならない可能性もでてくる。②確定診断(definite)に必要な「遺伝子解析」を実施できる施設は極めて少ない。

 

3・腸内細菌と動脈硬化 神戸大学 山下智也先生

 腸内細菌は近年、免疫に関与することで着目。動脈硬化性疾患においてフォスファチジルコリンの腸内細菌代謝産物であるTMAO(トリメチルアミンNオキシド)が動脈硬化の形成の悪化と血小板凝集能亢進を介する血栓性イベントに関与する。臨床研究で、冠動脈疾患患者ではLactobacillales門菌が有意に増加しており、Bacteroidetes菌が有意に少ない。Firmicutes/Bacteroides属の比率をみて、Firmicutes(グラム陽性菌:Clostridium,Bacillas,Lactbacillus)の多い方が動脈硬化になりやすい(太りやすい、肥満)、反対にBactreoides(グラム陰性偏性嫌気性桿菌)が多い方が動脈硬化になりにくい(痩せ菌→ダイエット→乳酸菌)。

 

4・第5回全国ヘモフィリアフォーラムに10日(土)夕方から11日(日)に参加してきました。